第一章 追放聖女と騎士隊長③
「当たり前でしょうが。まず最初の『首席聖女の選考試験』ですけど、それって先日グロリオーサ様と行ったアレですよね?」
ミーティアは親指でくいっと背後を示す。
全員の視線がそちらへ向かい、名指しされたグロリオーサという聖女は「ひっ」と首をすくめていた。
「確かに、グロリオーサ様は優秀な聖女です。まだ十六歳でありながら
し・か・し! とミーティアは一文字一文字を強調してから続けた。
「先日、彼女と行った首席聖女の試験、その結果は明らかにわたくしのほうが上だったと思いますけど」
「うっ……。な、なぜそう言いきれる?」
「だって、筆記試験はわたくしが十分で解き終わったのを、彼女は計算や古語がわからないと言って泣きながら三十分以上かけて解いていました。おまけに答案用紙の半分は空白だったと、答案を回収した聖職者がため息をついていましたし」
「んぐっ……」
「実技試験も、傷ついた動物を
「ぐぐ……」
「結界の張り方も、同じ強度の結界をわたくしがこの礼拝室の
「ぐぎぎ……」
「祈祷文の
ほかにもつらつらと語りまくるミーティアに対し、額の青筋をピクピクさせていたボランゾンは
「け、結局なにが言いたいのだ、この性悪聖女めがッ!」
「どう考えても、わたくしがグロリオーサ様に試験で負けたなど、ありえないと申し上げたいわけです」
ミーティアは簡潔にはっきり答えた。
ボランゾンはよけいに顔を真っ赤にする。
「そ、そなた、採点した
「むしろ節穴以外のなんなのですか?」
「この! 言わせておけばつけあがりおって──」
「あいにく、まだ言い足りないので
ミーティアはそれまでの不機嫌顔を少し引っ込め、
「最近、地方で魔物退治に
「【神樹】の加護が弱まっている……!?」
集まった聖女や聖職者たちがゾッとした
場が
「それを
「とか言って、地方で傷ついて戻ってきた騎士の手当ては聖女に丸投げするくせに」
「な、なにをぅ?」
今度はミーティアが「はんっ」とボランゾンを鼻で笑った。
「しょせん、聖職者が持つ【神の
「な、なん……、こ、この……っ」
「あら、人間って図星を指されると言葉が出なくなるものですね」
ミーティアはこれ以上ないほど、
「騎士も数に限りがあります。そもそも怪我をして戻ってくる騎士を減らすためには、一度聖女が地方をめぐって【神樹】の加護が及ぶ範囲──すなわち、国境に沿って設置してある【
「おっしゃいましたよね? 『政治的な問題は聖職者が考えるべき』なのだと。わたくしからすれば、あなた方がこの問題を
ガンッ、と杖で
「そして三つ目の理由の『【神樹】への祈り時間の不足』ですが、これは当たり前のことでは? 大怪我をした騎士が年がら年中運び込まれてくるし、その治癒はすべてわたくしに回されるのですよ? 祈るどころか
どうなんだとにらまれて、ボランゾンはうぐっと言葉を
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