第5話 情報をもらった。

本日2話目です。

――――――――――――――――――――


朝、日の眩しさに目が覚めたら、

天井とベッドと家があった。

よく分からなかった。


えっ、誘拐?違うな。

袋はすぐ近くに置かれている。

身体は自由に動かせる。

拘束具もない。ますます分からない。


誘拐が目的ではないならなんなんだ?


そう思案する内に扉が開く。

ヒゲがちょっと生えていて、筋骨隆々な

イケオジがそこに立っていた。

赤髪のベリーショートな髪型。

顔面偏差値の高い顔。

そしてそれらの雰囲気を壊す作業服。


そして何より、その人は声がけに戸惑う

表情を一瞬見せた。


多分、悪気があって

誘拐したんじゃないだろうな。

憶測だからあんまり信用しない情報だけど。

ぱっと見、優しそうだ。


「えっと、身体に異常はないかな。」


男はそう話しかける。


多分自分で考えて当たり障りない話題が

これだったのだろう。

一度話に合わせて様子を見よう。


「はい。大丈夫です。

えっと、あなたのお名前は?」


「私ですか。私はエラルドと申します。」


エラルド……モブキャラに居たね。

あの子、容姿の描写がなかったストーリー

初期のモブキャラだから気づかんかった。


という事はここ実は王都に近いのでは?

主人公達がエラルドと出会ったのは……

「リャールド」付近か。

ユーラスにまあまあ近かった気がする。


なんか偉く帳尻が合うな。

神様のおかげか?いやいや王都に

行かせてくれ。生活だいぶ辛いぞ。

まだ一日しか経っていないが。


いかんいかん。会話を続けよう。

この人、多分情報聞き出せるわ。


「あの。まずここは何処ですか?」


「えっと、僕のログハウスです。

理由があって、ここに運び込ませて

貰いました。まずはそれを

詫びさせて下さい。」


「大丈夫です。それで理由とは?」


「はい。私は林業を営んでいまして、

私が切った材木に誰が動かす反応があり、

その先にあなたがいたんです。

流石に材木の運搬に支障が出ますし、

何より子どもがそこに寝る事が

問題の確率が高くなりそうなので……。


かいつまんで説明するとこうなります。」


なるほど正しい。

というか倒木ではなく

切った材木だったのか。こりゃ失敬だ。


「えっと。こちらにも非があるみたい

ですね。ごめんなさい。

謝罪とお礼と言っても何ですが、

何かお返しをさせて下さい。

これでも冒険者なので、役に立てるかも

しれません。」


「いえいえ。受け取るわけには。

どんな形であれ、貴方を誘拐してしまった

のは事実です。おあいこということで。」


「分かりました。では、最後に

聞きたいことがあるのですが、

よろしいですか?」


「はい。何でもどうぞ。」


「ここから近い街にリャールドという街は

ありますか?」


「はい。ありますね。私でも徒歩で通える

距離にあるので、近いですよ。」


「なるほど。では最後に、現在の時刻は

分かりますか?」


「はい。ちょっと待って下さい。」


そう言うと男は魔法を使う。


「私の前に世界の今を示せ。タイム。」


現在の時刻は、5月18日の7時14分と。


「こちらです。」


「すいません。ありがとうございます。」


「お役に立てまして何よりです。」


「お返しと言っては何ですが、こちらを。」


そう言ってりんごを一つ差し出す。

まだ鮮度は落ちきっていないはず。


「ありがとうございます。

また役に立てることがあるならいつでも。

近くの町に、私の工場があるので。」


「ありがとうございます。

お世話になりました。」


流石に人様の家も時間も借り続けるわけ

には行かないので、とっとと撤退だ。


僕は彼に一礼すると、家から出た。

彼は満足したように笑っていた。




――――――――――――――――――――




よく寝た所で、今日はリャールドに行って

ダンジョン攻略だ。

リャールドはダンジョン街。

原作では、曜日ダンジョンがある場所と

して、若干の知名度を誇っていた。


素材集めの周回でお世話になりました。

さあ行くぞリャールド!

あわよくば生活費を貯めたい!

出発〜!






――――――――――――――――――――

これにて、「とある街にて」編終了です。

主人公を育てるパート作りって難しい()


next map→リャールド

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る