きいろちゃんの短歌
さとうきいろ
2024年2月
アド街を見たと伝えて二百年地獄の刑期が短くなった
半ドンで家に帰れば少しだけ面倒そうに出されるチャルメラ
わたしには長すぎる丈のワンピース桜のつぼみに積もる粉雪
ほんとうに大切だから路地裏の穴場のカフェを教えてあげる
シャンプーがもうすぐ切れる去年より二倍の速度で減ってくもんな
淋しさが暴徒と化して冷凍庫の肉をすべて解凍しだす
長年の友の腹からはみ出した綿だけやけに白くてビビる
春待ちのミモザでリースを作る日は晴れると天使が噂している
真夜中の東京タワーによじ登る大人になるな、ぼくの心臓
活きがいいタバスコだったナポリタンの海が私を赤く染め出す
ゆらゆらと揺れる金魚の簪を差すとたちまち夏が始まる
高架下で語る哲学ホッピーの中の多さは愛の証だ
わたくしは抜け毛泥棒 愛用のブラシで今日も猫の毛盗む
億年後の博物館で並んでるわたしの化石と三葉虫と
家にいるときに限ってエラー吐くうちのルンバは構ってちゃんなの
言い訳がまた壮大になっていき君は今日とて世界を救った
くたくたになるまで待てず葱食べるひとり分でも鍋はあたたか
あやふやな割り算掛け算 酒場ではなぜかお釣りが余ってハシゴ
すこしだけあなたを救ってあげるからぴったり二人サイズの聖域
春来たる つまりここからひとり立ち知らない調味料さえ買える
殻付きの海老を上手に食べられるあなたは違う星の生まれだ
せめて風邪でも引きたい心配をされない強いつよいぼくです
伊勢海老と鮑のカレー スパイスが銀座の街を輝かせてる
ぽっかりと一人っきりの森の中遠く聞こえる村内放送
瑞々しい私の肉を代償に職場にラフレシアを咲かせる
比較的いい夜だった終電を無くして食べる夜パフェの味
自らの心を殺した罰金を貯めてそのうち温泉に行く
降り積もる雪を見ながら燗酒をつけるうるさいくらい静かだ
ここからを余生としようふわふわのオムレツをふたりで食べた日から
ちいさくて白い犬の夢を見た おそらく来年出会えるだろう
お祭りのカラーひよこが逃げ出して今では立派なスワンボートに
神様がくれた個体差だからこの癖毛も嫌いになりきれずいる
あたらしい公園に積もるあたらしい雪も結局雪だるまになる
わたくしのクリトリスはだれのものでもない抱いてどこへも行ける
本当の名前も知らない君だから衒わず本当の私でいれる
お別れの淋しさ(ここに不等号を入れてください)今のまま来ないLINEを待ってる淋しさ
この恋は日常になる気がしてて二度目のデートでサイゼに行った
二羽分のロティサリーチキンが並んでて歓迎会は儀式のようだ
わたしたち友達でしたか?口寄せで尋ねてみても君は答えず
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