2024年6月
照り焼きの焼けてく音と雨音がわたしに寄り添うように満ちてく
しあわせの誇示と感じて目を逸らす得られなかった三人家族
淋しさの亜種ばかりだね、東京で出逢う男はみんなみんなさ
ペンギンもカカポもダチョウも空を飛ぶ世界にきみを連れて行けない
久々の実家の空気は透明で父も煙草も灰皿も無い
重要な書類ファイルに紛れ込む思い出せない花屋のレシート
日本では見れない皆既月食の日、ひとりで暮らす部屋を選んだ
倍近く生きてきたけど新卒の子らといっしょにプリンにはしゃぐ
何らかの開始ベルみたいな雷鳴だ 何にもない夜にとりま、乾杯
永遠という名前の犬がぽてぽてと歩道を歩くさくら散っても
戸籍上他人のままでつつく鍋 ファミリータイプの3LDK
だいじょうぶ?にだいじょばないと返すときややだいじょうぶになってくこころ
ねえいつか返すつもりはあったのに借りパクになるじゃんドラクエ7
ベランダを花でいっぱいにしたいのにミニ向日葵は枯れてしまった
心臓のなかに浮かんだ島に棲むカカポに会いに有給をとる
校舎ごと異界へ転移したときの備えなんですポテチもチョコも
朝イチの無人のオフィスで全力の発声練習する会、発足
静岡は通過するだけ車窓から富士が見えたらそりゃはしゃぐけど
剥き出しのぼくの感覚器に夏を教えてくれるポカリの結露
嫌いだし信じてないしもう二度と会いたくないのに好きなままだが?
はつなつにナノマシン入りの麦茶飲みあなたと誓いあった永遠
ひとりでもしあわせな日にねこが来てゲロと毛玉を落として去れり
窓際の上司もうるさいお局も腹の底にはロックンロール
愛情は多年草めき今は土の中で眠って春を待ってる
森厳の静謐のなか本を繰る音だけが響く平日のカフェ
いつだって行きたいとこに行けるよう翼の生えたスニーカー買う
ていねいに6と9には下線を引く人だから好きになってた
ドライヤーの時間が苦手という君の髪を乾かすブラック労働
あたらしい服を買うたびあたらしい街へ出かける約束をする
向かうとこ敵無しじゃんか無くしてた靴下片方ついに見つかる
ベランダで育てる苺に実がついてここまで虫が来たこと知る
私にはあなた程度じゃ足りないのせめて宇宙は見据えて欲しい
気難しい店主の顔色 いつの日か日替わり以外も頼んでみたい
何年も会ってない子とお茶をしたカフェの近くを通りすぎ 夏
東京へ届け念力 ふたりしか知らない歌がリフレインする
かなしみを雨が洗い流しても紫陽花にのこる君との日々よ
どこまでも田んぼが続く異世界が僕の生まれた故郷なのです
おかしいな夏までに五キロ痩せているはずだったんだがラーメン美味い
さぼってたペディキュアを塗る新しいサンダルにいつでも出会えるように
兵児帯の締め方の動画見続ける教科書よりも真剣に見る
ひょっとして君が存在しなくてもわたしは楽しくやってけるんじゃね
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