第4話
次の日、真吾はあゆみの家から出勤した。
真吾は
(あんなキレイなひとが、俺の?)
と、あゆみと肉体関係になったのに、まだ自分でも、信じられない気持ちでいっぱいだ。
真吾は、職場に向かう電車の中でも、そして警備中でも、昨日のあゆみとのことばかりが、頭をよぎって。
真吾は、自分の両手を見て
(この手が、あゆみさんのオッパイを、お尻を触ったんや)
と。
(ほんと俺で、ええんやろか)
と真吾は、会社のトイレの大きな鏡に向かって、誰もいないのを確かめた後、自分の頬をつねってみたが
(痛い。やっぱり、あゆみさんとの昨日の出来事は、嘘やないんや)
その時突然、トイレに後輩の東が入って来て
「どうしたんですか」
誰もいないと思っていた真吾だったが
「何が」
「だから、香山さんがですよ」
「見てた?」
「見てしまいましたよ。どうしたんですか、いったい」
「いえ。べ、別に」
「いつも冷静な香山さんが・・・。香山さんらしくないですよ」
真吾は、顔を真っ赤にして
「俺も、たまにはな」
「何なんですか」
「べ、別に」
と言って、東がまだ、しゃべろうとしているのを振り切って、トイレを出た真吾は
(浮かれ過ぎやぞ真吾。誰が見てるか、わからん。職場では、シャキッとしてないと。さあ、明日が俺が非番になるから、あゆみさんは出番になる。しばらく、あゆみさんと反対番やけど、3徹後に会えるのが楽しみや。あゆみさんにラインしとこ)
と、スマホを見ると、すでにあゆみからラインが。
「真吾さん。私、寂しいの」
と。
(えっ、そんなこと言われたって。しかも、俺のこと、名字やなくて名前になってるし)
真吾は、ラインで返信を。
「寂しくっても、俺は仕事やから」
「今すぐにでも、真吾さんに会いたいんです。そっちへ行ってもいいですか」
真吾も、あゆみと会いたいのはやまやまなんだが、そこはぐっとこらえて
「仕事やから、それはあかんで。俺が君に教えたことが、全て無になってしまうから」
「すいません」
(あの子らしくない。処女やないのに)
それだけ、あゆみの心も身体も、真吾が独占してしまったのだ。
あゆみにとっては、仕事が反対回りになるということは、真吾が泊りの仕事になると、あゆみが泊り明けの非番ということで、次の日は真吾とあゆみは、その反対になることに。つまり真吾とあゆみが、3徹して都合6日間、そこで初めて2日連続の休みになり、そのうちの1日だけ、休みが重なることとなる。その日を、真吾もあゆみも仕事をしながら、ひたすら待った。勿論、出番と泊り明けの非番で二人は顔を会わすのだが、同僚の目があるので、挨拶もそこそこに、知らぬ振りをして。しかし、あゆみは真吾を、ひたすら目で追っていた。
1日だけ休みが合うと、真吾とあゆみは、朝から晩までずっと一緒だ。誰にはばかることなく、二人は三ノ宮で手を繋いでウインドウショッピングを。そしてこんな生活を半年ほど続け、夕陽が沈む神戸港で、真吾があゆみに
「俺はこんな性格やから、サプライズはとても出来んけど・・・。俺と結婚してください」
と、頭を下げると
「喜んで。私、この日が来るの、ずっと待ってました」
と、人目もはばからず、あゆみの方から抱きついてきた。あゆみが真吾におおいかぶさるように。
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