第10話 新しい力を手に入れたら噛ませ役がいる。

『そういえばですがマスター。

男性の筈ですが随分と可愛らしいですね。』


「うっさい。」


深夜までずっとだったり、

早朝に起きて直ぐにだったり、

ヴァルハラと会話を楽しむ。

ここで言うのもなんだが、

しばらくホテルで話す内に仲良くなった。

最初は結構真面目な思念体かと思ったが、

良い意味で前言撤回させて頂きたい。


『マスター。』


「なに。」


『マスターの記憶によれば、

ここは「鏡映しの神話」の世界。

そして過去に読み込んだ資料によれば、

学園は基本的に年齢さえ合えば

誰でも入れるみたいですね。』


「そうだけど。」


「マスターが年齢を偽れば、

学園に入れて、寮に通えるのでは。」


盲点だ。というより大学一年生で

高校に通うという発想に至らなかった。

確かに騙せば入学は可能だ。

幸いにも、まだ年齢設定はしていない。


「というか、さり気なくこの見た目を

ディスったな。このポンコツ銃。」


『事実を述べたまでです。』


「それ事実陳列罪。それはともかく、

年齢をちょちょいと弄れば、

家が手に入る。ちょっとやりたくないけど、

やるしかないね。」


『ではやりましょう。』


ヴァルハラが言葉を発した直後、

ヴァルハラは腕輪へと姿が代わり、

透明になって消えていく。


「便利だよねそれ。」


『便利です。あとマスター。』


「なに?」


『外でもこうやって話すと不審者だと

思われるので、念話に交信方法を

切り替えても良いですか?』


「どうぞ。僕も社会的に死にたくないし。」


『交信方法切り替え……完了です。』


本当便利だよね〜。

攻撃の際に女体化する点を除けば。


『そればかりは私の制作者に。』


大方そうしないといけなかったか、

変態の趣味かの二択でしょう。

心底どうでも良くなってきた。


『同感です。マスター。』


よし、あの制作者は忘れて

学園を目指そうか。えいえい、お〜。


『お〜。』




――――――――――――――――――――




やってきましたはダンジョン。

思い立ったが吉。計画が決まった後の

僕の行動は早いのだ。


ここで性別の変換登録のための

口実を作成する。


何故性別変更をするのか?

僕が男だからだよ!悪い!


『マスター。今の発言は女々しいかと。』


うっさい。ちなみに筋書きとしては、

トラップにハマって性転換した。以上。

ついでにやってなかった年齢設定もいじる。


もう一度言うが、ダンジョンは事件・事故は

セルフジャッジ。しかもこの時期は

全くそこら辺の法律はない。

しっかり悪用させて貰おう。


「ダンジョン探索ですか?」


「はい。」


「プレートの提示をお願いします。」


何度かやったプレート提示。

この時は声のピッチを

上げさせてもらう。

女の子を今は印象づけさせて貰う。


「プレートの確認が取れました。

いってらっしゃいませ。」


この後、僕はダンジョンの罠にハマって

性転換するシナリオだ。名付けて、

「ダンジョンから帰ったら

いつの間にか男性に!?」作戦だ。

この際に受付を通して性別の変更を

する後押しもしてもらおう。


性別変更の呪い(仮)をかけるのは

この方。ヴァルハラです。

ヴァルハラにそれっぽい魔法陣を

書いてもらって、理由を


ヴァルハラさんにもう一押し、

それっぽい根拠が欲しいとお願いしたら、

快く引き受けてくださいました。

ありがとうございます。


『任せて下さい。本物と遜色ない

偽装魔法陣を書いてみせます。』


頼りになりますね。では行ってみよう!




――――――――――――――――――――




ダンジョン内部。彼は彼女になり、

攻略を順調に進めていく。


「思ったんだけど。この状態って男性だと

バレないよう、口調も変えるべき?」


『そうですね。女性らしい口調に

変えるべきかと。違和感になります。』


「ん゙っん゙ん……こうかしら。

私、違和感すごいわね。」


『そんな感じですね。

記憶でいうところのミステリアスな

雰囲気の少女って感じです。』


「そう、なら良かったわ。」


『テンプレ臭がぷんぷんしますが、

まあいいと思います。口調に関しては

こちらからもアシストします。

女性の際には男性の口調にならないよう、

男性の際には女性の口調にならないよう、

細心の注意を払います。』


「よろしく頼むわ。役に成りきれるよう、

こっちも頑張るわね。」


『既に十分成りきっていますね。

記憶にはそのようなものは無いので、

才能でしょうか。』


おい、誰が演技派俳優だ。

僕の人生を否定するな。


『どちらかといえば女優では?』


僕の人生の叫びを無視するなぁ〜〜。

……ん?感知に敵だ。


『曲がり角に敵一、ダンジョンの融合と

同時に来ます。』


うぇ?!ダンジョンの融合?

それって不味いんじゃ?


――――――――――――――――――――


tips:ダンジョンの融合

異変の一種として扱われる現象。

異変の中でトップクラスに危険視される。

ダンジョンの融合の際、または前兆で

急激な魔力濃度の変化が起こる。


別の異変とこの異変の前兆の大差がなく、

予測が難しい異変としても有名である。


――――――――――――――――――――


『魔力濃度は初級から中級へ。

魔力濃度、依然として上昇傾向。

モンスターはボスクラスと推定。

近くに生存反応。救助を考慮し、

ボスクラスの殲滅をこの場で推奨します。』


了解。暴れてやりましょう!

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