第8話 ルージュ視点

《訓練場》 


 広大な土地面積を誇る孤児院の内部には、多くの施設が作られていた。

今、一番活気のある場所は室内訓練場であった。


 ここでは孤児院の子供たちが先生を守るために訓練する所である。いつもは笑顔で仲の良い子供たちも真剣な顔でお互いに急所を狙う。この孤児院では先生に仇名すものは仲間であっても消すように教えられているのだ。


 いつもは常に訓練の音が響いているが今は静かだった。子供たちは皆、倒れていて、訓練場の中心部は炎が燃え盛り1人の女性が立っている。 


 「立て。先生の駒であるならば、これほど簡単に膝をつくな」


 子供たちはみな汗だらけになっているのだが、彼女は涼しい顔を崩さなかった。


 「久しぶりに稽古をつけてやるのだ、少しくらい歯応えを感じさせてみろ」


 彼女は子供たちに炎を放とうとする。子供たちの間に緊張がはしるなか、間にクロが入る。


 「ルージュやりすぎ、ルージュが強いだけでこいつらも弱くはない」


 「む…」


 孤児院の幹部であるルージュを止めるのは同じ幹部しかできない。ほとんどの幹部たちは外で活動しているがクロは孤児院に残り先生の側近をしている大幹部である。


 ルージュも流石に手を止める。


 「む、しかしこのままだと先生を守れない」

 

 「大丈夫、先生を守るのは僕」


  ルージュはクロの実力を知っているため訓練をやめる。


 「ふ、それなら安心だ」


 クロはルージュが笑った意味が分からず首をかしげていた。


 ルージュはクロとシロが先生の側近の立場にいることはかなり気に食わないが、シロはともかくクロ自体には悪い感情を持っていなかった。


 クロはめちゃかわだからな‼︎


ルージュはクロを微笑ましく思いながら訓練場を後にした。

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《先生の部屋》

 

 扉を開けると先生はソファーに座っていて優しく迎えてくれた。彼女は先生にピッタリくっつくように先生の隣に座った。 

 

 彼女は常時戦場の気持ちで生活している。しかし先生のそばにいる時だけは安心してリラックスすることができる。


 ルージュはこの時間が大好きだった。あいつがいたら小言を言うだろうが今は私の時間だ許せ。


 頭の中に浮かぶのは幹部の中で比較的仲の良い女性である。主従関係に厳しい彼女がいたら無言で殺気を飛ばしてきただろう。


 ルージュはこの幸せな時間を噛み締めながら先生に身を任せていた。


 この時間は悪い予感がしたクロが部屋に飛び込んでくるまで続いた。


 

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