第36話 反動は大きく返るもの。

最近遅刻多いけど許して!!

――――――――――――――――――――


〘叡門学園 1-1教室〙


僕は冷静を装いつつ、情報を聞き出そうと

試みる事にした。


「あったわね。」


「そうそう。今回はヤナカダンジョンに

行くんだってね。あそこ魔法に弱い

モンスターしかいないって噂だから

魔法使いを入れたパーティにすることが

必須らしいよ〜。」


「……何のつもりかしら。」


「お願い!一緒に組んでくれない?」


「いいわよ。」


「やったぁ!!」


情報を聞き出そうと思ったら流れで

パーティを組むことになったな。


『周りに流されやすいって、

よく言われませんか?』


し……知らないなぁ〜。


「いやぁ。首席確保したら百人力だよ!」


そういえば首席だったな…。

なんかしょっちゅう忘れるわ。

最近の睡眠時間って何時間だっけ?


『1〜3時間かと。』


ハードだなぁ。まあしょっちゅう

ダンジョンに潜ってるから当然か。

最近は貯金が2000万エルに届きそうに

なってるんだよなぁ〜。楽しみ♪


『2000万も稼いで何をするのですか?』


100万使って自動排出の腕輪を買います。

はい、今そういえばそんなのあるなぁ。

って思ったヴァルハラさん。


『思っておりません。』


あ、そうなんだ。まあいっか。


それで自動排出の腕輪を買った後に

魔導書とかを買っておきたい。

生活に役立つ魔法とか絶対に使えるからね。

まあ基本的には道具を出す魔法か。


後は空間魔法のついた高級バッグか。

僕とヴァルハラさんはダンジョン攻略

した後すぐに次に行くから、たまに

バッグの容量が超過してなくなく

魔力消費量の多い空間転移を使うん

だよなぁ。


それで何回かフィジカル幼女になって、

その時に一回ナンパもされたなぁ。

全然振りほどけないから魔法で光を

出して逃げ切ったけど。


『あの時は憎悪が湧きましたね。』


それはそれとして、

まあバッグは魔力消費量を抑えるための

手段の一つだけど、

そろそろぶっ壊れ性能の神器の権能が

欲しい所ではあるな。

例えば吸収系の権能を持った神器とか。

魔力の補給に便利そうだから欲しいけど、

なんか一個あった気がするな……。


『「サウルラ」ですね。』


うむ。あやつ結構辺境にいたらしいから、

持ち主が出る前に取っておきたいね。

主人公一行が見つけてたけど、

アルストの意向で放置される事になった

可愛そうなサウルラちゃん。

いつか取ってあげるからね。


『これ以上自身を強化してどうする

おつもりでしょうか。』


全力でシナリオブレイクを阻止します。

さてそれはそれとしてお散歩合宿は

どうしようか。

まずはパーティをどうするのだろうか。


「パーティメンバーに当てはあるかしら。」


「今のところ宙含めて3人かな。

出来れば大人数がいいよねぇ。」


パーティメンバーパーティメンバーと、

まあ実にゲームらしい単語と

僕自身がゲーム感覚でダンジョン無双して

いるせいで感覚麻痺していたが、

あくまでもここは現実。


四人パーティという勇者一行の低予算編成

ではなく、しっかりと準備を整えてから

いったほうが良いだろうな。


「大人数なら荷物持ちと前衛後衛、

最低でも6人は必要かしらね。

私が荷物持ちと後衛を兼任するから、

後は適当な人を勧誘してきなさい。

必要なら私の名義を出して構わないわ。」


「ありがとう!なのは良いんだけど、

後衛と荷物持ちって大分キツくない?」


「最近空間魔法が使われた高級バッグを

買おうと思ったから、それの試運転よ。」


嘘です目立ちたくないだけです。


「予算何万エルのやつ?」


「1500万かしら。」


「せせせ1500万も!?」


水月が大声を出した事により、

周りの話し声が止んで、視線がこちらに

向けられる。


「そんな大金、持ってるの?」


それを嫌でも察した様子の水月は小声で

話しかけてきた。

……が、しかしながら現実は無情なのか、

2人の反応が背後から近づく。


「凄いね宙は。

そんな大金、俺は持っていないや。

灯明はどう思う?」


「まあ、現実的ではない額ですね。

いくら大弓家の令嬢でも、

数100万しか月に貰えませんから。」


「わわ、学園の強豪が集まって

来ちゃったよ。一体どうなるの。」


どうにもならんやろ。


「どうもならないから安心してほしいな。」


「正義に同意見です。」


ほら、2人もそう言っているから。


『マスターは一体誰に話しかけているの

でしょうか。ついに睡眠不足で

イマジナリーフレンドを作って……』


睡眠不足はいつもの事だし……

そういえば眠いなぁ……。

睡眠不足って自覚すると余計眠いわ。


「……どうしたんだ宙。

そんな眠たげな顔をして。」


あれ、してたっけ?


『マスター、ダンジョン攻略で毎日

夜ふかしした挙げ句、原作外イベントに

対して対策をずっと思案して

脳も身体もフル回転させた人が

何を今更ですよ。』


むしろここまでよく持った方なのか……。


その瞬間、気が抜けたのか急に視界が

揺らいだ後に地面と頭の距離が近くなる

のを感じた。


姿勢を崩したのだと察した瞬間に、

背中と膝裏に温かい感触がする。

その後急激に正義の顔が接近し、

声をかけられた。


「危ない危ない。宙、聞こえているか。」


温かい感触はまるで、幼い頃に感じた

父親の大きくゴツゴツした手を彷彿と

させる、何か安心感のある温もりだった。


「駄目ですね。全く聞こえていません。」


「宙ちゃん結構無理してたのかな。

水月心配だよ〜。」


遠くに聞こえる子守歌が心地よい。

まるで自分が海に入り身を預けるように

リラックスしているようだ。


何か感覚があやふやになるのと同時に、

意識は瞬く間に落ちていった。

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