第11話 勝利の女神作戦
新入生歓迎球技大会というイベントが、この学園では存在する。
サッカー、バスケット、バレー、卓球の4球技、3学年18クラスがトーナメントを勝ち上がるトーナメント制だ。
サッカーは男子6名女子5名の混合チーム女子に対するラフプレーは即レッドカード退場。
バスケ5名とバレー6名は男子と女子に分かれる残った人は卓球という風に分かれる。
今日のHRはその振り分けをする。
進行は体育部委員、
「それでは、球技大会の参加種目の振り分けをします。委員を決めた時と同様に推薦制を取りたいと思いますがよろしいですか?」と侘ジュノン君が聞く。(ちなみに彼は純粋な日本人だ。関係ないが英語は苦手だ)
黒板には各種目が堂賀浦文のきれいな字で書かれている。
「俺的にはうちのクラスの三姫は別々の球技に振りたいと思うがどうだろう」
瑞希が手を挙げ「三姫って誰ですか?」なんとなく解っていたが質問した。
「お前と神崎と樟葉に決まってんじゃん」思った通りの答えが返ってきた。
「私は三人で同じ球技がしたいんですけど」と拗ねて言うと「うちのクラスの作戦なんだここは俺に任せとけ」と言って侘君が親指を立てた。
「じゃあ私たちはどの球技に振り分けられるのかな?」と聞くと
「それな、まず最初に三姫の参加種目を決めたいと思います。意見のある人は挙手をお願いします」というので瑞希が挙手して「私は卓球が良いです」と言った。
「却下です。チームの士気につながる大切な種目決めです。ソロは無しでお願いします」とあっさり却下された。
「それじゃあ私はサッカーをします。(美咲とさおりに男女混合のサッカーはさせたくないので私がサッカーをすることにする)但し、ゴールキーパーでお願いします」わざとサッカーのハードルを上げてやった。
(女子がキーパーをするという事は敵にゴールを打たせないようにするという事だと思え、男子共)
「侘君、他の子達もどうする?ゴールと私を守ることができますか」と人差し指を立ててウィンクして見せた。
「「「「「「あ・ざ・と・かわいいぃ~♡」」」」」」と早速、四人の男子(侘君も含む)と二人の女子がサッカーに決まった。
「ミズキノミリョウニオチタカ(瑞希の魅了に落ちたか)」美咲が小さな声で言った。
サッカーの残り男子2名と女子2名もあっさり決まりサッカーの選手は揃った。
「樟葉さんと神崎さんですが、バレーとバスケどちらに行きますか?」
「さおりはどっちがいい?」と美咲はさおりに先に決めさせようとしたが、さおりは「美咲が決めていいよ」と言った。
私は美咲のやりたい球技を知っている。美咲の中学の時の部活はバスケットだ。
だから当然バスケットと言うと思たんだが「私はバレーで」と言った。
「では、樟葉さんはバレーボール、神崎さんはバスケットボールということでお願いします」と詫君は言ったが「樟葉さん中学の時はバスケ部じゃなかった」と中学の時の同級生の由良姫乃(ゆらひめの)が言った。
「バレーがしたいのでバレーボールでいいです」と美咲が言ったが小さな声で「バレーノカイジョウノホウガサッカーグランドニチカイノデ」と私に聞こえるようにつぶやいた。
三姫の球技が決まれば、後は簡単、トントン拍子に参加種目の名簿が埋まり最後に佐々木健也がバスケットで決まった。(地味に最後って目立つよね)
侘ジュノンの『勝利の女神作戦』はこうだ
まずは三姫を応援団に据える。(手が空いているときは他の球技の応援に行く)
三姫を主要球技に振ることで各競技の士気を上げる。
各種目のMVPに何気に三姫からのプレゼントが有る的な事を吹聴する。
最後のは三姫に怒られそうだがこれで好成績は間違いない。
後は、新入生歓迎球技大会の日、明後日を待つばかりだ。
さて、本日も恒例の放課後イベントの時間になったんだけど
山上の生徒会長、墨田麻生は現れなかった。
「あれぇ~、今日はいないね」美咲が言葉にしたが昨日のこともあって、ひょっとしたら来ないかもとは思っていた。
「じゃあ、瑞希、今日、うちに寄っていく?お父さんもお母さんも瑞希に会いたがってたし」美咲に家に来るように誘われたが、たまには早く帰るのも悪くないかなと思って「また、今度行くね」と断った。
美咲のマンションの前で別れ、駅を通り越して自宅に行く道すがら歩いて帰っていると私の横に黒の高級車が横着けして窓から仙賀康彦先生が顔を出した。
「橿原、いつもなら校門のところでいると思ってたら今日はもう帰ってたんだな」と声をかけてきた。
学校関係者だから私の住所、知ってても当たり前かもだけど、私を追いかけて来るのは異常だ。(一瞬で警戒モードになるが平静を装って)
「先生の家はこっちなんですか?」と白々しく質問する。
「いや、ちょっと橿原に用があってお前を探してたんだ」(やはり、追いかけてきたんだ)
「何の用事ですか?」と感情をこめない冷たい声で言うと「お前にモデルを頼もうと思ってな」と言って後部座席の画を見せてきた。
「なっ、なんですかこれ、私の裸の画じゃないですか。何を考えているんですか仙賀先生」
(最初から警戒している相手だが、まさか、この前の授業のデッサンが裸体の私になってるなんて変態だ。いや、大変だ。って冗談言ってる場合じゃないなって変態は変態か)
「この絵を完成させたい。頼む瑞希、俺に協力してくれ」真剣に頼んできた。
「私にヌードモデルになれと言ってるんですか?先生が生徒に頼むことですか。嫌に決まってるでしょ」(授業中の厭らしい目はこういうことだったんだな)
「俺は、瑞希の画を今度のコンクールに応募するつもりなんだ。瑞希でなきゃダメなんだ。頼む日本の芸術の為に力を貸してくれ」(熱弁してるが結局は私に裸になれと言っているんだよな、日本の芸術ってそんなに大層な物か)
「どう頼まれようと嫌なものは嫌です。そういう方をモデルに使えばいいじゃないですか。私でなければならない理由はないと思います」
「ダメなんだ。俺が心から好きになった女性でないと気持ちが入らないんだ」
「大体、何で裸体なんですか。授業中に描いていたデッサンは制服姿だったのに、私はあの絵の方が好きです。先生の画はみんなの手本になるくらい見事だったと思いますが」そう言うと仙賀先生は少し考える素振りをして
「そうか、それならお前にこの絵を返すよ」と言って助手席のシートを倒し、後部座席から私の画を取り、渡してきたので、助手席を開けて受け取ろうとした瞬間、腕を引っ張られて無理やり車に乗せられてしまった。
体勢を立て直そうとしたが、助手席側のドアを閉められ急発進して私を連れ去った。
「仙賀先生、何をしてるんですか。未成年者略取罪ですよ、解ってるんですか。今すぐ私を下ろさないと仙賀先生の罪が重くなるだけです。仙賀康彦の人生が終わりますよ。考え直してください」私の両手を仙賀先生が片手でつかんで動けなくして、もう片方の手で車を運転している。
そんな状態が長く続くわけもなく、仙賀先生は諦めて車を止めた。
私の両手を放し、こちらを向いて謝ってきた。
「すまない橿原。でも、俺はお前のことが本気で好きなんだ」
助手席のドアを開け外に出る。
「無理やり、私を連れて行こうとしたことは黙っています。でも、女の子を好きにさせるのは、当たり前だけど、そんな手段じゃ無理ですよ。生徒に対しても授業にしても真面目に接してください。この絵は恥ずいので貰っていきます。コンクールに出すんだったら、もっと真剣に取り組んだ真面目な作品にしてください。煩悩まみれの作品じゃあ賞なんて取れませんよ」仙賀先生は何も言わずハンドルにおでこを当てて泣いているようだった。
「では、さようなら送ってくれてありがとう」それだけ言ってその場を後にしたが、割と大きな私の裸の画をどうやって隠すか苦労しながら帰路に着いた。
思考錯誤しながら帰ったので色々と疲れていた。
玄関に入ったら、早速、妹の要に見つかって、私の裸体の画を見てすぐに「お姉ちゃんの胸こんなに小さくないよね。そのフェイクの画、私がもらっていい?」と言って、そのまま自分のお部屋に持って行ってしまった。
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