2024年10月~11月

文通をしましょう令和に馴染めないわたしの酸素になってください


何年もグループLINEが動かないうちに三組元夫婦となり


もみじ散る神社の池に棲む亀に人は願いを託してしまう


狙ってるねこは来なくて軒先のクッションぜんぶボロボロである


わたしより若い歌人が賞を取り悔しく感じるうちが華でしょ


柱時計を抱えて叫ぶ白塗りのアングラのままの君の眼差し


君からの言葉で育った躰です恩返しとして貰ってください


悲しみの匂いに満ちた明け方の歌舞伎町っていつも曇天


空っぽの池に積もっていく落ち葉眺めてきみを待つ一時間


連絡のない真夜中が凝固して心臓を刺す完全犯罪


土塊になる前きみは偉そうな知らないおじの銅像だった


ぬいぐるみみたいに優しい人だったなのに中身は綿じゃなかった


悩んでることに悩んで制服のスカート二回折れば短い


これまでにわたしに良くしてくれた人みんながぐっすり眠れますように


ほとんどの男は嫌い君くらい花の名前も知らないですし


生き残る理由を作るため決める半年先の有馬温泉


これはもう儀式のようだ食前にロングヘアをひとつに結び


毎春に防災グッズを整備するあなた 乾パン処理するわたし


北国へ帰れる靴も失って五センチヒールで歩く新宿


どうすれば愛されるのか知ってるがわざと既読をつけずに眠る


イエローのマフラーを巻く霧雨の街をあかるく照らすわたくし


人々の群れから君を見つけだすこともすっかり得意になった


無限回通ったはずの校門のタイルの白さ、覚えてますか


来年も生きてるかなと言う君にコーラを渡すしか出来なくて


七色に光れ光れよポメラニアン夜の散歩で月まで行こう


年の差がどんどん離れていく君と秋分ごとに酌み交わす酒


低気圧言い訳にして延期する世界はあした以降に救う


秋の夜に部屋で落としたイヤカフが異世界転生した夢を見る


これもまた誠意だろうかお別れを想像して抱く月のない夜は


来世では魚になりたい金魚鉢くらいの世界で愛でられ死にたい


生ぬるい南風はえ満ちる秋十月に半袖で寝て詩心腐敗す


今月はやけに余っているギガよ本当に君と別れたんだな


細胞が君で充ちてた七年をかけてわたしに戻っていった


パソコンがやけにゆっくり立ち上がり珈琲をいれる時間をくれる


しあわせな噂をはなつタンポポの綿毛のように世界へ満ちろ


花吹雪みたいに舞い散る白票で人体錬成してみたかった


籐椅子に沈む 月光 何者かになれないぼくの足元に犬


日本からラッコが消える日も来るし家族になるのもいいかな、なんて


浮かれ柄のスカーフよこの木曜をなんとか明日にしてはくれぬか


休日の午後にぼんやり寝ていると「ビャンビャン麺」と君、不意に云い


ふるさとの海は灰色おだやかな海しか知らない君のやさしさ


思ってるより背高いね教室で喋ってる時は気付かなかったよ


これでもう自由に屁コケるしパンいちで寝れるし鍋でチキラー食おう


庭に咲く桔梗の写真を何気なく君に送った 恋だと思う


縦読みのコピペを送る素直には言えない好きとかねこだいすきとか


僕たちの十年前は他人だし明日のことは決めないで寝よう


三日間行方不明のベレー帽しれっとクマが被っててさあ


本を読む特待生は眼差しでファンタージエンへ旅をしている


顔も知らぬ友の歌集と旅に出て知らない街の紅葉を見る

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きいろちゃんの短歌 さとうきいろ @kiiro_iro_m

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