第5話 土曜日のカンパネラ
女子高生になって初めての休日というか土曜日
私は久々に前に通っていた高校の最寄り駅に来ていた。
こちらの駅前には大型商業施設があり施設内には、映画館や遊べる施設が併設されている為、若者の集いの場、いわゆるデートスポットとなっている。
私の用があるのはそんな華々しい場所ではなく大型書店だ。
朝から自分の私服を検討するという訳の分からない行動をして、落ち着いたのがベージュ系のデニムパンツに白のカットソー、上着に少し濃いベージュ色のロングのベスト、足元はグレーのスニーカーという春コーデ。
持っている服の中で、大人しくまとめたつもりだったが何故か目立つ、あまりに視線が気になってしょうがないので茶系の大き目のサングラスを買った。
寄り道をしながら目的地の大型書店に到着。
サングラスを外し目的の本を探しながら書店内を徘徊すると、スポーツ誌のコーナーに田邊浩輔を見つけた。
こちらは見つからない様にそっとその場を離れ、料理本のコーナーに向かう。
そう、今日の目的は料理、それもコアな料理を作ってみたいと思っている。
思い立ったが吉日というが朝、目が覚めた時にコアな料理が食べたいと思ってしまった。
それがきっかけで電車に乗りこの大型書店に来るという発想、おっさんの頃にはできなかったなと思いながら一冊一冊、本を吟味する。
(どれもこれも美味しそうだ)
本に夢中になっていたせいか、近づいてきた気配に気付かなかった為
「橿原さん」と急に名前を呼ばれてビクってなった。
振り向くと、やはりというか田邊浩輔がいた。
「うわぁ~、結局見つかっちゃった」気まずいなと思いながら発した声に田邊浩輔は「見つかっちゃったって何?俺から隠れてたの?」と聞いてきた。
「いやぁ、隠れては無いけど…知ってる人に会いたくは無かったかな…」
「私服の橿原さんもいいですね」
「いやいや、それが嫌なんだけど、なんかプライベートを覗かれてるみたいで落ち着かないんで」他人の視線が気になるのもそうだが外見の美少女の中のおっさんを見られているようで知人なら余計にそういう視線が気になる。
思わずまたサングラスを付けた。
「ここでサングラスつけると余計に目立つと思いますけど」
「私だとわからなければいいんです」
「橿原さんも抜けてるとこあるんですね」
書店のBGMで聞いたことのある曲がながれてきた、私が聞き耳を立てたことに気付いて田邊浩輔が「リストの“La Campanella”ですね。有名な曲ですよ」と言ってきた
ただのサッカー馬鹿なイケメンもどきだと思っていたが意外な一面を見た。
でも考えてみたら、樟葉美咲が付き合っていた男子なんだからそれなりのスペックがあってもいいのか。
ほんのちょっぴり見直した、好きにはならないが。
何冊か料理本を見繕って会計を済ませ書店を出た。
「で、君はなぜにそばにいるのかな?」田邊イケメンもどきが何故か着いてきて
「一緒にお昼ごはんでもどうかと思って」とさりげなく食事に誘ってきた。
同時にショッピングモールの催し物広場の釣り鐘が鳴り正午を知らせる。
「 Campanellaって小さい鐘って意味らしいですよ」(なるほど、さっきから自己アピールしてるんだ。この前の恋愛講座を実践しているってとこか)
「いいよ、頑張ってるので、お昼付き合ってあげる」「えっ!!!」
「驚きすぎでしょ、で、どこに連れて行ってくれるの?」悩む田邊なんちゃら君。
おそらく私の買った料理本でも思い出そうとしているのだろうけど、あいにく買った本にヒントはない。というか色々な料理があって参考にはならない。
あまり高校生男子をいじめてもしょうがないので私が提案してあげますか。
「イタリアンレストランにでも行きますか、田邊は好き嫌いある?」「えっ!!!!!!」
(さっきより驚いてないか)
「橿原さん。…呼んでくれた。…名前で、…初めて」(文法おかしくないか)
「おお~い、たなべ~戻ってこ~い」
そのあと、正気を取り戻した田邊イケメンもどきを連れて、高校生の財布にやさしいファミレス系のイタリアンレストランに来た。
私はミラノ風ドリアとグリーンサラダ、田邊イケメンもどきは若鶏のディアボラ風とパルマ風スパゲッティ、二人ともフリードリンクというオーダーをして早速、ドリンクバーに行こうとしたら田邊イケメンもどきが颯爽と立ち上がり飲み物を聞いてきた。
向こうで選びたかったのだが、自己アピールを頑張ってるのでオレンジジュースをお願いした。(気遣いのできる男子は二重丸)
暫くして、田邊のオーダーしたものが運ばれてきた。
目の前にパルマ風スパゲッティがあるのに手を付けず私の動向を見ているようだったので「先に食べていいよ」と言ったが首を横に振る。
私はオレンジジュースを飲みながら田邊を観察していたが、少しからかってやろうと思って、フォークでスパゲッティを巻いて田邊の口に持っていった。(
田邊は顔を真っ赤にして、視線をそらせた。
「食べないから私が食べさせてあげようと思ったんだけどな」と言って頬を膨らませ怒ったふりをする。(周りから見たらあざとい女に見えるだろうか)
からかって遊んでいたら私のオーダーしたものが来たので「いただきます」と言ってそのままフォークに巻いたスパゲティを食べ、グリーンサラダを食べ始めた。
(料理を運んできた店員さんがニコニコしていたが、只からかっていただけなので、なんかすみません)
すべての料理を食べ終わり、田邊とレジに向うとさっきのニコニコしていた店員さんが「初々しいですね」と声をかけてきたので「ただの同級生です」と勘違いしているであろうことを否定しておいた。
田邊が私の分の会計も出そうとしたので、さすがに断って自分の分は自分で払った。
ま、スパゲティを一口勝手に食べたので「ありがとう」とは言ったが。
用事も済ませ昼ごはんも食べたので、ここに居る必要はない。
だが、さっきから田邊の様子が変だ。
何か言いたそうにして、情緒不安定な行動をとっている。
大方、私のことを更に好きになったとか(自信過剰)だろうけど美咲と付き合っていたことを知っているので私が付き合うことはない。(それでもイケメンもどきから田邊になっているだけグレードアップだろう)
「田邊、じゃあ、私は帰るわ。バイバイ」と言って、とっとと駅に向かった。
当然、
私の家の最寄り駅で降りたら、目の前は美咲と亜沙美の住んでるタワーマンションだ
(せっかくなので、亜沙美のうちにでも寄ってみようかな)
昨日、友達になって夜に少しメッセージで会話をしただけだけど亜沙美は突然の訪問を受け入れてくれるだろうか。
早速、『今から遊びに行っていい?』ってメッセージを送った。
すぐに既読が着き『いいよ』って返事をもらったのでそばまで来てる故を伝え玄関ホールで部屋番号を押してインターホンに呼びかけたら大竹先生が出た。
「橿原と言いますが、亜沙美さんいらっしゃいますか」と聞くと『橿原⁉いつの間にうちの娘と仲良くなったんだ』と驚いていたが、今度、生徒指導室で話そうと思っていたから早いか遅いかだ。
亜沙美の家に行き中に通されたらリビングに先生がいた。
「お邪魔します先生」と言って亜沙美と亜沙美の部屋に向おうとしたら、先生に先生の前のソファーに腰掛けるように言われ結局、亜沙美と二人で三人掛けのソファーで座り、先生と話をすることになった。
「ところで、橿原。お前、最近、放課後、校門の前で変なイベントやってないか」
(山上実業高等学校の生徒会長な事か)
「私はイベントをやっているつもりは無いんですが、山上の生徒会長がね…、って先生、今日は休みなので説教は学校で聞きます」というと亜沙美が「うちの生徒会長が瑞希にご執心なんです。瑞希は悪くないです」と言ってくれた。
「そうだな、そんな野暮な話より、いつの間に亜沙美と仲良くなったんだ。学校も違うのに」と先生がさっきの質問を繰り返した。
「昨日、公園で仲良くなりました。同い年の女子なんで、すぐに仲良くなりましたよ。先生の事もありますしね」と何気に先生も関与してると匂わせた。
「ハハハ、そうかそうか、亜沙美、橿原はな学年で一番、成績がいいんだぞ。今度、勉強、教えてもらえ」先生は仲良くなった原因が先生にもあると言ったからか、ご機嫌で私のことを誉める。
「学校が違うと授業の進み具合が微妙に違うことない?試験勉強とかできたらいいのにね」と亜沙美に言うと、顔を赤らめて「そうね」と答えた。
(そういえば、智久と亜沙美は学校が違うな)
「大体、高校一年の時は似たような進み方だぞ、主に中学の復習だからな」
「先生が教えた方が手っ取り早いんじゃないですか」
「そういう訳にはいかんだろ、一応、立場的にな」
「私が個人レッスン受けるのは問題ありそうですが、学校違ってもだめなんですか?みんなで教えてもらうのはいいと思いますけど、そうだ今度のテスト勉強、亜沙美の家でしない?友達とかも呼んでさ。先生それならいいでしょ?」と先生に言うと満面の笑みで許可してくれた。(さっきの立場的な話は何だったんだ)
先生との話が盛り上がってしまい亜沙美と話す時間が短くなったが、先生に解放された後、亜沙美の部屋に行き、この前の動画事件の話から美咲を呼ぶことになった。
『今、大丈夫?』とメッセージを送るとすぐに既読が付き『大丈夫だよ』と返ってきたのでスマホで連絡を取った。
「美咲、今、大竹先生のうちに来てるんだけど来れる?」
『なんで、大竹先生の家なの?』と当然の疑問。
「えっとね、大竹先生の娘さん亜沙美っていうんだけど友達になってさ、あっ亜沙美って、この前の動画の子なんだけど今、動画の話してたんだ今から来れる?」
『わかったわ、同じマンションよね何号?』「W-303」『わかった、すぐ行くわ』そう言って通話を終了した。
暫くして、先生の「樟葉、どうした」と言う驚いた声がしたので、私が玄関に迎えに行った。
亜沙美の部屋に連れて戻り、美咲を紹介する。
「亜沙美この子が樟葉美咲、美咲この子が大竹亜沙美」雑な紹介に二人共、引きつった顔をしていた。
あらかたの説明を美咲にして「っていう訳で実はね巣鴨智久と亜沙美を引っ付けようかと思ってるんだけど協力してくれない。それでね、親交を深める意味も込めて、今度の試験の前に、ここで勉強会を何人か集めてしようかと計画してるんだ。美咲も参加してくれない?あと田邊と茶髪の子、伏見聖羅も誘おうかと思ってるんだ」(たぶんだけど茶髪の伏見聖羅は悪い子ではないはず、前の世界ではあの子も犠牲者だったから)
「茶髪の子って三人組の仲間なんでしょ?大丈夫なの?瑞希、嫌われてるんじゃないの」
「この前、生徒会長と謝りに来てたし大丈夫じゃない。亜沙美、誘える?」
「えっ、誘えると思うけど…、さっきの話の流れだと瑞希が誘うものかと思ったわ」
「ハハハ、私、面識が…あと、巣鴨君も誘ってね」
とんとん拍子に話が進み試験前に勉強会をすることが決定したので、先生にその故を伝えた後、三人で夜ご飯までワイワイ女子会をした。
夜ご飯は美咲の家で亜沙美も呼んで、およばれして今度は美咲の部屋で三人で遅くまで女子会をした。(明日は日曜なので遊びまくった)
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