第17話 これが余裕というものだ。

僕たちはパーティーを組んで順調に

進んでいた。

理由としては僕とヴァルハラで

既にクリアリングが終わっていた

という事である。


『そもそも我々は攻略して帰還しよう

としたらこの状況ですからね。』


そう、敵が再出現していない為、

現在は全く敵がいない状態なのだ。

いやはや、バッグには魔石がいっぱい。

もう一ダンジョン巡ったら換金するか。


「そういえば、お名前をお伺いしてません

でしたね。」


確かに、まだ名乗っていなかったね。


「ヴァルハラよ。」


「ヴァルハラさんですか。

聞いたこと無いですね。

そこまで強いなら、何かしらの噂に

なっているはずなんですが。」


そもそも今まで存在すら無かったからね。

それに人の評価とか、あんまし興味ないし。

自分のしたい事だけしてきたしね。


「そう。人の評価とか気にした事ないわ。」


「ちなみにヴァルハラさんって

上級冒険者なんですか?」


「いいえ。」


鏡映しの神話原作でもそうだが、

上級冒険者以降の強さの生徒は大体

学園お抱えになる事が多い。


実際、僕とヴァルハラなら上級冒険者

クラスになれるのだが、

僕単体だとそうはいかない。


僕単体だと初級ダンジョンを何とか

攻略出来るレベルで、そもそもの魔力量が

全く持って少ないのだ。


知識はあるけど使うことはできない。

座学で学んだ事を実戦で活かせないのは

致命的な事である。


その魔力量や演算をヴァルハラさんが

肩代わりしてくれているので、必然的に

性転換前と後では実力に雲泥の差が

生じるのだ。

……もっとも、それ以外にもヴァルハラ

には沢山の効果があるのだが。


ヴァルハラさんが言うには、まだ完全に

引き出せて無いらしいのでこのままの

実力でのらりくらり生きてゆこう。

ヴァルハラさんが居るならば探索者として

の道も悪くないかもしれない。


『敵多数。曲がり角の先、リポップかと。

種族はスライムと推定。』


「敵を発見したわ。」


「早っ!俺、探知出来てないんですが。」


「凄すぎます〜。」


「気を付けてかかりなさい。」


「分かりました。みんな!戦闘準備だ!」




――――――――――――――――――――




身体強化ハイワルツ!」


「ウォータメント〜!」


「「身体強化ハイワルツ。」」


三人が身体強化を行い、一人が魔法を撃つ。

うむ、少しアンバランスだな。

よく見なくても分かるが魔法を撃つ役の

負担が大きい。まだまだひよっ子なのかな。


そう考えると前の少女三人組って、

結構序列が上だったりするのかな。

だとしたら原作に乗っていてもおかしく

無さそう。


うむ、考えていても仕方が無い。

とりあえず魔法を撃とう。


「ファイアメント。」


火の玉は無事に命中。そういえばここ、

初級ダンジョンでも屈指の物量を誇るって

入口の看板に書いていたな。


だとしたら適正は範囲攻撃か。

範囲攻撃…範囲攻撃…そういえばこれが

あったな。威力を抑えてと。


「ファイアアール・フォーカス。」


彼がそう言い放った瞬間……


「ゴゥッ!!」


辺り一面が火に包まれる。

奥の敵はあらかた火の海に沈み、

残りは四人が相手取っているスライムのみ

となっていた。


「せりゃ!」


「ウォータメント〜!」


「えい。」

「とどめ。」


かくして、戦闘は終了した。


「もしかして、俺達いりません?」


「これから強くなれば良いのよ。

若い内に悲観的になる必要はないわ。」


僕も若いから人の事言えないけど。

まあ、強い人から言われれば多少の

励みになるはずでしょう。


それに、何となくだけど、

会話に慣れてきたな。

ありがとう、少年少女。


『何故上から目線を?』


ちょっとやってみたかった。

それだけ。


「ありがとうございます!

ヴァルハラさんみたいに強くなれるよう、

頑張ります!」


「私も魔法を特訓しないとですね〜。」


「「連携の強化も図るべき。」」


思わず「ふふっ。」と笑みが溢れる。

青春は良いね。僕もこんな未来が

あったのかな。


『一生を勉学に費やすことは虚しい事

なのでしょうか。』


僕はそうは思わないかな。

この人達にはこの人達の人生があるし。

僕は勉学に全力を費やして後悔した事は

ない。結果として異世界に行けたしね。


ただちょっと妬けちゃうなぁ。

学園に入ったら青春をエンジョイしようか。


『マスターの決断に、

私もついていきますよ。』


頼もしいね。


「ヴァルハラさんは、

この後何をするんですか?」


急に来たな。そうはいってもな……


「取ってきた魔石と素材を換金して、

日々をゆっくり暮らすだけよ。」


「そうですか……。」


何この間。建前でも良いから目標言った

方が良かったかな。


「まあ、上級冒険者で有名になるのも

悪くないかもしれないわね。」


「……!応援してます!」


おっ。好感触。まあどのみち家を持つにも

中級と上級ダンジョンが必要だし。

どのみち上級冒険者証が必要かな。


そろそろボス戦だし、彼らは腕輪を着けてる

みたいだし、僕はボスを倒したら

とっとと退散しますかね。


「ここがボスがいる部屋……。

みんな、頑張ろう。」


発言がめっちゃ主人公属性だけど、

モブパーティーなんだよなぁ。

そういや配信のコメントはどうなってるん

だろう。気にしたら負けか。


リーダーっぽい人が厳かな扉を開けると、

中心には再出現したボスが鎮座している。

180cmはありそうな高身長に刀と甲冑を

装備している骸骨。


刀は懐に刺さっており、甲冑は全体的に

赤く塗装されている。

兜には飾りは無く、大きく角が2本、

左右から飛び出ていた。


「よし、いくぞ!」


「「「うん!」」」


みんな頑張れ〜。僕は援護だけして

成長を見守るからね〜。

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