第3話 初めてのボス戦は大体一回はやられる。
あれから僕は講習所に行って、ダンジョン探索のいろは的なものだったり、魔法やスキルについてだったりを教えてもらった。小さい街ながらも、そういった教育設備はしっかりしているようだった。
改めてダンジョンに潜った僕は感知や暗視、思考加速などのスキルを発動して、全力疾走では無いもののそこそこ飛ばして進んでいた。ビビり過ぎて収穫なしって嫌だからね。
「む、感知に敵一体」
程なくして僕は曲がり角の先に敵を見つける。緊張しながらも、曲がり角を出てすぐに魔法を放つ。
「ファイアメント!」
「ギュッ……」
曲がり角の先にはスライムがいたようで、前回とは違い、しっかり当たって、しっかり焼けた。
すると間を置かずにスライムが凝固し始め、一つの宝石となる。
「魔石ゲットと……ん?」
魔石を拾い上げたその後、感知スキルに敵二体の反応が出た。
「ポップ率良いのかなこのダンジョン……って……」
所々作られたような要素を感じさせる、違和感のある異世界に思わずゲーム的思考を持ち込んでしまう。僕はそれを頑張って振り払い、次の敵に向かう。
「……見つけた。って近っ。ファイアメント!」
「ギュッ……」
「ギュィ……」
その後も敵を見つけては狩り、見つけては狩りで、僕はどんどん最深部へと進んでいく。ソロながらもペースが早いようで、僕はあっという間に最奥の部屋へと到着していた。
最奥には物々しい装飾の入った大扉があり、この先に強者がいることを主張している。
十分収穫もあったし、ここら辺で引き返しても良かったのだが、僕の好奇心がそうはさせなかった。
思い切って扉を開けると、広い空間に全長1.5m程度のでかい濁った水色のスライムが居た。
スライムは僕に向きを変えるような動作を取るなり、強力な酸を放つ。
「危なっ!」
回避が間に合うと、一瞬だけ床に着弾した酸を見る。すると若干ながら床が溶けていた。
当たったら怖いし、死ぬかもしれない。でも決めたからやるしかないよね!
「ファイアメント!」
そうして僕がとったのはヒットアンドアウェイの戦法。ひたすら火の魔法を撃ちまくって、ひたすら酸を避ける。
幸い部屋は広い円形状の空間なので避けやすい……多分ね。
「ファイアメント!」
的はでかいので攻撃は全弾当たっている。そしてスライムは攻撃された箇所が凹んでいる。どうやら相手は火で身体が溶けているようだ。
確実に攻撃が効くならやる事は持久戦だ。運動音痴だけどいけるか――
「いっづ!?」
思考に集中していて回避が遅れたのか、酸が足にかかる。
痛った〜!?めっちゃ痛った!?
「ファイアメント!」
僕はお返しと言わんばかりに小さな火を放つ。
そして僕の放った火はスライムに届き、スライムは溶け始める。
「ファイヤァァ!!」
そして僕がダメ押しで魔力を注ぐと、火は激しく燃え上がりを跡形もなく燃え上がらせる。
「勝ったぁ……」
そうして着いた決着は僕に安心感を与えた。うん、ボスから出た魔石は休憩してから取ろう。そして帰ろう。
自分についた酸は……強酸ってわけでもないし、ただヒリヒリするだけ。もしこれがフッ化水素酸だったら死んでたね。
「ウォータメント」
そう唱えると水が指からチョロチョロと流れ出す。それを僕は残り少ない魔力を上手いこと調整しながら、酸のついた部分を丁寧に水で洗い流す。
あわよくば石鹸が欲しいところだけど、そこは我慢するしかない。
「ギュルルルゥゥ……」
ああ……そういえばこの世界に来てから何も食べてなかったっけ。
「ウォータメント……」
枯渇寸前だけど、空腹感は満たしておかないといけない。そう思い口に水を流し込む。
そして早いところご飯を食べたい僕は魔石を回収して進む。さり気なく見たが、大きくて淡い水色で綺麗だった。
――――――――――――――――――――
その後、疲労困憊の足を無理くり動かしながら無事に外へ出た。帰還手段……?徒歩しかないよ。
というわけで無事に地上に帰ってきた僕は、取ってきた魔石を換金するため、受付の所へ行く。
「お疲れ様でした。換金ですか?」
「お願いします」
ポケットから魔石を取り出す。魔石はボスの魔石を含め22個。魔石がそこそこのサイズだったら、手に持ったり、服の中に入れて帰ってきたかもしれないね。
「はい。魔石小21、中1で合計は13,500エルですね」
ちなみに魔石の単価は小500エル、
中3,000エルである。大は10,000エル。
紙幣が渡される。今の僕に財布なんて便利なものはないからポケットにイン。
自分で言ってて悲しくなってくるなぁ。
「ありがとうございます」
「またお越しください」
さて……やっぱこのギルド、雰囲気が性に合わないから早めに去りますねさようなら〜……。
――――――――――――――――――――
そしてギルドからそそくさと僕は、現在青果店などの食料を売るところを探している。
腹が減っては戦が出来ぬ。どっかのことわざにもそうあるしね。
「おっ」
すると僕はややこじんまりとした店を見つける。店の入口の上には看板があり、「アオヤ青果店」と書かれているようだ。
外には様々な野菜が並び、そのどれもが美味しそうに見える。
僕は小走りに駆け寄って店内に入る。天井には電球のような照明があり、店内を明るく照らしてくれていた。
原作の設定の影響か、と思ったけれど……多分、電気じゃなくて魔法で照らしているっぽいね。
中世と現代がごちゃごちゃになった世界観に早めに慣れていかないとなぁ。
「ん」
僕は適当にりんごや梨など、丸かじりできる物をかごに入れて運ぶ。
あいにく、野外で料理が出来るほど器用な人ではないからね。悲しいね。
そしてレジにカゴを運び込み、カゴの中身を確認する。りんごが5つと、梨が3つ。
「合計で990エルになります。」
ポケットから1,000エルを取り出し、店員に渡す。現金を置くトレー、懐かしいなぁ。前世はセルフレジだったもんなぁ。
「お釣りの10エルになります。」
「はい。」
よし。食料も買えたことだし、何個か食べた後、残りの金額でバッグとかの最低限使える物を揃えておきたいな。
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次回は2話を同時に投稿します。
次回をお楽しみに。
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