第2話
「最っっっ高っっっですね!!」
あの後、私は家に帰って10時間眠りました。
そして起きたら、時間は午前10時。
こんなに遅い時間に起きるなど、私の人生史上初のことです。
「長く眠ることって……最高なんですね!!」
約10年ぶりの自由な時間がやってきました。
これまでは王子の婚約者として、厳しい生活を送っていたので自由などとは縁遠い人生を送ったものです。
10時に起床するなんて、以前までならばとても考えられなかったです。
10時間眠るなんて、とてもあり得なかったです。
婚約破棄をして、本当に正解でした。
これまでの人生は感情を殺した、人形のような生活でした。
婚約者という役者を演じるだけで、私の自我というものは決して表面に表してはいけない人生でした。
しかし、今の人生……いえ、これからの人生は違います。
10時間眠っても、10時に起床しても、誰も咎めません。
こんな幸せがあったことなんて、これまでの人生では考えられませんでした。
「今から何をしましょうか……」
これから何をするか、そう考えることも幸せですね。
”暇”というものを、これまでは知ることができませんでした。
常に忙しく、常に課題を与えられる生活。
そんな生活故に、私には暇がなかったのです。
「……とりあえず、積んでいた本を読みましょうか」
勉学に必要な教材以外の、娯楽文学を読むことは久しぶりです。
最後に読んだのは……5年前でしょうか?
「……ノエラは大丈夫かしら?」
朝5時に起床して25時に就寝する婚約者の生活を、ノエラが送れるとは到底思えません。
彼女は学院でも幾度も遅刻を繰り返した、堕落しきった女ですので。
それに授業中でも眠っていましたし、教員に指摘されれば公爵家の立場を利用してその教員を処分していました。
彼女の横暴は私の両親でも、止めることができませんでした。
ですが、今後はそうもいきません。
公爵家の権力など、王家の前では無力ですので。
「……まぁ、間違いなく音を上げるでしょうね」
数日、いえ恐らく明日にはギャーギャーと文句を言っていることでしょう。
ノエラは根性がなく、”耐える”という言葉を最も嫌っています。
そんな彼女が過酷な婚約者生活を送れるとは、到底思えません。
これまで怠惰でワガママな生活を送ったのですから、今後は勤勉な生活を送ってほしいものですね。
彼女にもお灸を添える時がきたのです。
「……シエル王子にも暴力を振るわれていることでしょうね」
シエル王子はストレス耐性が皆無です。
すぐに限界を迎え、それを暴力に変換します。
彼にとって、ノエラの情けなさはストレスの源でしょう。
きっと彼は、ノエラを毎日のように殴打することでしょうね。
「……まぁ、今となってはどうでもいいことですけれど」
彼らのことを考えることは、もうやめましょう。
これからは自由な人生を送るのですから。
「……この小説、面白いですね」
私は積んでいた本を読みふけりました。
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