2024年3月 ①

春雷に共鳴すれば仕舞わないままのコタツがあたたかになる


この歌の主体は月の基地にいて地球を思っているのでいるのでしょうね


飛び切りのお洒落をして乗る地下鉄の窓に映ったわたし、可愛い


百日後、ポッピングシャワーの雨が降り世界は終わってしまうのでした


思い出は誇張されてて目に浮かぶあの日の桜は満開だった


この街の春をまるごと詰め込んで春巻きを揚げる 明日から四月


けど僕ら三十世紀を見ることは出来ないんだから、と湯豆腐を掬う


放課後のラーメン餃子を再現しふたり胸焼けして笑いあう


タナカさん検定一級 問二、いつぼくは赦され薔薇になれるか


宇宙から歌を受信するためのアンテナとして植える向日葵


やわらかい地獄みたいな恋愛で私は嫌じゃなかったよ、じゃあね


おしまいの日、きっと君は犬といてわたしはシチューを食べるのだろう


先生と呼んでた人らの持つ瑕疵を認めてわたしも先生になる


内腿の痣が消えたら春が来て桜が散って君を忘れる


この部屋で生きているのは蜘蛛だけで私は布団で沈没している


REUNION 卒業の日の黒板に書かれた文字を乱暴に消す


三月の雪を手紙に詰め込んで瀬戸内へ越す君に送ろう


通勤の途中の米屋の軒先のふくふくしている燕の雛よ


ひと袋蜜柑を食べ終え冬がこの部屋を飛び立つ音が聞こえる


春色のあふれた街はまだ寒く天使のような白い耳あて


閏日に生まれた君がもう四年に一度どころか年を取れない

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