第15話

「お久しぶりです。お二人とも……残念でしたね」


 牢に入っている2人が、あまりにも滑稽でつい笑ってしまいました。

 かつては第一王子として、暴力を振るってきたシエル様。

 かつては私からシエル様を奪い、婚約者の座に就いたノエラ。

 栄光をつかみ取ったはずの2人が、今は最底辺の場所で幽閉されています。来週には処刑されます。

 そんな2人の姿が、あまりにも滑稽で……ついつい笑ってしまいました。


「……カルネ!!」


「お姉様!! ここから出してください!!」


 牢の2人は、それぞれ別の反応を示しました。

 シエル様は憤怒の表情を浮かべ、私を睨んでいます。

 ノエラは必死に、私に懇願しています。


「……お二人とも、本当に反省していますか?」


「反省……? 俺は何も悪いことはしていない!! テメェのせいだ!!」


「私は何も悪いことなんてしていません!! みんなが悪いのです!!」


「……似た者同士ですね」


 罪の意識が希薄ですね。皆無と言ってもいいです。

 ……本当に救えないですね。処刑されて当然です。

 少しでも反省していれば、同情の余地はあったのですけどね。


「残念ですけれど、お二人をここから脱することはできません。お二人の処刑は既に、陛下が決定なさったことですので」


「だったら……せめて、テメェも一緒に死ね!!」


「……救えませんね」


 相変わらず乱暴で、自分勝手。

 仮に処刑されなかったとしても、シエル様から王位継承の権利は剥奪すべきだと思います。

 こんなお方は、一国の王にはふさわしくありません。


「お姉様!! わたしは……実の妹なんだから、早く出してください!!」


「私から何もかもを奪って、何もかもを無駄にするような人、妹でも嫌いですよ」


「そ、そんな……酷い!! 鬼畜です!!」


「どう思ってもらっても、別に構いませんよ」


 ため息が出ます。

 私の妹は昔から頭が弱いですが、まさかここまで愚かだったとは。

 シエル様を奪った時も、幼少期に私から玩具を奪った時も、どんな時もノエラは私から奪った者は有効活用できない子でした。

 奪った玩具は大抵破壊して、二度と遊べなくなります。婚約者は悪事を露呈して、処刑されます。

 人間として生まれてきたこと自体が、ノエラは間違いだったのかもしれませんね。


「さようなら、次は処刑の日に会いましょう」


「ま、待て!! 待てカルネ!!」


「待ってください!! お姉様!!」


 二人が情けなく呼び止めますが、そんなものは無視です。

 私はため息を吐きながら、地下牢を後にしました。 

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