第12話

【ノエラ視点】


「もういや! もういや! もういや!!!!!」


 うがーってなりますわ!!

 だってだって、退屈ですもの!!!!


「毎日毎日同じことの繰り返し!! 何にも楽しくないんですもの!!」


 剣を振ったり、勉強したり……狂いそうですわ!

 賭博も酒も何もなく、娯楽なしにマジメな生活を強いられるなんて、狂いそうですわ!!

 

 お姉様はあなたがおかしいからできたかもしれませんが、わたしはそうではありません!!

 わたしはちゃんとしているから、狂いそうなのですわ!!


「もう! もう限界です!! 王妃なんかどうでもいいですわ?!?!」


 しんどい、そうですわ。しんどいのです。

 自由がなくて、ただただつまらない日々はしんどいのですわ。

 なんにも面白くないですし、最低最悪ですわ!!


 こんなことなら、婚約なんてしなかったらよかった!!

 王妃になれば、これまで以上に自由を満喫できると思ったのに、王妃になるまでがこんなにしんどいなんて、知らなかった!!!!


 今すぐ、一刻も早く婚約破棄をしましょう!!

 わたしは何も悪くありません! ちゃんと説明しないまま、わたしの美貌に惚れたシエル様が悪いのです!!

 ちゃんと説明をされていれば、わたしは絶対に婚約なんて結びませんでしたわ!!


 それにお姉様も悪いですわ! 

 わたしに婚約者の生活が、こんなにしんどいってことを説明しなかったのですから!!

 やったこともない剣術をやらされるってことも、大っっっっ嫌いな座学があるってことも、何一つ教えてくれなかったですわ!!


「そうですわ!! あとでお姉様を処刑してもらいましょう!! シエル様に頼んで、処刑してもらいましょう!!」


 お姉様が悪いんですわ。

 わたしをバカにして、ちゃんと説明しなかったから。

 それにお姉様ももう若くありませんわ。傷物令嬢になったから、この先一生結婚も無理でしょう。

 女は殿方と添い遂げて、幸せになります。幸せになれないお姉様は、もう……殺して差し上げた方が良いですわ。


 さようならお姉様。

 あとはこのわたしに、全て託してくださいませ。

 以前までの自由気ままな生活を謳歌するために、お姉さまが溜め込んだ財産はわたしが使って差し上げますわ。


「……失礼します、ノエラ様」


 お姉様の処刑計画を練っていると、1人の侍女が部屋に入ってきましたわ。


「あら、なんですの?」


「陛下がお呼びです」


「……へ?」


 へ、陛下……?

 え、なんで……?

 いや……ちょっと待ってください。

 あ、そういうことですのね。

 頭のいいわたしは、すぐに察しましたわ。

 

「わたしを祝ってくださるのね!!」


 陛下はわたしが婚約破棄を告げることを、察してくださったのでしょう。それを祝うために、わたしを呼び出したに違いありませんわ。

 ついでにお姉様の処刑、そしてあわよくばシエル様に罰を落としてほしいですわ。

 そうですわ、話してみましょう。そうすれば、叶えてくださるはずですわ!!


「ふふん、楽しみですわ!!」


 わたしは鼻歌を奏でながら、陛下の元へと向かいました。

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