第一章 追放聖女と騎士隊長④
「そ、それは……治癒の力はそなたが一番強いから……」
いいわけがましくぼそぼそとつぶやいたボランゾンに、ミーティアはガンッ! とこれまで以上に強い力で杖を床に打ちつけた。
「強いから、じゃないわよ、このクソハゲ
「ひぃっ!」
ボランゾンが縮こまる。ミーティアの
とはいえ、彼らはだいたいミーティアに同情的だ。
「確かにミーティア様はここ数ヶ月、ずっと治癒室にいらしたわ。なんならその
「わたしたちもがんばって治癒に回っているけれど、やっぱりミーティア様のお力はずば
「どうしても重傷者はミーティア様に回されがちだものね……」
聖女たちがコソコソとうなずき合う。ボランゾンがうろたえた様子で視線を泳がせた。
「そ、それは……や、やはり重傷者には早いこと楽になってもらいたいではないか……」
「そのお気持ちはご立派ですけれどね。治癒に当たるこちらも、聖女である前に人間なのです。飲まず食わずで働き続ければ、そのうち
「の、能なし……」
「わたくしだって首席聖女に選ばれたからには、【神樹】への
「さ、差し金なんて、そんなことは……」
さみしくなった頭部に冷や
「それでもなお、わたくしを首席聖女から降ろし、地方へ向かわせるということは、単純にわたくしの存在があなた方、神殿の上層部にとって
「うっ……」
「重傷者の手当てだけに走り回っておとなしくしていればいいのに、わたくしが神殿のやり方に口を出すものだから、いっそのことわたくしを遠くに飛ばしてなにも言えないようにしてやろう、と。つまり、そういう
「そ、それは……」
「──それはもなにも、そういうことでしょうが! 最初からはっきりそう言えばいいものを、明らかに『はあ?』としか言えない理由を並べ立てて、わざとらしく大勢の前で言うから、より
「ば、ばか……!?」
クソ、ハゲ、のみならず馬鹿まで加わって、ボランゾンはひきつけを起こしそうな顔になってふらついていた。
ミーティアは盛大に鼻を鳴らして、聖女の杖を
「──ま、わたくしもそんな能なしの上司の下であくせく働くのも馬鹿らしいので、お望み通り、中央神殿から出て行って差し上げますわ」
堂々とした宣言に、聖職者や聖女たちが「そんな!」と悲痛な声を上げた。
「ミ、ミーティア様に出て行かれたら、毎日のように詰めかける
「ああ、それはわたくしではなく、わたくしの追放を決定したそこの馬鹿親父に言ってくださいな。わたくしも首席聖女として
聖女らしい
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