第14話

【シエル視点】


「クソ!! クソ!! クソ!! ここから出せ!!」


 父上が血迷ったことを言ってから、俺とノエラは地下牢に連れられた。

 必死に暴れたりして抵抗したが、鍛え抜かれた騎士団の前では全て無力だった。


「俺が何をした!! 俺は何も悪くないだろ!!」


「そうですわ!! わたしを早く出してください!!」


「いや、俺を早く出せ!! コイツとは違って、何も犯罪は犯していない!!」


「な、何を言いますの!?」


 同じ牢内のノエラは、驚愕の表情を浮かべている。

 いや、どう考えてもお前は悪いだろ。


「わ、わたしも何も悪いことなんて──」


「クスリの密売や闇賭博は、悪いことじゃないのか?」


「それは……。で、ですけど、シエル様も悪いことをしていたじゃないですか!?」


「はァ!?」


 このクソ女、何を言いやがる。

 適当なこと言うと、ブン殴ってやるぞ。


「わたしのことを……何回殴りましたか!?」


「それは……お、お前が愚鈍だからだ!!」


 そうだ、全てこのクソ女が悪い。

 俺を誘惑し、婚約を持ちかけてきた。

 あの時からだ。俺の全てが狂ったのは。


「お前が優秀なら、こんなことにはならなかった!! カルネの妹なのに、優れているのは容姿だけだな!!」


「ひ、酷い……。し、シエル様も弟様とは違って、頭が悪いじゃないですか!!」


「なんだと!?」


「すぐ暴力で訴える、非常に短慮な男性です!! 深く考えることが苦手だから、獣のように暴力を振るうのでしょう!!!?」


「て、テメェ!! 女の分際で!!」


 殴ろうとするが、手枷が邪魔をして殴れない。

 クソッ!! 腹が立つな!!


「なんで……なんで死罪なんだよ……!!」


 憤りから、本心が漏れてしまう。

 どうして、この俺が死罪なんだ!!

 俺は第一王子だぞ! 多少粗相をしたとしても、死罪はないだろ!


 頼む、死にたくない。 

 女に暴力を振るったくらいで、死にたくなんかない。

 だった18年の人生なんかで、終わりたくない。

 ここから……出してくれ!!


「出せ! 出せェエエエ!!」


「出してください!!!!!!」


 俺たちは必死に叫ぶが、鉄格子の向こうにいる兵士は俺たちを無視している。

 クソッ……、コイツ!!

 俺が王になったら、絶対にコイツの家を燃やしてやる!! 

 家族は焼き殺して、子どもは引きちぎってやる!!


「……醜いですね」


 スタスタと牢の向こうから、誰かの足音が聞こえて来る。

 そして俺たちの牢の前に、1人の女性が立った。

 彼女は俺たちを、ひどく見下した眼差しで見つめている。


「お久しぶりです。お二人とも……残念でしたね」


 嘲笑しながら、俺たちを見下す女性。

 彼女は──


「……カルネ!!」

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