第4話 祈りの数だけ願いがあるという
次の日の放課後。
3日連続で山上実業高等学校の生徒会長が校門の前で待ち構えていた。
「あの~、流石に三日連続って言うのは恐怖なんですが。生徒会長からストーカーにジョブチェンジされたのでしょうか?」思わず声を掛けてしまったが、私に用事ではないかも知れないという可能性を忘れていた。
「おっ、橿原さんの方から声を掛けて下さるなんて光栄です。でも、ストーカーはひどいですね。ミジンコ以下の方が人畜無害で良いかもしれません」(やっぱり私に用事ですか)
「じゃあ、ミジンコ以下さん、今日は何の用事ですか?」
「呼び方がストーカーかミジンコ以下かって話ですか。でしたら
「で、ミジンコ以下さん何をしに来たんですか?」
「なっ、墨田と呼ぶのも恥ずかしいという風に捉えておきます。橿原さんと話がしたくて来ました。実は、金蹴り三人衆なんですが「金蹴り三人衆って?」復帰の後、謹慎処分で一週間の停学になりました。動画のこともあって橿原さんに恨みを持っていると思いますので気を付けて下さい。とそこで提案なんですが私、墨田麻生がボディーガードとして登下校のお供を『結構です(きっぱり)』させていただけないかと思いましてって言い終わる前に拒否ですか、しかもそんなにはっきりと」
「何をどう解釈すればよいのかわかりませんが、ミジンコ以下さんはストーカーを正々堂々と行おうとしているようにしか聞こえませんが」
「ハハハハハ、こう見えても僕は強いですよ。それに、容姿には自信があります。瑞希さんもカヨワイ女性でしょうし男性に守られるべきです」
「そこ、容姿は関係ないですよね。さりげなく橿原から瑞希呼びになってますので訂正お願いします。あと、私も強いですよ本気を出せば金〇つぶしてますから」
「(咳払い)とにかくです。橿原瑞希さん俺に君を守らせてほしい。これからもずっと、死が二人を
「しれっと、学校の入り口で告白じみたセリフ言わないでください。大勢見てますから、さっきも言いましたが結構ですのでお引き取り下さい」
「いえ、じみたではなく告白です。返事は月曜日に聞きに来ます。それではまた」と言って踵を返す。(四日目も確定か。土日に会いに来ないだけ良しとするかな)
「さっきから断ってますけど、まさか返事は一択ってやつですか。鬼畜ですね」
ミジンコ以下さんの背中に向けてこう言ったが、そのまま帰って行った。
余談だが、毎日、校門前で行われる公開告白に観客は日に日に増えて行った。
駅を越え自宅に向かう道すがら、なんとなく視線を感じた。
それと同時に誰かが着いて来ているような気配がする。
いつもと違う曲がり角でわざと曲がってみたが視線と気配は相変わらずだった。
児童公園の中に入りベンチに座る。
少し離れた自動販売機の傍に人影を見つけた。
しばらく様子を見ていたら女子高生が現れた。
「やっぱりね、私に何か用かしら?」現れたのは、この前の茶髪ではない方の動画配信の疑いのある女子高生だった。
茶髪の子の印象が強烈なのであまり目立たなかったが、改めて見た印象は、ちょっと釣り目がちのきつい感じの目に髪型はタンバルモリボブ(この時代だと違うかも)、身長は私より低く155くらいかなスポーツをしてますって感じのスリムな体系をしていた。
おそらく、美咲の家のタワーマンションあたりからつけてきていたのだろう。
私と美咲の推理が正しければ、この女子は金蹴り動画の三人組に恨みか何かがあるはずだと予想している。
「あの~、私は
「そっか、いいよいいよ。でも、そういうことは今後しない事。私の方は生徒指導の先生に注意されたくらいだから。ええと、…大竹さんって、ひょっとしてだけどうちの学校の大竹先生の娘さんなのかな?」
「えっ!はい、父は天成学園で教師をしてますがしてますが。ひょっとして、父に助言してくれたっていう女子生徒さんって、橿原さんですか?」(助言ってほどでもないが)
「そんな、大層なものでもないですよ。先生と一緒にお弁当食べてお話してただけですから」と右手を大きく振って否定した。
「二日ほど前から、父が私に話しかけてくるんです。前は父のことが鬱陶しいなって思ってたんですが、挨拶するようになって、少しは私のことを気にしてくれてるんだなって思えるようになったんです」嬉しそうに話す大竹さんに、本当はお父さんのこと好きなんだろうなと感じた。(たった二日でこんな風になるんだな。先生も嬉しいだろうな。この感じだと元々毛嫌いしていたわけでもないんだろうけど)
「じゃあ、また先生とお昼でも食べて話聞くよ。楽しみだな」
「うちの父、怖くないですか?昔、中学の先輩に怖いって聞いたことがあって、丁度父を避けるようになったのも、そんな切っ掛けからだったと思います」
「私の印象は怖いとかは思わなかったな。たぶん娘さんと同い年だから話しやすかったんじゃない」
「有り難うございます。橿原さんには何から何まで、お世話になりっぱなしでどう御礼していいか、本当に申し訳ないです」
「ハハハハハ、じゃあさ、私と友達になってよ。大竹亜沙美さん」
「そんな事でいいんですか?こちらからお願いしたいくらいです」
「うん、亜沙美って呼んでいい?私のことも瑞希って呼んで。ところで、話、戻すんだけど巣鴨智久君と友達って言ってたよね。彼と仲いいんでしょ気になってるとか付き合いたいとかってあったりする?」
「突然何を聞いてくるんですか?と、彼は友達ですよ。仲はいいと思いますけど、付き合うとかなんとかは………」顔を真っ赤にして答える亜沙美はとてもかわいかった。
(でも、良かった。智久と亜沙美が仲良くしてくれるのは、前の世界での親友としては喜ぶべきことだから)
「瑞希はどうなんですか?うちの生徒会長があなたにご執心だって校内で噂になっているくらいですよ」仕返しとばかりに亜沙美が話題を振ってきた。
「あの生徒会長って変な性癖あるよね。私がいくら辛辣な言葉を言っても嬉しそうにしてるし、毎日、校門前で待ち伏せするくらい執着されるのっていかがなものかと」
「あんなのでも、うちの高校では人気があるんですよ。そのうち瑞希に危害があるかも」ニコニコしながら怖いことを言う。
「それはそれで怖いけど、それってこちらの意図は組んでくれないってことだよね。八つ当たりもいいとこだよ」
「それでも、瑞希は好きって気持ちをぶつけられてるだけ幸せかもね」
「生徒会長が私にぶつけている気持ちは空振りだけどね。でもやっと、亜沙美は本音が出たね。巣鴨君は好きって気持ちをぶつけてこないんだね。亜沙美はどうなの?なんとなく自分の気持ち伝えてるの?」(私の代わりに亜沙美に頑張って貰わないと)
自分の言葉で墓穴を掘ったことに気づいたのか亜沙美が急に焦りだした。
「あはは、まぁ、言葉では言ってないけど…」(智久は鈍感そうだもんな)
「亜沙美の気持ちもわかるけど、巣鴨君って鈍感なんでしょ、気が利かないとか。そういう男子は誘導してやればいいと思うよ。女子が積極的に行動っていうのは抵抗あるだろうけど、鈍感な人には積極的になるのも大事だと思う。一緒に学校に行くとか一緒に何かをするっていうのから始めてさ、お弁当作ってやったりするとか言葉で言いにくいなら行動で示せばいいと思うよ」(智久の扱い方は大体把握しているので完璧なアドバイスができたはず)後は、亜沙美がどうするかだ。
「そうだ、亜沙美は停学とかになってないよね?今日、三人組が停学になったって聞いたよ。茶髪の子とかはどうなの?」
「私は、いじめとか恐喝とかに係ってないって智久君が言ってくれたから停学にはならなかったけど、茶髪の子、
「そっか、亜沙美が大丈夫なら先生も大丈夫だろうね。私は三人組に狙われているらしいって生徒会長が言ってきて、ボディーガードしてくれるって言うので断った。どう考えてもストーカーだしね」と笑いながら言ったが亜沙美の反応は逆だった。
「あの三人って、うちの高校の柔道部なんだ。結構、大会でもいいとこまでいくらしいよ。気を付けてね」と心配させてしまった。
カヨワイ女子の金蹴りごときで悶絶するような人たちが、強いとは思えなかったが亜沙美の忠告は素直に聞いておくことにした。
そうして、亜沙美と連絡先を交換して別れた。
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