第73話 メニァレィビス戦②


「クィエ。お前の霧は返って危険だ。最小限に抑えて、アイネとメリーを守れ」



「分かった」



 メニァレィビスとの戦闘が始まり、キャビーが馬車の外へ出て行った。



 外では無数に獣の咆哮が鳴っており、激しい戦闘が繰り広げられているようであった。



「大丈夫ですよ。大丈夫ですからね」



 メリーはアイネを安心させようと、彼女を抱き締めていた。しかし、彼女は怯えていない。寧ろその逆だ。



 彼女はメリーの腕から飛び出すと、剣を構える。



「メリー、アタシは大丈夫だよ。アタシが皆んなを守ってみせるんだか──らっ!?」



 言い終えた途端に、2体の狼が侵入する。勢いよく走ってきたのか、それは荷台の床を滑りながら、はたまた壁を蹴って迫ってきた。



「──まだ待ってよぉ!?」



 アイネはそんな猛獣の勢いに気圧されてしまう。それでもメリーとクィエを守る為に、立ち向かう。



「こ、このぉぉっ!!」



 気合いを入れ、迎え討とうとした。だがその瞬間、彼女の頬を冷気が掠めていく。



 青白い氷の刃が2体のメニァレィビスに迫り、瞬く間に身体を貫いていた。



 それは踠き、やがて死に至る。



 クィエは死体をそのまま外に放り捨て、次なる獲物を静かに待った。



 この場に限り、獲物となるのは怪物の方なのだ。



「クィエ様……相変わらず、凄い」



「クィエが全部やっつけてあげる」





 暗い森の中で、絡み合うのは2体の怪物だ。



 メニァレィビスの集合体──ケルベロス型のそれと、キャビーが顕現した大百足だ。



 全長は大百足に軍配が上がるが、質量でいえばメニァレィビスになる。



 大百足の長い身体を持ってして、メニァレィビスに絡み付く。大百足の鋭利な脚が、肉を貫き、強靭な顎は肉を抉った。



 メニァレィビスは小さな一体の集合体ではあるが、どのような形態であろうと生物の体裁は守っているようだ。



 肉を抉れば赤い筋肉を露出させ、出血も見られる。当然、心臓もひとつであり、それを貫けば分裂する間もなく死に至らしめられるだろう。



 他の生物と違うのは、魂を共有しているところだ。それはつまり、全てを殺さなければ、本当の意味で死なないということだ。



 大百足に上手く絡み付かれたメニァレィビスが悲鳴を上げ、振り解こうと暴れている。



 そこへキャビーが迫る。



 真っ暗な森であろうと、メニァレィビスの視界は保たれている。迫る人間をひとつの頭が捉えた。



 大百足より、そちらの人間の方が脅威だと判断したらしい。



 メニァレィビスは人間を正面に捉え、構え直す。



 3つの頭が、それぞれ顎を鳴らした。



 バチバチバチィッ──



 暗闇に火花が散ると同時に、強力な稲妻が吹き荒れる。



 幾つもに分岐したそれは、地面を抉り、木に直撃すれば一瞬で縦方向に分断する。森が燃え、そこに住む小動物が逃げ回る。



 稲妻のひとつが地面をなぞり、キャビーに迫った。



 疾走している彼は、それを魔力を込めた刀で受け取る。



 刀に重さが増した。

 とても重たいが、キンキの一撃程ではない。



 彼は素直に切先を地面に落として、電気を逃す。



 地面に一本の線を残しながら、メニァレィビスに肉薄すると、



 彼は身体を捻って飛び上がった。



 刀を振り上げ、更に身体を1度回転させる。



 そうして加えられた2度の斬撃が、メニァレィビスの身体を深く切り裂いた。



 空中に飛び上がったキャビーは、メニァレィビスの身体を蹴って、再び距離を取った。



 刀の等身は1mを超える。



 その殆どを使って切り裂いた筈だが、全体でみれば大したダメージにはなっていない。



「あれに致命傷を与えるのは骨が折れそうだな」



 キャビーは大蜘蛛の顕現体を顕現させ、指を差す。



「行け。私の合図を待て──」



 そうしていると、後方に大百足が落下した。メニァレィビスの放電によって、吹き飛ばされて来たらしい。



 大百足は裏返って脚を内側に曲げていた。ビクビクと痺れ、直ぐには動けそうにない。



「ミミに顕現体を貸すんじゃなかった」



 メニァレィビスの逆だった毛が、内側に向けられる。馬車を撃ち抜いた稲妻の光線の構えだ。



 だが、纏う稲妻の様子が少し違う。



 収束が無かった。



 ガチンッと顎を鳴らして弾けた電流は、やがて空中に集められた。丸い球体をした電気の塊が、幾つも形成される。



 蛍のようにボンヤリと輝いているのは、魔力で覆われているからだ。



「そんなことも出来るのか」



 一先ず、キャビーはその場から駆け出した。



 それに合わせ、電気の塊が飛ばされる。



 キャビーの動きを予測し、進行方向のやや前方に投げ付けられた。



 落ち着いた輝きを放つそれは、着弾するや否や一変して、大きな雷の爆風を巻き起こす。



 幾つも飛来するそれを方向転換を繰り返し、避ける。だが、方向を変えるには相応のエネルギーを必要とし、真逆に移動しようとすれば、同等以上の力で挑む必要がある。



 決して魔力が保たない訳ではない。単純に出力可能且つコントロール出来る魔力には、限界値があるのだ。



 ただでさえ、最高出力を保っている為、方向を変えることは容易ではない。



 また、弾幕が激しく、爆風に巻き込まれないようにしなくてはならない。



 やがて逃げ場を失い、電気の塊の1つが近くに着弾する。



「──くっ」



 着弾地点を中心に爆風が巻き起こる。魔力により防御を取ったが、側方に大きく吹き飛ばされてしまった。



 何度か身体が回転し、木に衝突して止まる。



 キャビーは直ぐに立ち上がろうとするが、膝に力が入らなかった。



 どうやら麻痺しているらしい。



「ちっ──」



 それでも迫る蛍火が視界いっぱいに広がった時、



 キャビーの身体は地面に沈んでいく。





「助かった。お前はえっと……私の味方でいいのだよな?」


 

 舌を出し、撫でて欲しそうにしているメニァレィビスの分裂体──キャビーが常に顕現させている大狼だ。



 大狼は彼の影に紛れるようにして裏世界に居座っている。



 即ちここは、大狼によって連れて来られた反転した世界だ。



 ここのルールは、破壊したものが表世界にも反映する。同一生物は両世界で共存出来ない。何を持って同一と捉えるかは、要検証が必要だ。



 例えば、生きている生物の顕現体を裏世界で顕現可能かについては、そもそも裏世界に行き来出来る手段を持っていなかった為、未検証となっている。



 基本的に無機物や静止物は、裏表で共存している。着用中の衣服や刀が共存していないのは、人間が動いているからだろう。



 よって、静止した衣服を着用すれば、どちらかの世界で消えてしまうと思われる。その土地の環境として機能しているもの──木々や植物は静止物扱いとなっている。



 キャビーがこの裏世界に入るには、大狼に連れて来て貰うしかない。その為、何が起こるか分からない今では、常に顕現させておく必要があった。



 あくまで他者の能力なので、キャビーが移動することは出来ない。



 そんなデメリットも、脚が痺れている今なら関係ないが。



「はいはい、よしよし。主人に会えたのがそんなに嬉しいのか? 全く」



 妙に温厚であり、懐かれている。キャビーは困惑しつつも、仕方ないので撫でてあげた。



「お前は──ちょっと待て。これは何だ!?」



 反転した世界は、明暗の概念が薄い。白い木々が生い茂り、とても明るい。



 そして、そこはメニァレィビスの温床となっていた。



 小さな個体ではあるが、まだまだ無数に存在している。そしてその中に、あり得ない程大きな個体が居た。



 それは遠方の、丁度馬車の真下に当たる位置に居る。空に向けて根のようなものを伸ばし、粘着質な見た目をしている。



 先日メリーの捜索時にレイスと見た、スライムのような呪いとは違う。もっと刺々しく、無数に眼を所有している。



 あのケルベロス型のメニァレィビスは、本体ではなかった。寧ろ小さい方だ。



 つまり、この粘菌のような物体こそがメニァレィビスの本体だ。



 その本体を守る小さな個体に見つかってしまった。



 脚はまだ痺れ、立ち上がることが出来ない。座ったまま、それらの迎撃に当たる。



 刀を振り回し、戦闘力の低い彼女達の分裂体を殺す。



 表世界の戦場に比べれば、容易い。



 しかし、問題はそれが無数に存在しているということ。また、表世界のメニァレィビスの存在を探知出来ないということだ。



 早く立て直して戻らないと、馬車が襲われてしまう。



 キャビーは敵を斬り伏せつつ、タイミングを伺う。


 

「お前は継続して私の影について来い。さぁ、戻せ──」



 脚はまだ万全ではなかったが、彼は表世界に姿を戻した。



 表世界に帰った途端、メニァレィビスの集合体が目前に居た。



「…………」



 それが脚を振り上げており、まるで道端の小石を蹴るようにキャビーを吹き飛ばす。



 彼は木を破壊しながら転がり、刀を突き立てて停止する。



 身体中に痛みを覚え、キャビーは頭に手を当てて起き上がる。



「やられた……」



 メニァレィビスを見やれば、3つあった頭が1つしか無かった。



 どうやら巨体は不利と判断し、分裂したらしい。その内の1体には、キャビーが付けた傷を受け継いでいる。



 3体はそれぞれ左右に分かれて、キャビーを囲い込もうとする。



 メニァレィビスはそれでも馬車と同等の大きさがあり、細長くスリムなった身体は木々の間を縫って迫り来る。速度は先ほどの比ではない。



 先行した2体は互いが互いの身体を通り抜けながら、交差して迫り来る。



 それぞれの前脚には、鋭い爪が内包されている。突如として突起したそれによる斬り付けを、順次良く2度弾いた。黄色い火花が散る。



 弾かれた2体はキャビーを通り過ぎて、彼の背後を取った。遅れてやって来た1体が前方に構え、囲まれてしまった。



 メニァレィビスは全ての分裂体が魂を共有──つまり、言ってしまえば全てが本体であり、意識を共有している。



 それが成す攻撃は非常に連携が取れていた。



 全てが本体といったが、大元は裏世界に居る粘菌のような個体だ。そして、意思を統制する個体──なのかは良く分からないが、それに近いものが居る。



 普通に考えれば、裏世界の大元が司令塔のような気もするが。キャビーが裏世界の魂や肉体を感知出来ないように、それが表世界の個体を統制出来るのだろうか。



 そんな疑問を孕みつつ、キャビーはメニァレィビスの連携攻撃に対応していく。



 爪による斬撃を刀で弾き、次に迫るやたらと低空な斬撃──地中に埋まりながら進む薙ぎ払いに対して、刀を縦にし、柄と峰の2点で支えて受け止める。


 

 鍔迫り合いになったところへ叩き込まれる前脚を交わして、一度身を引いた。



 その後も続けらる連携攻撃の悉くを、キャビーは対応していく。メニァレィビスの身体が小さくなった分、威力はケルベロス型よりも控えめだ。



 苛立ちを露わにし始めた彼女達の攻撃に、隙が出来る。キャビーはそけへ攻撃を仕掛ける。



 メニァレィビスの噛み付きをそれの頭に手を付いて避け、複数ある眼球に刀で斬り付ける。



 迫る前脚には刀を突き刺した。刃の向きに合わせて振り抜き、肉を断ち切る。



 刀を回せば、遠心力で血が飛び散った。



 尾や脚を使った攻撃に、僅かばかりの傷を与え、出来るだけ致命的なダメージとなる一撃を狙う。



 メニァレィビスは無闇に頭部を出して来なくなった。彼女達も理解しているのだ。



 キャビーがカウンターを狙っていることを。



 そして、



 ──そこだっ!!



 連携が疎かになった甘い一撃に、キャビーは全身全霊で応える。



 彼は身を翻して攻撃を避けた後、懐へ飛び込んで、1体の前脚を切断する。



「キゥアアアアッ──!!」



 悲鳴を上げ、バランスを崩したそれはキャビーの真上に落ちてくる。



 刀を突き立て、それの体内の奥深くまで突き刺した。そして、横方向へ大きく引き裂く。



 悲鳴が更に増し、



 キャビーは一度距離を取った。



「疲れる。これでやっと──」



「……?」



 かなりの深手を負わせた気がするが、それは立ち上がっていた。満身創痍に違いはないが、まだ生きているらしい。



「しぶといな」



 分裂されれば、数体は死滅してしまうだろう。数を減らさない為か、それが分裂することはなかった。



 キャビーとしては、好都合だ。



 生物の体を本当に守っているのなら、心臓部にあるコアを破壊すれば、集合体であれ一気に殺すことが出来る。筈である。



 もしくは、それに準ずる部位を両断することだ。


 

 キャビーは再び疾走する。

 今度は彼から攻撃する番だ。



 稲妻が迸り、キャビーを襲う。



 彼は刀を前方に投げた。



 投擲された刀は雷を受けながら進み、キャビーに道を作る。



 彼は手を伸ばした。



 すると、予め顕現しておいた大蜘蛛の糸が、メニァレィビスとキャビーを挟んだ中間地点から飛んで来る。糸の発射位置は木の上部だ。



 糸を掴み、強く引き寄せた。大蜘蛛とタイミングを合わせ、飛び上がる。



 振り子の要領で、彼の身体は弧を描いて浮き上がる。



 メニァレィビスの爪を寸前で交わしつつ、それの身体スレスレを横切っていく。



 投擲によって突き刺さった刀を掴み、斬り裂いた。



 その後、メニァレィビスの真上に到達すると、1本の糸の足場が用意されていた。



 彼は身を翻し、両脚を揃えて着地する。



 飛び上がった勢いで糸を曲げ、弓矢の如くキャビーを真下へ弾き出した。


 

 急速に飛来する彼に、メニァレィビスは反応出来ず、



 彼の刀は、メニァレィビスの首を切断した。



 キャビーの白銀の髪が赤く染まる。



 メニァレィビスの分裂体は、彼の背後で崩れ落ちた。



 刀を払い、血を拭う。



「やっと1体──」



 メニァレィビスは残り2体となった。仲間が直ぐ傍で死亡したのを、唖然と見ていた彼女達だが、直ぐにキャビーを蹴り飛ばす。



 彼は甘んじてそれを受け、距離を取った。



「さて……」



 1つ予想が分かったことがある。



 司令塔が表か裏か、そのようなことはどうでも良かった。



 現在の司令塔が、メニァレィビスの分裂体を俯瞰した位置から統制している訳ではないということだ。



 つまり、視界は共有しているかも知れないが、視界に映らなければキャビーの位置を見失ってしまう。



 よくよく考えれば、キャビーが統制する顕現体も、彼かそれ自ら知覚した情報からでしか行動出来ない。



 魂を共有している点から、もしかしたら上から眺めているのかも知れない。なんて思ったが、そのようなことはないらしい。



 先程、眼を1つ破壊しておいて正解だった。



 本の僅かにキャビーを見失い、複数ある眼がキョロキョロ動いていた。



 これは大きな情報だ──



 キャビーが頭部を落とした個体は、手負いの1体ではない。眼を破壊した個体だ。



 残る2体は、満身創痍のそれと、斬り傷のあるそれだ。


 

 彼女達は互いに近付くと、渦を巻いて融合する。筋肉の発達した二足歩行形態となった。



 だが、怪我は引き継いでいる。



 肉が露出し、片腕がボロボロだ。



「私の大狼も、あれ出来るかな」



 キャビーの影にピッタリくっ付いていた大狼が顔を出す。



「グルゥゥゥ──」



 大狼が静かに唸った。



「はいはい。出来ないのね──使えない」



 すると、メニァレィビスの咆哮がこだまする。



 残り2体分だ。今度のそれは、近接戦に特化した個体らしい。中型による連携では歯が立たないと判断したようだ。



 そもそも1体は死に掛けな為、融合したのは得策だろう。



 しかし、



 キャビーが刀を構えた瞬間、世界が晴れる。



「……?」



 また裏世界に来たのかと思ったが、そうではない。色は通常通りだ。



 暗闇はなく、木々すらない。晴れた野原のような場所だ。



「なんだ……?」



 そこに降り立ったのは、オエジェットだった。

 


「やぁ、キャビネット君。手を貸そうか?」



 軽々しい口調で、彼は言う。



 身構えていた力が嘘のように抜け、キャビーは彼を睨み付ける。



「もぅ、鬱陶しいですねぇ。私の獲物です」



「しかし、君にしては随分と手こずっているようだが?」



 一体私の何を知っているのだろう。と彼は苛立つ。更に言えば、小型の雑魚を相手にしといてこの言い草だ。



「オエジェットさんの力は要りません。どうせこれも幻影なんですよね」



 刀をオエジェットに向けて振るう。



 すると、弾かれてしまった。



「本物……?」



「そうだよ。だから、後ろから刺さないでくれよ?」



 彼は自身に向いた刀を、剣で押し返す。



「一体どういうつもりですか。これでは戦えません」



「すまないね。残念ながら幻影魔法は無差別に作用してしまうんだ」



「じゃあ、使わないで下さい」



「私が君に幻影を見せてあげるよ」



 そう言うと、オエジェットの背後からキャビーの幻影が現れる。



「馬鹿にしているのですか? ……あ、待って。よく見たい」



 ここ数年、鏡の前に立っていなかった。キャビーはぐるりと自身を確認して、頷く。



「こんな感じなんだ……子供ですね」



 成熟しているとはとうてい思えない。各部位がやや丸みを帯びていて、大人のそれとは違う。



「はっはっは。事実、君はまだ子供だよ。だからこそ、不気味なんだがね」



「ふーん。で?」



「本物とリンクさせた幻影を君にだけ見せよう。かなり難しいが、まぁ1人だけなら何とかなる」



「では、貴方の姿も本当は幻影ということですか」



「ああ。本物の私とリンクさせた偽物の私だ」



「ややこしい」



「だが、森を再現することは出来ない。あの化け物には道に出て貰ったよ。ここでは障害物があってやり難いからね」



 確かに、眼で見て思考するメニァレィビスであれば、幻影魔法は通用するだろう。それどころか、完封出来る筈だ。



「しかし、この作戦はオエジェットさんを信じろってことですよね」



「そうだが。何か不満でも?」



「あります。大ありです。もし幻影と本物の動きに差異があったら、私が大袈裟を負うじゃないですか」



「うーん確かに……? だが、君を殺そうと思えばもうやっているよ? 少なくとも2度は殺している」



「ウザいですねぇ、もぉ。じゃあ、貴方がミスをする可能性は!?」



「それについては、君の素晴らしい探知能力で何とかなるんじゃないかな?」 



 キャビーは考える。



 実際にそれが居る方向は、探知魔法で分かる。だが、実際にその方向を向こうとしても、向けていないのが幻影魔法だ。



 だが、それを幻影を見せることで導いてくれるなら話は別だ。



 幻影魔法に掛かっていながら、現実とリンクした動きが可能となる。



 探知魔法と実際の向きが合致しているのなら、オエジェットの見せる幻影に何かしらのミスがあっても、キャビーなら分かるだろう。



「分かりました。分かりましたよ。やればいいんでしょ」



「そうこなくてはな。では、共闘と行こうか」



 オエジェットは髭を弄ると、満足気に笑う。幻影の渦中にいる為、道案内をオエジェットに任せて、キャビーはついて行く。



「手を繋ごうか?」



「要りません。馬鹿にしないで下さい」


 

 オエジェットは高らかに笑う。



 キャビーは、彼が前を向いたのを見計らって、刀をそっと伸ばしてみた。



 すると、何かに掴まれてしまった。オエジェットは前を向いている。



 しかし、彼の姿が反転する。振り返り素振りなくらまるで最初から此方を見ていたように。



 彼の指が刀を摘んでいた。



「こらこら。私は味方だよ? 間違えてしまったのかな?」



「ウッザいですねぇ、全くもう!!」




『作者メモ』


 

 頑張って書きました……


 もう少し書いているんですが、長過ぎたのでこれで!!


 幻影魔法とか、魂の共有とか意味不明かも知れませんが、私もこんがらがって書いてます。


 出来るだけ似たような戦いにならないよう、常に新しい戦い方で書いたつもりなんですが、如何でしょうか。


 あ、因みにミミに預けたスキューエルさんですが、使い辛いので預けました……

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