第04話・野島一家について 1

 顔も声も知らない誰かに話を聞いてもらい、完全とは言えないけれど、日常生活以外のことをしようと思うくらいには気分が回復したから、児童養護施設で話を聞いた。

 当時を覚えている人はいなかったけれど、


「叔母一家が行方不明?」

「そのように書類に書かれています」


 わたしの母には妹がいて、その一家が行方不明になった。


「姉がなにか知っているのではないかということで、話を聞くために警察が訪れ、そのときに部屋から子どもの声、佐倉さんの声が聞こえたので、警察が踏み込んだそう」


 事件を追う過程で、姉である母に事情を聞きに来た。


「わたしの声がどうして?」


 わたしは知らなかったのだが、交番の警察官は一戸一戸訪ねて家族構成を聞いて、書き記しているそうだ。

 家族構成や職場が書かれた台帳を持った交番の警察官と、失踪事件を追っている刑事が一緒にわたしが住んでいたアパートを訪れ、チャイムを鳴らし「おかあさんはいまでかけています。なんんじにかえってくるか、わかりません」ドアの向こうから聞こえたわたしの声に驚き、急いでドアを開けるため動いた。


 いきなりドアを壊して乗り込むことはできないから、急いで裁判所に捜索差押許可状を取りに行ってくれ、わたしは助け出された


「佐倉さんのお母さんも、行方不明事件に巻き込まれた可能性も視野に入れて捜査されていたそうですが、なんの発見もなく、もう調査は行われていないようです」


 叔母一家がどんな人なのか? 児童養護施設の人たちも知らない。


「叔母一家の名前は分かりますか?」


野島悠一(のじま ゆういち)

野島真弓(のじま まゆみ)

野島秋癸(のじま あき)


 十八年間生きてきて、存在すら知らなかった母の妹一家の名前を知ることができた。

 どんな人たちなのか? 写真すら残っていない。

 だが行方不明者なら警視庁のWebサイトに掲載されているかもしれないと、検索してみたが掲載されていなかった。

 日本中の警察のサイトにアクセスして調べたけれど、叔母一家の情報は手に入らなかった。

 どこかに手がかりはないかと、検索を繰り返した。


 そして――



熊谷さとる氏より

このサイトを受け継いだ浪川麻衣子と申します

引き継いだ経緯は→こちら


熊谷さとる氏の許可を得て

とある失踪者についての情報も記載させてもらいます



野島悠一(のじま ゆういち)

野島真弓(のじま まゆみ)

野島秋癸(のじま あき)


十年以上前に失踪した一家です

この失踪について何か知っている人がいたら

ご連絡ください


また、この一家の失踪に関わっている可能性がある

Febreroこと、通称Fと呼ばれている日本人女性について

情報をお持ちの方は是非お教えください



 熊谷さとるのホームページ【移転版】というタイトルのブログにたどり着いた。

 やっと叔母一家の名前を見ることができた。

 行方不明者なので会えない可能性しかないけど、でも叔母一家がたしかにいたことを確認できた。


 わたしは「熊谷さとる」さんからブログを引き継いだ「浪川麻衣子」さんに連絡を取ろうとしたけれど――


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