婚約破棄を待っていたら、妹が婚約者を奪ってくれました
志鷹 志紀
第1話
「カミラ、俺と婚約破棄しろ」
私を部屋に呼び出したシエル王子は、唐突にそう告げました。
婚約破棄……シエル王子の放ったその言葉が、私の脳内を反芻します。
「……えぇ、わかりました」
「妙に物分かりがいいな。わかっているのか? 俺と婚約破棄をするという、その意味を」
「えぇ、もちろん。王妃になれないこと、誠に残念です」
言葉では残念だと告げますが、内心は全くの反対です。
ようやくこの時を、待ち望んでいた時がやってきました。
待ちに待った婚約破棄が、ようやくやってきたのです。
シエル王子との出会いは10年以上前のことですが、私は一秒たりともシエル王子に恋慕の感情を抱いたことはありません。
シエル王子はどこまでも横暴で、乱暴な方です。
自分の思い通りにならなければ、物や人に当たるのです。実際に私も何度か乱暴をされたことがあります。
そんな人のことを好きになどなれず、私は一刻も早い婚約破棄を望んでいました。
そして本日、ようやくその時が来たのです。
「そうか、ではこれまで連れ添った仲として、特別に俺の新たな婚約者を紹介しよう」
「えぇ、ありがたき幸せですわ」
本当は新たな婚約者なんて、どうでもいいです。
せっかく自由の身になったのですから、今はただ……早くお家に帰りたいです。
シエル王子のことなど忘れて、スヤスヤとベッドで寝たいんです!!
「来い、ノエラ」
「はい!! あなた今行きますわ!!」
シエル王子が声を発すると同時に、部屋の扉が下品に開かれます。
そしてだダダッと品なく駆けてきたのは──
「お姉さま!! ご機嫌麗しゅうございますわ!!」
「……え、えぇ、ご機嫌ようノエラ」
なぜこんなところに、私の妹がいるのか。
その理由はすぐに理解できました。
シエル王子がノエラの肩に、手を回したからです。
「俺はこいつに惚れた、一目ぼれだ。だからお前を捨てることにしたんだ」
「そういうことですわ。ごめんなさいね、お姉さま。お姉さまよりも私の方が、魅力的だったようですわね」
ノエラは確かに容姿が抜群です。
絹のような金の髪、スタイルも素晴らしい。
顔立ちなどは私と姉妹であることを疑ってしまうほどです。
ですが……それだけ。
ノエラの良さは、容姿以外は皆無です。
性格は悪く、学院では多くの貧民をイジメています。
さらに虚言壁で見栄っぱりです。
その上ワガママで傍若無人、容姿以外は全てが腐った醜女なのです。
「……えぇ、お似合いですわね」
そんな2人は、お似合いなのかもしれませんね。
2人ともワガママで、性格が腐っています。
似た者同士なのです。
「……それではお二方、ごきげんよう。どうかお幸せに」
絶対に幸せにならない2人に皮肉をぶつけて、私はその場を去りました。
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