第一章 初心者編
とある街にて
第1話 転生した。
「っ……!」
気がつけば僕は森の中に居た。あたりを見渡すと背の高い木や、大きな湖がある。
どうやら湖は水源のようで、湖から川が流れている。
その後、僕は自分の感覚や容姿を確かめた。
途中で記憶が途絶えているものの、確かに車に撥ねられて血を流していた。
少なくとも五体満足では済まないはずだが、今は全く持って健康である。
身体面では大丈夫だったが、服はだいぶ安物になっており、僕はいつの間にやら中世の庶民が着ているような時代遅れの服を着ていた。
取り敢えず今の状況として、まあ日本ではない謎の場所に死んでから飛ばされる。
「初の魔法体験が話題の異世界転生になるとはねぇ……」
僕はそう言いながら辺りを見渡し、危険が無い事を確認して散策する。
川に沿っていけば村に着かないかな。
――――――――――――――――――――
どこか既視感のある薬草や、既視感のある木や、既視感しかないモンスターを見る以外は特に問題なく進んでいった。
順調に進んだお陰で、一時間も掛からず村らしい所についた。
現代とは見劣りするが、しっかりと舗装された町並みと、ゴミの少ない大通り。
この異様な発展ぶりは村というよりかは街みたいだが、建物自体は中世らしいレンガ造りが多い。
一見すればただの中世ファンタジーだが、僕はその中で明らかに場違いな物を見つける。
「電柱とゴミ箱ぉ……」
貴方達、本来は現代の産物ですよね?
僕は呆れて周りを見渡す。大通りの店の中を見てみれば、天井には蛍光灯らしき物がある。
その他にも色々あるようだ。
現代らしい町並みだが、中世と現代が混合したような世界観。
もうなんとなく察してはいたが、喜んでいいのやら悪いのやら。
魔法で何かしたいって長年夢見続けてきた目標は絶対叶う世界ではあるけれど、こうポンと叶うとなぁ……。
とはいっても、一文無しで食料も住むところもない。
チートスキルとか天の声とかも無いみたいだし……実質的な積みだな。
こういう時って、どうしよう。
村にギルドってあったっけ?
ご都合展開が無いかとしばらく辺りを散策すると、二階建ての建物に「ギルド」と書かれた看板があった。何というご都合主義だろうか……。
「た、たのもー」
自動ドアという文明の利器を潜り、僕は小声で挨拶をしながら入る。
ギルド内は、ここが小さな村とは思えないほど活気に満ち溢れている。
筋骨隆々な大男から、ローブと帽子を被ったヒョロヒョロの男まで、狭い建物内に多種多様な多くの人がいる。
とりあえず、入口にいては邪魔なので受付に向かう。
「こちら冒険者ギルドの受付カウンターです。いかがなさいましたか?」
「測定って出来ますか?」
ド直球だけど、一応聞いておく。
鏡映しの神話でいう測定とは、その人の能力やスキルを測る、現代の身体測定みたいな物だ。
ギルドがその人の実力を測るためや、冒険者が成長を実感してモチベを上げるために、測定は無料で行える。
一応、一般人も出来る。
「はい測定ですね。少々お待ち下さい」
そう言うと受付の人は手袋を嵌め、奥へと消える。
受付の対応が親切でまるで日本みたいだなぁ……。
まあ、日本が作ったゲームだからまあ当然っちゃ当然だけど。
「お待たせしました。それではこちらを手で掴み取って下さい」
そう言って受付の人はコンパス型の測定具を渡してくる。測定具には金色の豪華な装飾が施されている。
一枚絵で見たとき少しびっくりしたね。
そう考えながら僕はコンパスを手に取る。
手に取ったコンパスは淡い青色の光を発して魔法陣を空中に創り出し、紙を生成する。
「ではステータスをまとめますので、もうしばらくお待ち下さい」
そう言って受付の人はまた奥へと消える。
待っている間、僕は手を握ったり離したりしていた。
自分の感覚がある事から、改めて異世界に来たことを実感しているのである。
ただ、憧れの異世界に来て嬉しいという気持ちの反面、結局僕は現代で魔法を再現する事を成し遂げられなかった。
全く、悔しいものだ。
後は、測定結果でこの先の生き方とか職業とかを決めるちょっとした不安だろうか。
自分の向き不向きが分かるのはありがたいけど、自分の将来を決めつけられる感じはある。
まあ、どっちみち魔法を使いたいから職業は冒険者だけど。
まずは結果を待つことだよなぁ。
暗視とか索敵とか感知とか、火魔法や水魔法、狩りの心得とか、そういう最悪の場合でも何とかなる便利スキルがあったら嬉しい。
最悪ソロで頑張るしかないかもしれないから、スキルは多いほうがいいよね。
初期に手に入れたスキルから大体のジョブは決めるとして、魔法主体のスキルがいいよなぁ――
「お客様、終わりましたので、プレートを渡させていただきます」
将来の事に思いを馳せていると、いつの間にか声を掛けられる。
受付の人が差し出したのは、自分の名前などの文字の書かれた、一枚のプレートであった。
僕はそれを受け取る。
「こちらがプレートになります。説明は要りますか?」
「はい」
僕はすかさず了承し、説明を受ける。
プレートは、現代でいうマイ○ンバーカードみたいな物で、身分証明証代わりになったり、ステータスと唱えると、自身のステータスやスキルが覗けるらしい。
便利だねぇ。
「紛失・破損した場合は再発行も可能です。しかしながら悪用される危険もあるため、大切にお取り扱い下さい」
「分かりました。ありがとうございます」
僕はお礼を言った後、そそくさとギルドから立ち去り、近くの路地に入る。
「よし……ステータス」
そう言うと、空中に透明なウィンドウが表示される。
【属性魔法LV.1☆、感知LV.1、暗視LV.1、思考加速LV.1、経験ボーナスLV.1、翻訳LV.Max】
うん……多分大分盛られたねぇ。
翻訳がカンストだったり、属性魔法に謎の星がついてたり、経験ボーナスとか言うゲームでは便利だったやつがあるし。
それ以外はチートではないにしろ求めていたやつだから恩恵がでかい。
……転生者特権は非常に嬉しい。
結果として、冒険者としてあれこれ出来るほどのスキルはあるみたいなので、僕はダンジョンに行ってみることにした。
明らかに無謀な挑戦だが、まあ何とかなるでしょ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます