第34話 シャベッタァァァ!!!

遅刻許して!!!

――――――――――――――――――――


〘アストリアルチュア寮 自室〙


翌朝の5時。ゆっくりと身体を起こし、

その後僕は慣れた手つきで制服を着る。

なんだかんだで女子制服は慣れてしまった。


今日は夏休み前の終業式。

主人公くんはこれからが地獄の日々だろう。


そういえばだが、レイド戦は夏休み中に

起きるんだったな。

夏休みはとても都合の良いフラグメイカー

だなぁ。


今思えば原作は学園に通う二年の間で

沢山のイベントがあったなぁ……。

突発的に出現した上級ダンジョンの攻略、

ブラックパーティとの激しい戦闘、

文化祭も良かったな。


今思えばたかが学生には荷が重すぎる

イベントなんだよな。

大人はしっかりしてほしい。


頭の中で愚痴を吐きながら階段を降りて

二階から一階へと降りる。

二階と一階には断罪者候補達専用の部屋が

あるのだが、一階には食堂が存在する。

食堂では配属された料理人がいるのだが……


「さて、始めますか。」


何故か僕が料理人になっている。

いやはや、

ジンセイナニガオコルカワカリマセンネ。


『マスターがホーリーを乱用して

違法ドラッグもどきの料理を作るから

ではないのでしょうか?』


ホーリーは浄化なので違法ではありません。

それとドラッグでもない。

ただ良き薬は時として毒にもなりうるので

一概に否定は出来ないなぁ。


経緯はこうだ。

銀髪ハーフアップお嬢様……春奈はるな 夢風ゆめかぜ

ダンジョン帰りの深夜帯で僕がしている

夜食タイムに毎回忍び込む。

スーパーの品揃えとかが現代に近いが、

この世界はまだ料理が発達途上だ。


つまり、僕の作る自炊メニューの数々は

殆どが新しく生み出されるかつ、

先程のホーリーで美味しくなる謎コンボを

生み出してしまったせいでこの世界の

料理人を料理特化の人ではないが凌駕する。


そして、夢風お嬢さんが断罪者候補のメンツ

全員に言いふらしなくなく作る羽目になる。


結果、全員が権力乱用し前の料理人は

退職までおいこまれることになったのだ。


最終的に僕が多数決で負けてこうして

皆んなの餌付けをしている。


ちなみに今日は手速くサンドイッチと

ポテトサラダだ。

マヨネーズ?半熟卵をミンチにしたもので

代用しますが。


『マスターのママ概念もいいですね……。

おかわりをねだられた瞬間に一瞬微笑む

マスターの顔も大変素晴らしい……。』


そしてヴァルハラさんの性癖も歪む始末。

あなた一応アーティファクトっていう

この世の理不尽を1週間ぐらい煮込んで

ドロドロに溶かした武器達に対抗出来る

最強武器っていう立場なんだよね?


『ええ。事実、アーティファクトの

フラガラッハを襲撃事件の際に真っ向から

潰しましたね。』


それが今やこんな私の行動に可愛いだの

尊いだのバブみがあるだの変な事を

言う子に育って……。


『……!?!?』


どうしたんだヴァルハラさん。


『シャベッタァァァ!!!』


……!?!?

へ!?どうしたのヴァルハラさん!?


僕は包丁で食材を切る手を止めて

ヴァルハラさんの心配をする。

何やら様子がおかしい……。

別に変な喋ってないよね?


『摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩行深般若波羅密多時……』


般若心経は今唱えるもの……?

物事の本質を「くう」だと捉えても

今「くう」を感じる場面はなかったし

本当に一体どういう事なんだ。


『……何でもありません。』


何でも無くはない大事だからそんな

反応したんだよね。



『……何でもありません。』


なんでもなくは「ガチャッ……」


僕がヴァルハラさんを問い詰めようとした

瞬間に例の春奈お嬢様が来てしまった。

やっば急いで準備しなくちゃ!!




――――――――――――――――――――




〘アストリアルチュア寮 食堂〙


あの後ヴァルハラさんフル稼働のもと、

何とか3分以内でサンドイッチとポテサラを

残りの人数分も仕上げることが出来た。


現在は続々と人が来て食事をしている。

春奈お嬢が一番早く起き、そこから残りの

全員が固まってぞろぞろと来るのが

アストリアルチュア寮の日常風景だ。


そして席に着くやいなや軽く食事の挨拶を

して食べ始める。


「相変わらず美味いな……。」


髪は殆ど短く紅く燃える色、

顔や制服からはみ出た部位から見える

筋肉質な身体。

宙の身長を凌駕する180cmオーバー。

背中に宙の身長ほどもある大剣を担いだ

ヤンキーのような風貌の人間の

我熱がねつ 炎帝えんてい


「……。」


よく光を反射する黒色のキノコヘアー。

モノクルをかけた全体的に平均的な顔。

170cm近くと意外に身長は高く、

そして細身な身体の人間の

水沢みずさわ 知握ちあく


「ちょっとゴリラ、食事中ぐらい

静かに出来ないのかしら。」


丁寧にセットされた滑らかな

ミディアムヘアーに宝石をあしらった

ヘアゴムを使ってサイドテールが

作られている薄桃色の髪。

やや薄化粧をしているようにも

見えなくもない顔は人間らしさが出つつも、

整った顔を作り出していた。

身長は宙よりも少し大きい160cm。

胸も宙よりやや膨らんでいる。

見た目からは活発な印象を得る人間の

志野しの 千夏ちなつ


「矛を交えるのは練習程度にして

おきなさい。また昼を抜きにするのが

良いならそれでも良いのだけれど。」


銀髪にハーフアップのお嬢様。

身長は宙と同じで、スリムな体型といい、

髪色以外は殆どが宙に似ている。

性格は冷静沈着、時に貪欲な人間の

春奈はるな 夢風ゆめかぜ


宙を含めた計5名が現在の断罪者候補だ。


「わ〜ってるよたく……。」


「流石に言い過ぎたかしらね。」


志野と我熱がお互いに言葉の牙をしまう。

次に動き出したのは我熱だった。


「そうだ宙。今日も付き合ってくれるか?」


突然の問いかけに動じず、彼は返答する。


「良いわよ。ただし、程々にね。

私も長く付き合っていると面倒臭くなる

のだもの。」


「そうは言ってもノリが良くて倒せない

好敵手ライバルは宙しかいないんだよ。

他の連中はノリが悪いかすぐ潰れるかの

二択だからな。」


「はぁ!?私はどうなのよ!?」


「千夏はライバルじゃねぇ。

ただの喧嘩相手だ。」


口論しながらもちゃんと完食している2人を

眺めながら、ゆっくりと3人が食事する

日常茶飯事。


春奈は呆れながら食べ、

水沢は黙々と食べ、

宙は口論する2人を子を見るかのように

眺めながら食べる。


3ヶ月暮らして起きた日常の変化の一つ

なのであった。

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