第5話

【シエル視点】


「クソクソクソ!!!!」


 どうして、どうしてなんだ!!

 何故にあの女は、あそこまで……愚鈍なんだ!!!!!!


「クソッッッ!!!! 腹が立つ!!!!!」


 俺の婚約者になって、たった3日だというのに既に根を上げている。

 文句をタラタラと垂れ流し、勤勉な様子は皆無。態度は常に悪い。

 さらにカミラにイジメられていただの、カミラは犯罪を犯しているだのと宣う。

 カミラ関連は事実かもしれんが、それでも……あまりにも腐っている。


 容姿だけではないか!! それ以外の良いところが、微塵もないではないか!! 

 何故だ!! あの女はカミラの妹なのではないのか!!


 カミラは容姿こそ上の下程度であったが、勤勉で真面目な女だった。

 婚約者としての生活に根を上げず、毎日毎日真摯に向き合っていた。

 そういうところも腹が立つのだが……今思えば、間違っていたのは俺の方だったな。


「もう……ノエラを捨ててしまおう。あの女はすでに、不要な女だ」


 失ってから気づく、大切さがある。

 ノエラは容姿が素晴らしいだけで、中身は腐った女だった。

 あんなものは俺のサンドバックにしかなれない。あんなものと結婚してしまえば、この国は確実に潰れるだろう。

 

 カミラは醜女ではあるが、容姿以外ならばノエルよりも圧倒的にマシだ。

 あやつと話すときには、目を瞑ればいいだけのことだ。

 それに殴ってしまえば、腫れてしまってどんなに優れた容姿のものでも同じになる。

 ならば見た目の出来が悪くとも、中身の出来が優れた方を選んだ方が賢い選択と言えるだろう。


「カミラも俺の再度婚約者になりたがっているだろう。俺がアイツの前に立てば、懇願してくるかもしれんな」


 カミラは間違いなく、俺に惚れていた。

 俺がアイツを殴っても、アイツは文句の一つも漏らさなかった。

 それどころか小さくか弱い声で、ありがとうございますと感謝の意を示してきたのだ。

 俺もそんなアイツの態度は、好感的だった。


「仕方ない。アイツの元へ、向かってやろう」


 アイツも所詮は女だ。

 愛した男が再度現れ、婚約を求めるといった展開を求めているだろう。

 女という生き物は愚か故に、ドラマチックな展開を求めている。

 全く、女という生き物はなんとバカで愚かなんだろうな。

 そんな展開、何も面白くないというのに。


「さぁ、カミラよ。愛したこの俺が、向かってやるぞ」


 俺はカミラの家へと、向かった。

 もう一度婚約を結ぶために。

 アイツが望むそれを、叶えてやるために。

 それと同時に、ノエラと婚約破棄もしてやろう。

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