アーティファクトの目的。
第38話 パーティメンバーと仲の良さ。
〘どこかの森〙
しばらくして、僕らはダンジョン探索合宿
の日を迎えることになる。
ダンジョンが初めてで浮足立っている者、
それを注意する者、眼がガンギまっている者
などなど、沢山の参加者がいる。
まあ、強制参加なんだけどね。
「宙、頑張ろうね!」
「ええ。」
「まさか、かの蒼井宙首席とパーティを
組めるなんて夢にも思いませんでしたよ。」
「あら、私のことは忘れたのかしら。」
「忘れておりませんよ。春奈夢風。
この石井、しっかりと覚えております。」
「随分と胡散臭いこと……」
「おや、なにか言いましたか?」
「まあまあ!仲違いはここら辺にしよう!
他の子達が萎縮してるじゃん!」
「あ、ありがとうございます。伊藤様。」
「助かりました……。」
う〜ん。貴族社会の縮図かな。
表面上は取り繕っている水月は怒り心頭
だし、先が思いやられるね。
「しかしながら最もこのパーティで
いただけない点が宙様が荷物持ちだと
言う事ですね。なぜでしょうか?」
そう言って石井なる人が水月を睨む。
「私も最初は反対したよ。でも宙ちゃんが
荷物持ちがしたい!っていうから。」
「本当ですか?宙様。」
「ええ、間違いないわ。」
「ふむ……。ならば良いでしょう。」
荷物持ちになった点は主に一つ。
後方で主に動くので寄り道がしやすい。
寄り道をすればフードの人がひょこっと
来るかもしれないし、アーティファクトを
見つけることが出来るかもしれない。
まあ誰かに話しかけられたり、
そういった理由で注目がこっちに向くと
この作戦自体が駄目だけどね。
『マスター、微力な神器反応を感知。
広範囲に撒かれているため特定は難しく、
長時間の探索を推奨します。』
よしキャッチ。集合場所からも届くなんて、
よっぽど強いアーティファクトなんだろう
なぁ。
「注目!これから説明を行います!」
おっ、いよいよか。
――――――――――――――――――――
〘ローグ森林 奥地〙
時刻はお昼前。
説明を聞いた後、ダンジョン探索合宿に
ついての要点を頭の中でまとめる。
・指定されたダンジョンを一週間で
攻略することが前提条件。
・戦利品は各自で換金する。
換金後の金は自由に使える。
・換金額に応じて成績が決まる。
改めて考えたらドギツいミッションだな。
流石、異世界と言ったところか。
「さっさと済ませて家に帰りましょう。」
「春奈ちゃんにさんせ〜い!」
「ダンジョンは舐めてかかったら
いけないと授業で教わりませんでしたか。」
「石井、戦場における最も大事な要素、
それは士気よ。士気が無ければ
今ある困難すら乗り越えられない。
貴方こそ、授業を真面目に受けたの
かしら。そういう士気のない貴方から、
案外死んでいくのかもね。」
「貴様ぁ……。」
本当に大丈夫なのか、と不安になりつつ
僕たち一行は進んでいく。
道中にモンスターは居ないが、
その代わりに原生生物が牙を剥く。
この世界ではモンスターはダンジョンから
出ず、ダンジョン以外ではほとんどが
地球とほぼ同じ生態系をとっている。
地球と違う所、といえば原生生物も
魔法のような物を使うところだろうか。
原生生物は体内に含まれた、蓄えられた
魔力で身体強化を行って獲物を狩る。
瞬発力が優れた者が勝つのがこの世界で、
虫などの生物も本気を出せば地球の鷹の
スピードを一瞬だが超えるだろう。
つまりだ。
「感知横一体。来るわ。」
「ブゥーン!!」
激しい風切り音と共に何かが突っ込んでくる
様子が見える。その生物は一瞬の隙に
僕たちの上を通り抜ける。
「鹿、忙しないわね。」
動体視力で鹿だとわかったが、
それでも速い。本当にどうなってるんだ。
「鹿さんも食べ物が欲しいんだよ〜。
宙ちゃんはお腹空いてないの?
かれこれ夕方だよ?私お腹ペコペコ〜。」
「そうね。流石に支度をしましょう。」
「宙の料理が食べられるなんて、
やはり付いてきて正解だったわ。」
「貴方は食べたいだけでしょう。」
「御名答よ。気が合うわね。」
「宙の作る料理って美味しいの!?
将来絶対いいお嫁さんになるって〜。」
春奈お嬢さんは食いしん坊だし
僕はお嫁に行かないし。
『式場は何処にしますか?
マスターのウェディングドレスが
楽しみで仕方ありません。』
だからお嫁に行かないって。
「はぁ……。拠点を作るから、
いい感じの平地を探しましょう。
明日にはダンジョンにつくはずだから、
今日はゆっくりと休みましょう。」
「さんせ〜い。」
僕が大まかな指示を出すと、
彼女らは手際良く予定地を見つけ、
僕はそこに焚き火を作り、マットを置く。
大半がボンボンの集まりだからといって、
1-1はそこまで甘い集団ではない。
やっぱ頭のおかしい集団だわ。
「始まりました〜!宙ちゃんの
3分クッキング〜!
本日の食材は何やら怪しい鍋です!」
「とは言っても、調理すらないけれどね。
ホーリー・オーバー。
ウィンドメント・マルチ・フォーカス。」
焚き火の火を消さないよう、慎重に風で
鍋を支えて再加熱する。
そしてホーリーを殺菌の用途で使う。
ホーリーを使うことで鍋は清潔に、
そして中の料理は安全に保たれるのだ。
『死にませんかそれ?』
大丈夫。もうホーリーをドブドブに漬けた
料理を近くの春奈さんって人が
食べてるから。
『はぁ…。』
鍋はすでに圧力鍋状態なので、
早く火が通るはず。
まあ気長に待ちましょうか。
さて再加熱をしている最中、
当然の疑問が飛んでくる。
「あの、宙様。その鍋は食べれるもの……
でしょうか?」
「心配ないわ。宙の料理は何時だって
浄化された安全な料理だもの。
私も毎日食べてるわ。」
「「浄化!?」」
うんまあ、料理を浄化する人は
今まででわた……僕だけだろうね。
あっぶな一人称気をつけなくちゃ……。
「宙ちゃん〜。鍋からいい匂いするよ〜!」
「出来上がったわね。」
当然の疑問に答えてる最中、
思ったよりも数倍早く出来上がったらしい。
「この匂い、以前食べたアレかしら。」
「御名答。シチューよ。」
まあ栄養が取れればいいという考えなら、
某黄色と赤と黒の国旗の不味い完全食に
突っ走ってしまうので、異世界の魔法を
総動員してシチューを持ち込むことに
成功する事が出来た。我ながら名案だ。
「「シチュー?」」
「私も聞いたことがない料理の名です。」
「知らないのも無理ないわ。宙が考案した
料理なんだもの。」
「えぇー!!水月ちゃんびっくり!!」
「では宙様、シチューとはどのような
料理か説明していただけますか?」
「牛の乳とコンソメをベースに煮込んだ
クリームスープというものと、
それらに切った野菜と肉を入れた栄養食。
しっかり具材も煮込めば乳のまろやかさが
具材全体に染み渡り、ほのかに香る
コンソメが味を引き立てる料理よ。
コンソメは入れても入れなくてもいいの
だけれどね。」
「なんと……そのような料理が……。」
「うちの宙は凄いのよ。」
何故お主がドヤる春奈お嬢さん。
「……魔力も回復するから、食べて頂戴。」
シチューを考案したヨーロッパの方、
大変申し訳ない。
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