第4話2007年7月

 陽乃はるのは姉の陽乃ひのと違い、社交的で活発だった。その性格と端正な容姿を活かし、役者を生業としていた。劇団に力を貸してくれている人が、君に会いたいと言っている、そう言われては断れない。だから、初めは渋々だった。そうして出会ったカルトの教祖アレックスは、思っていたよりもずっと親しみやすく、さっぱりした姿で魅力的に見えた。

「君の笑い方は可愛い」

「演技に君の癖が出ているのは、かえって人間味が出ていい」

「君のおかげで他の役者の個性が引き立つ」

 アレックスは陽乃が気にしていることを、常に先回りして褒めた。だから陽乃がカルトに入信して、広告塔として活動するまでに時間はかからなかった。数々のイベントや講演会に出た。カルトの名前を出さないことも多く、気づいたら入信していた、という参加者も多かったことだろう。そのうちに実力が評価され、幹部候補としてパーソン邸で食事をすることも増えた。リアム、という幹部は、陽乃がアレックスに心酔し、彼の横を離れないことを問題視する発言をしていたが、当時は全く気にしていなかった。たとえ、アレックスの妻が彼の片側にいても。その頃になると、カルトの黒い噂をうっすら耳にすることもあった。だが盲目状態だった陽乃はそれを聞いてさえ、訝ることもなかった。そうしてアレックスとの仲は深まる一方だったのだ。

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