第37話 別にラブコメは求めていない。ほんとに。
〘???〙
「……っ!?」
「大丈夫か宙!」
意識が覚醒した瞬間、僕は飛び起きた。
周りを見渡してみると、主人公ズと水月が
イスに座っており、僕はベッドの上に
いるという状況がわかる。
つまり見知らぬ天井と見知った主人公と
あと主人公の顔が近い。
「心配したぞ……急に倒れるもんだから。」
この身体って気絶っていう概念あるんだ。
ほへ〜。
一応、体の不調がないか確かめる為に
手を閉じたり開いたり、
体内の魔力の流れを確認したりした。
まあ、大丈夫っぽいね。
「そこで不調の確認をするあたり、
実に貴方らしいですね。宙。
少しはお礼を言ったらどうです?」
そう言われなくてもお礼はするつもり
だったのだが、まあいいか。
「ありがとう。お陰で助かったわ。
運んだのは正義かしら。」
「そうだね。俺が運んだ。」
「ありがとう。」
できる限り微笑んで感謝を伝えてみる。
一応身体の性別は女子からのお礼だ。
さぞ嬉しかろう…って違う違う!!
『可愛いですね』
違います可愛くありません!!
ちょっと自分の選択に後悔していると、
顔を赤らめる正義くんと灯明さんの姿が
見える。
「これは……。」
「って何見惚れてんだ俺……。」
あぁぁぁぁぁ!!!
何か気まずい空気がしばらく流れ、
その間僕は脳内で叫んでいる。
その後しばらくして正義が動く。
「まぁ、うん。用事はそれだけなのと、
落ち着いたら帰って良いって鮫島先生が
言ってたから伝えとくね。
それじゃ、また明日。」
「ええ、また明日。」
「それじゃ、行こっか。灯明。」
「ええ。」
正義とほどほどの挨拶を交わし、
正義がこの部屋から出ていく。
部屋の窓は空いており、そこから新鮮な
空気が流れ込んでくる。
夏というにも関わらず、今日はどうやら
大して暑くない日らしく、風は涼しかった。
「なんか青春ラブコメだなぁ……。」
一つの嵐が去って冷静に物事を考えてみる。
なんとなくだが、青春を感じている。
今まで少年バトル漫画な雰囲気が
多かったが、それは原作のストーリーが
そうだからというだけの事。
異世界ではあるものの、こうして学園生活
を楽しめるんだね。
性転換して何か色々とあったけれど、
結果としては落ち着いてるのかな。
「随分と落ち着いたご様子で。」
聞き覚えのある声が窓側からする。
そこには黒のフードを被った人物がいる。
現在は日も落ちきり、闇夜に紛れて
やや見つけにくかった。
「それで?ブラックパーティの方が
ここに何のようかしら。」
「釣れないですね。まあ良いでしょう。
……たった今の情報なのですが、
魔力が停滞している箇所が発見され、
そこにアーティファクトの魔力反応が
発見されたと報告がありました。」
魔力の停滞、レイド戦か。
いやはや、青春出来たと思ったら
悩みの種が出てきたよ。
「それで私には何をして欲しいのかしら?」
「貴方にはアーティファクトの回収を
依頼したい。報酬はそのアーティファクト
を保有する権利です。」
「いいわ。受けてあげる。」
「貴方ならばそう言うと思いました。」
そう言うと黒フードの人は僕の手を取り、
キスをする。
キスをする!?
「ちょっとした挨拶です。それでは。」
キスをした後に、黒フードの人は去る。
後に残されたのは、思考の蒸発した
僕しか残っていなかった。
――――――――――――――――――――
〘アストリアルチュア寮 食堂〙
『マスター、ですから寝てください。』
や!
『とうとうマスターのストレスが
限界に達しましたか……。』
違うから。
『暴飲暴食をする女の子って、
絶対何かあった人ではないですか。』
現在僕は自炊した料理を片っ端から
食べている最中だ。
理由としては正義とのラブコメが始まり
かけたり、フードの人にキスされたり、
まあ色々とある。
真面目に青春できると思った矢先に
これだよ。ブラックパーティに入らなきゃ
良かったかもしれない。
『正確には協力者ですけどね。』
最近は女子として過ごしていくうちに
何かがねじ曲がってる気がするんだよな。
もしかしたら好きな性別とか……。
アアアアアアアアアアアアアアア!!!
『床で転げ回らないで下さい。』
その日の朝には食堂に転げ回っている
女の子はいたとかいなかったとか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます