第5話
そして二人は、結婚することに。真吾は、あゆみとの結婚式に、高校の同級生である一成を呼ぶことに。そのことが、二人の悲劇になることを知りもしないで。式の時の一成の、あゆみへの視線はとても厳しく、獣のような目付きで、あゆみの身体を上から下まで、それこそ舐めるように動かしていくのを、見たあゆみは
(このひとは、怖い。目で私を犯してる)
と。だから真吾が、一成を家に呼ぶと言った時、あゆみは
(あのひとは、目で私を犯してたひと)
と、危機感を覚えたあゆみは
「真吾さん、一成さん独りだけではなくて、他のひとも一緒に来てもらった方がいいんじゃない?一成さんも独りだけじゃ気を使うだろうし」
「そうやねんけど、あいつは俺の親友やから、特別なんや。だから、あいつ独りだけ呼びたいんや」
と、真吾に押しきられてしまった。
あゆみは、一成が来る日まで、不安を感じていたが、とうとうその日が。
「よく来てくれたな、一成」
「あぁ、お招き頂きありがとう。これ、つまらないものやけど」
と、手土産を真吾に。
「何や、おまえらしくもない。俺とおまえの仲やんけ。手ぶらで来てもらいたかったんや」
「これはケジメや」
と、一成はニコッと。
あゆみが、真吾の横に来て
「一成、結婚式で会ってるけど、こちらが俺の嫁のあゆみや」
と、真吾はあゆみを紹介した。一成が
「これはどうも。結婚式でもお会いしましたが、美しくてビックリしました」
その言葉を聞いたあゆみは、背筋に寒いものが走るのを感じながら
「よろしくお願いします」
と、なるべく目を合わせないようにしたが、ここでも一成は、あゆみの身体を舐め回すような視線で。思わずあゆみは鳥肌が立ち、両手で腕をさすってしまった。けれど、そんなあゆみの気持ちを、真吾はわかりはしない。
(やっぱり、真吾さんには絶対に言わないと、このひとは、何をするかわからないわ)
しかし、あゆみが真吾に話しをする機会がない。
(真吾さん)
と、あゆみが真吾に合図を送るが、真吾は気付きもしない。
一成は、部屋を見回して
「やっぱり新婚さんの家は違うな」
「何がや」
「キレイに整頓されてるし、カーテンとか」
「そうかな」
真吾は、一成にそう言われて、悪い気がしない。
「おまえは、嫁さんの有り難さがわかってないんや。こんなキレイなひとを」
「そうかな」
と言って二人は、腰掛けた。テーブルの上には、すでに刺身や鳥の唐揚げが並んでいる。
「まあ、一杯行こうや」
と、まず真吾が一成のグラスにビールを注いで
「乾杯」
と。真吾と一成は、高校時代の剣道部の話しなどを語り合いながら、真吾が
「ちょっと、トイレに行ってくるわ」
と言って立ち上がった。一方、あゆみは台所で次の料理を作っている。その隙を見て一成が、真吾のグラスに薬のようなものを。
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