第21話・聞き込み

 楽して金儲けしたいなと思いながら寝て、とくに夢をみることもなく、スマホのアラームで目を覚ます。

 しばらく天井を眺め――顔を洗って髪型を整えて、家を出る。

 バイト先のコンビニとは逆方向には、チェーンのコーヒー店。スマホで時間を確認し――午前10:48。モーニングは午前11:00までなので、足早に店に入りモーニングセットと、


「あとサラダも」


 追加料金でサラダを注文する。

 そしてスマホの電源を取り出し、Wi-Fiが使えることを確認してから画面をタップする。

 この店はフリーWi-Fiが使えるので、いつも午後3:00くらいまでいる。

 長居している自覚はあるので、午後1:30頃にコーヒーを注文する。


「あ、あとこれも」


 毎日モーニングを食べて、午後3:00までいるので、今日はデザートも注文した。

 注文したデザートは、値段がもっとも高いヤツ。これでまたしばらくは、コーヒーの追加注文だけでいいだろう。


 午後三時に店を出て、コーヒー店近くのコンビニに寄って、足りないものを買い足す。


「洗濯洗剤がなくなってたな」


 酒とつまみと軽食、足りない日常品を買い物カゴに入れて、


「レジ袋はいかがなさいますか?」

「お願いします」


 レジ袋も購入して、店員に袋詰めをしてもらう。


「4506円になります」


 代金を支払い、買い物袋を手にアパートへ。


――洗剤はコンビニで買うと割高だよなあ。分かってるけど、スーパーは少し遠いんだよなあ。時間と労力を考えたら、やっぱり近場のコンビニだな


 少し離れたところにスーパーはあるけれど、往復が面倒だ。

 車があれば別だけど、俺は車も免許も持っていない。


 父親が自殺しなければ、運転免許だって取れたし、もっといい高校に進むことができた。

 母親が発狂しなければ……フツー、父親が死んだら母親が必死になって働いて、子どもを育てるもんだろう。

 母親は親の責任を放棄して、子どもの俺が死ぬ程苦労するハメに。

 希望の高校に進学できなかったから、希望の大学に進学することもできなかった。金がないから。


 親のことを考えれば考えるほど、イライラする。


 俺は洗濯物を袋に入れてバイトへ向かう。バイトしているコンビニの隣のコインランドリーに、洗濯物を放り込んでバイトへ。


「吉川君、ちょっと」


 制服に袖を通していると、店長に声をかけられた。


「こちら、警察のひと」

「は、はあ……」


 店長の言葉に会釈をする。

 刑事が写真を差し出した。


「見覚えはあるかな?」

「この人……ああ、なんとなくですが覚えています。煙草とコーヒーを購入した記憶があります。暇な時間帯で、特徴あるお客さんだったので。はい、体格といい顔つきといい、威圧感があったんで。なにか、あったんですか?」


 先日の客が、なにかの事件に巻き込まれたらしい。

 警察は俺の問いかけには答えてくれず、店長に「もういいよ」と言われて業務についた。

 そして――


「行方不明だって」

「行方不明……成人男性の行方不明なんて探すんですか?」


 バイトあがりに、店長が先ほどのことについて、知っていることを教えてくれた。


「なんか、刑事さんらしいよ」

「身内だから? ですか」


 店長は軽く首を振り、


「警察手帳とか下手したら拳銃とか、持ってる可能性があるからだろうなあ」

「あ……」


 父親の死後、自宅は警察の手によって、泥棒に入られたかのように荒らされた。警察は「決まりだから」としか言わなかった。


「これはあくまでもわたしの推測だから、喋らないでね」


 もしかしたら父親は、拳銃を所持した状態で殺されたのかも――


「はい」


 バイトが終わり、隣のコインランドリーから洗濯物を回収して、いつものファミレスに向かい、ベトナム料理店に近い席に座って、ステーキセットを注文してからスマホを取り出す。


 隣の店のWi-Fiが使えることを確認してから、ソシャゲにログインした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る