第13話

【国王陛下視点】


「はぁ……」


 ため息が出る。

 最近のシエルの活躍、そして新たな婚約者に。

 本当にワシの息子なのか、疑いたい。信じたくない。

 なぜ……こんなにも見る目がないのか、と問いただしたい。


 カルネと婚約破棄した、シエル。

 ワシの目から見れば完璧な女性なのだが、当の本人からすれば思うところがあるのだろう。

 本人の意思を尊重し、婚約破棄は目を瞑ったが……問題は次の婚約者だった。


 ノエラ、彼女は……闇が深い。

 彼女について調べれば調べるほど、あらゆる犯罪と関連しているとわかった。

 象牙の密売や闇賭博、学園では当然のようにイジメをしている。

 ハッキリと言えば、婚約者には決して相応しくない女性だ。


 そしてワシはシエルに疑心の目を向け、シエルについても調査を行なった。

 すると……信じたくない事実が判明した。

 シエルは日常的に、婚約者であるカルネに対して暴行を加えていたのだ。

 シエルはカルネの協力もあって、巧妙に隠すためにわからなかった。だが、、バカなノエルではそううまくいかなかった。


 正直、信じたくない。

 我が長男が婚約者に暴行を加えていたなんて、信じたくなかった。

 我が長男が犯罪者と婚約を結んだなんて、信じたくなかった。

 目を背けたいのだが……そうもいかない。


 それに悪い知らせばかりではない。

 つい昨日、エルスとカルネが婚約したのだ。

 エルスは頭が良く、品もある。

 シエルのような失敗は、犯したりはしないだろう。


「──え」


 しかし……残念だ。

 我が息子、そしてその婚約者に対して、非情な選択をしなければならないのだから。


「──うえ」


 だがしかし、これもワシの責任。

 こんな惨状を巻き起こしたのは、シエルを甘やかしてしまったワシの責任でもある。


「──ちうえ」


 ならばこそ、、ケジメをつけるべきじゃ。 

 ワシは国王として、責務を全うする。


「──父上!!」



 突如、耳元で大きな声が聞こえた。

 顔を上げると、そこには4人の男女。

 ワシが呼び出した者が、全員揃ったようじゃ。


「ん、おぉ。すまない」


「もう、どうしたのですか? 父上らしくありませんよ?」


「……」


 こんなにもワシの心配をしてくれるシエルが、本当は極悪非道なのだと信じたくない。全てデマカセなのだと、思いたい。

 だが……そうはいかない。シエルには……罰が必要なのじゃ。

 

 それに……もしかすると、シエルは猫をかぶっているだけなのかもしれない。

 ワシの前だけ、いい子のふりをしているのかもしれない。

 そうだとすれば……躊躇はいらない。


「……単刀直入じゃが、シエル。そしてノエラよ」


「はい!!」


「は、はい!!」


 ふぅと息を吸い、ワシは告げた。


「貴様らを──死罪に化す」

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