第44話 移動 ※酷い文章だったので大幅修正済み
「はい。これで終わりぃっ!」
アイネは、キャビーが受けた傷に応急処置を施し、最後に包帯を巻いてあげた。
「ね、凄いでしょ。褒めて良いんだよ! みゃーさんから習ったんだぁ」
えへへ、とアイネは恥ずかしそうに笑うのだった。
この場を後にする前に──
彼らはもう一度、腹の裂けた女性を見た。昆虫のような翅が生えた彼女は、間違いなく人間ではない。
そんな彼女だが、とても穏やかな顔で死亡している。
「この女の人? 凄くショックだったろうね。あんな化け物が生まれて来て──」
「だが死顔はとても静かだ」
キャビーには、彼女が満足して死んでいるように見えた。
「うーん、まぁそうだね。じゃあ、死んでから生まれたのかなぁ?」
いつ死んだかのかは兎も角として──
腹が裂かれるのは、とても痛かっただろう。種族の違う化け物が生まれて、さぞかし絶望したことだろう。
しかし、何故こうも彼女は穏やかな死顔をしているのか。
そんな彼女の在り方は、何処か母に似ていると思った。
──どんな貴方でもいい。
そう言ってくれた。
きっと、「お前もそうなんだな」
「え? 何か言った?」
「いや、別に──先へ急ごう。日暮れまでにもう少し進んでおきたい」
「うん。そうだね」
★
「でっかいカエルだ。気を付けて、毒があるからね」
沼地のようなエリアに入った。
ドロドロの脚元はぬかるみ、生えている木ですら斜めに倒れ掛けている。
底無し沼となっている場所もあるようで、そこにはイカのような生物が待ち構えていた。
赤紫のカエルが、彼らの前に立ちはだかっていた。
人間サイズのそれは、キャビーに目掛けて舌を飛ばす。とてつもないスピードで飛ばされた舌が、右腕にへばり付いた。
強力な粘着性のある舌だ。
「キャビー!?」
「クィエは手を出すなよ」
「うん、分かったぁ」
「そ、そんな呑気なこと言ってる場合なの!?」
キャビーの腕を捕らえたカエルは、彼を口に引き摺り込もうとする。
彼は敢えて引き摺られ、大きな口に入り込む。
「キャ、キャビー!?」
しかしその直前、彼は大ガエルの下顎を踏み付け、上顎を左手で支えた。口が閉じるのを食い止めた。
数秒耐え──
「これでお前は私のものだ」
右腕に絡み付いた舌を引っ張り、手首を曲げてそれを掴んだ。
闇魔法が司る「消失」の力。
右手で触れた箇所を、跡形もなく消し去った。
「クィエ!」
「うん、お兄様」
クィエは待ってましたとばかりに氷の槍を生成し、大ガエルを差し貫いた。
「もう、キャビー……びっくりさせないでよ。そうやって舐めてると、痛い目みるよ」
「出来ることと出来ないことは明確に理解している。別に舐めていない」
「えー、本当に? まぁキャビーが言うなら、別にいいけどさ」
沼地は数キロにも及んでいる。
しかし殆ど木が生えていなかった為、先が見通せた。他の森に比べれば、直ぐに抜けることが出来た。
次は、傾斜のある森だ。
道中にも原生生物と出会い、厳選しつつ顕現魔法のストックにしていく。
「太陽、随分と傾いたね」
馬車が出発して14時間程度。
彼らが歩き始めて10時間程度。
現時刻は午後4時くらいだ。
「お兄様ぁ。手ぇ、繋いでいい?」
突然、クィエが言ってくる。キャビーに抱き付き、癖っ毛の頭をぐりぐりと押し付ける。
「お前はアイネの右に居ろと言っただろ」
「クィエ、お兄様と居たい……」
「駄目だ」
キャビーに拒否され、クィエはしゅんとする。言われた通り、アイネの右側に陣取った。
アイネを挟んで歩くことで、彼女の生存率を高めるのが狙いではあった。
「クィエちゃん。アタシと手繋ごうよ。ね?」
クィエの感情をすかさず察して、アイネは手を差し述べた。
クィエはそれをじっと見つめる。
少し手ごたえがあった。
「ほ、ほら! お姉ちゃんと手を繋ご?」
「いらんし」
だが、次は即答で拒否された。
「うわーん、なんでぇ?」
「人間だから」
「で、でもでもぉ、アタシはキャビーの所有物になったんだよ!? つまり、味方じゃない?」
「……そうなの?」
クィエが食い付いた。アイネはチャンスとばかりに捲し立てようとする。
「そうだよ!! だからさ──」
しかし、言い掛けて彼女は、何かに躓いて転倒する。
「わぁっ!?」
両手を地面に付け、怪我は免れたが──
「アイネ、何してる」
「い、痛たぁ」
未だ何かが脚に引っ掛かっている。
アイネはそれを取り払おうと、手を伸ばした。
「きゃあっ!!??」
だが突然彼女は逆さ向きになって、上空へ飛び上がってしまった。
キャビーとクィエは、咄嗟に後退する。
「クィエ、敵襲だ」
「うん!」
周囲を見ても、適性生物は見当たらない。
先ず保護対象であるアイネを引き下ろそうと、顔を上に向けた。
そこには糸のようなもので吊るされたアイネと、張り巡らされた巣があり──
そして、十数匹の巨大な蜘蛛が居た。
「何だと」
探知には引っ掛からなかった。
蜘蛛は木の枝葉に扮していたりと、兎に角獲物が掛かるまで永遠と微動だにしなかったらしい。
探知魔法ではただの物体としか判別出来なかったのだ。
「キャビー!! こ、これ!! 肉食の蜘蛛よ!! 糸が超硬いから!!」
逆さ向きのアイネが必死に叫ぶ。
「ん? 蜘蛛ってそもそも肉食じゃないのか?」
カタリナ村で見た小さな蜘蛛は、巣を張って昆虫を捕まえていた。
「た、確かに? って、そんな呑気なこと言ってないで助けてよぉ!!」
そうしている間に──
大蜘蛛は木を伝い、また糸を使って、地面に降りて立った。キャビーらは完全に囲まれてしまった。
「お兄様ぁ」
クィエは弱々しく言う。
「なんだ、クィエ。蜘蛛は嫌いなのか?」
「うん……」
「お前なら瞬殺出来るだろ。取り敢えず、向かって来る奴は殺していい。流石に多過ぎだ」
「ふぅぅ……はい」
キャビーは、周囲の警戒をしていた大百足とドラゴンモドキの顕現体を呼び戻した。
クィエは、氷を生成していく。
余程大蜘蛛が苦手なのか、非常に氷の生成が遅い。壁を形成して寄せ付けないようにするのが関の山だった。
「お前たちはクィエを助けてやれ。全く」
キャビーは、大蜘蛛5体と対峙する。
小動物を幾つか顕現させ、体当たりさせた。物量で押し潰し、1匹の動きを制する。
1匹の大蜘蛛が尻を上に反らせて、キャビーに狙いを定める。すると、糸が発射された。
キャビーは瞬時にナイフを構え、受け止めことに成功する。発射された糸に粘着性はない。代わりにそれの先端は手のようになっており、ナイフをがっちり掴んでいた。
アイネの言った通り、糸は鋼鉄のように硬い。
「悪くない」
大蜘蛛が糸を引っ張る。
キャビーのナイフはピクリとも動かない。
他の大蜘蛛が放った糸をキャビーは回避しつつ、ナイフに取り付いた糸を手繰り寄せる。
大蜘蛛は彼の力には勝てず、ずるずると引き摺られていく。観念したそれは、ギャンブルに彼目掛けて飛び掛かってきた。
対してキャビーは、飛んできた大蜘蛛の顔を掴む。8本の脚が絡んできた。脚の先端は獲物に張り付く為に、鉤爪のような形状をしている。
だが、キャビーの皮膚を突き破ることはない。
先ずは1匹、大蜘蛛のストック化に成功する。掴んだ頭を潰し、別方向から飛んできた糸を更に掴んで手繰り寄せる。
次々に糸を飛ばして来るが、全て交わし切った。すると、大蜘蛛は自ら飛び掛かってくる。
糸をキャッチされた大蜘蛛も、糸を切り離して飛び掛かった。
「なんだ、頭も使えるじゃないか」
3体の大蜘蛛による飛び掛かり。
キャビーは1体を正面に捉え、両手で捕獲する。もう2体は、彼に張り付いた。
キャビーは特に避けることはしなかった。それの脚が絡み付き、鋭い牙が噛み付いてくる。だが、どれもキャビーの魔力を突破することはなかった。
その時、アイネが叫ぶ──
「きゃあああっ!! キャビーぃい!!」
見ると、アイネに絡み付いた糸を伝って、大蜘蛛が襲い掛かろうとしていたのだ。
「助けてぇっ!!」
「待って、今動けない!」
「は、早く殺しなさいよ!! ──きゃあっ!! 来てる来てる、早く助けてよぉっ!!」
アイネは懸命に糸を解こうとするが、それは叶わない。大蜘蛛は彼女の脚に到達し、順に降りていく。
「キャビーぃ……」
アイネの弱々しい声が、キャビーを呼ぶ。当然クィエが助けに来ることはなかった。
彼女の顔に大蜘蛛が迫った時、ナイフがそれの頭を貫いた。
「ふぇっ!?」
大蜘蛛は背中から地面に落下した。
キャビーはアイネを助けた後、取り付かれた2体の大蜘蛛のストック化を試みる。
今回は手を使わずに、やってみる。身体が大蜘蛛に触れている為、理論上は魂の解析も可能だと思ったのだ。
もしこの方法が出来れば、強い生物との戦闘で役に立つ。かも知れない。
「難しい……」
案の定、魂を感じ取ることは出来たが、それの形を解析するのは困難だった。
時間を掛けて、ようやく彼は5体の大蜘蛛のストック化に成功する。
その頃、共闘している顕現体とクィエによって、残りの大蜘蛛は殲滅させられた。
キャビーは大蜘蛛の頭に刺さったナイフを抜いた。捕まっているアイネに向け、ナイフを放り投げる。脚に絡んだ糸に命中し、彼女は落下する。
「わぁっ!?」
上手く糸を切断し、落ちて来たアイネを彼はキャッチする。
不意に、2人は顔を合わせた。
「あ、有難う……」
「うん」
お姫様抱っこをされているアイネは、思わず眼を逸らす。やや頬を赤くした。
「な、何……もう離してくれていい、けど──」
「え? うん」
アイネは彼から解放されて、意味もなくパンパンと服を叩いた。
そうして、一向はまた先を急ぐ──
開けた場所に出た。
円形に森が切り取られており、代わりに色鮮やかな花々が敷かれている。中央には小さな湖が形成され、1本の大木がそこに生えていた。
古い木製の人工物が付近にあった。木は腐り果て、崩れてしまっている。
これは、遠征チームが元拠点としていた場所だ。馬車道も続いている。
「あっ!! やっと道と合流したのね!?」
「ああ。これからはまた馬車道を進んでいく」
アイネは荷物を放り捨てて仰向けで倒れ込んだ。
「ふはぁ〜、歩き疲れたぁ」
「確かに少し疲れた」
基本的に常時身体強化を用いて歩いている。ただ、発展途上の身体ということもあり、想定以上の疲労はあった。
魔力の消費による倦怠感もまた存在する。
「クィエ、お前は平気か?」
「クィエ、全然平気だよ」
キャビーに尋ねられたクィエは、未だ体力が有り余っていることを伝える為、両手を上げてピョンと飛び跳ねた。
「……え、マジぃ」
「流石、母上の血を受け継いだだけのことはある」
キャビーとアイネは花畑で寝転ぶ。クィエは兄の横に行き、くっ付いて横になった。
「なんだ、クィエ」
「お兄ぃ様ぁっ」
「……?」
アイネは空を見上げると、沈んでいく太陽を見た。
「アタシら、もしかして12時間以上歩いてる? 半年間体力付けてて良かったわ、ほんとに」
もう直ぐ日が暮れてしまう。
にも関わらず、遠征チームには追い付けない。
アイネは、ふとした瞬間に焦りを感じてしまう。メリーが死んでしまうかも知れない。
「ねぇキャビー……皆んな大丈夫かな?」
不安になって、キャビーに尋ねる。
着いて来てくれている手前、何処か負い目を感じているのも確かだ。「今すぐ出発したい」なんてことは言えない。
キャビーは顕現魔法を使用しながら歩いている。その魔力消費を考えれば、平気そうな顔をしている彼だが、その実かなり無理をしている筈なのだ。
間を置いて、彼は口を開いた。
「私が放った鷹は戻って来ていない。少なくとも全滅はしていない」
「そ、そうよね。でも……」
アイネは、周囲を警戒している大百足とドラゴンモドキを見て言う。
「森の奥に進めば、もっと危険なやつが居るの。なんか、大丈夫かなって……」
「そんなもの、私に分かる筈無いだろ」
「う、うん。ごめん」
アイネは、仰向けで寝ている彼をじっと見つめる。
遠征作戦の1年前──この話を持ち掛けた時、彼は色々と言っていた。
魔族だとか、任務だとか──
その殆どを理解することは出来なかった。
顕現魔法のストックを増やしたかったのだろうか。わざわざ命を賭けてまで。
改めて問うことはしなかったが、深夜馬車の荷台に乗り込んで来た時は、少し驚いた。
「ねぇ」
アイネが言う。
「何」
「着いて来てくれて、ありがとね。クィエちゃんも、ありがと!」
「別に」
「クィエ、お前に着いて行ってない」
「相変わらず、アタシ嫌われてるし……うぅ。ちょ、ちょっとアタシ水飲んで来る!」
アイネはバッと立ち上がって、湖の方に走って行く。
風で僅かに揺れる水面に顔を落として、湖の中を覗くと──
「わぁ、綺麗……」
中央の大木が水面を境に根を伸ばしている。その伸びている根に、びっしりと結晶が付着していた。同様に湖の底も結晶化しており、七色の輝きを放っている。
淡水魚の鱗ですら、所々で瞬いている。
それは、まるで宝石箱か夜空の星々のようであった。
「結晶化……? あれ、お父さんが研究してるやつかな?」
水を掬い取る。
「確かそのまま飲んでも平気なんだよね」
トッド曰く、飲んでも身体に害は無いとのことだった。それどころか、それを毎日飲み続ければ身体が強くなるとも。
アイネは掬った水に舌を付けた。
「あ、甘い!?」
カタリナ村でも同様の水を飲んでいる筈だが、此方の方が遥かに美味しく、仄かな甘みがあった。
「これって……」
結晶化は、恐らくトッドの研究しているとある成分が固まったものだ。それは森の奥地へ進むに連れ、より濃くなるとされている。
きっと、それが甘さの要因だ。
アイネは湖に口を付けて、夢中で水を飲み込んだ。
「めちゃくちゃ美味しい。そうだ、キャビーにも教えてあげなきゃ」
最奥には一体、どれほど美味しい水があるのだろうか。父がこれに執着している気持ちが、少しだけ分かった気がする。
アイネは、キャビーとクィエを呼び寄せた。水中で形成された幻想郷を見せてあげる。
彼らはその輝きに眼を奪われ、子供同然に魅入っている。その光景に何故かアイネは鼻を高くしているのだが──
「クィエ。この水全部取っ払えるか?」
「ちょっ!? な、なななんてこと言うの!? 駄目だからね??」
「あの結晶、欲しくないか?」
「いや、ちょっと欲しいけど……でもこんな綺麗な場所、無くしちゃうのは勿体ないよ」
「だから手に入れたいんだろ」
「違う。自然に出来たからこそ、美しいの! 人の手が加わったら駄目」
「いつか誰かに取られてしまう」
「いや言ってる意味は分かるけどさ。てか、どうやって持って帰るのさ」
「ねぇ、お兄様ぁ」
言い合いの最中、湖に手を入れたクィエが言う。
「この水、動かせないの。クィエの中で水じゃないってなる」
塩水や砂糖水を彼女は動かすことが出来なかった。泥水も同様だ。
水の中に別の濃い成分が含まれていると、彼女はそれを水と判別出来ないのだ。
「御免なさい、お兄様」
「そうか、仕方ない……ならば、水を堰き止めてしまおう」
「うん、クィエ手伝う」
「駄目だって! 生き物も居るし、木も枯れちゃうでしょうが!」
結局、キャビーらの行動を止めている内に、日が暮れてしまった。
「ちょっと、こんなことしてる暇があるなら、先に進めたじゃない!」
「元より進む気なんて無い。ここは休むのに適しているからな」
「そ、そうなの?」
直ぐに辺りは暗くなってしまい、先程の綺麗な湖からも輝きは消えた。代わりに、水面に映し出される夜空は美しかった。
適当に木を集め、火を起こす。
「おい、クィエ。くっ付いていたら動けないだろ」
「そうよぉ。ご飯の準備するんだから」
先程からクィエはキャビーから離れず、頭を擦り付けたり、しがみ付いたりと、彼を困らせている。
仕方なく顕現魔法を使い、草や葉、葉を小動物に集めさせる。
「知らない間に沢山コピーしてるし」
「一芸に特化しただけの雑魚が多いがな。とはいえ、顕現魔法は数が居ないと話にならない」
「ふーん」
そうして、順調に準備を進めていた彼らだったが──
キャビーは突然、何かに取り憑かれたように言う。
「狩りに行く」
「え!?」
当然、アイネは驚いた。
「も、もう日が暮れてるよ!?」
一応大蜘蛛の肉はあるが、他の食料は乾パンだけだった。
「何かのソースは持って来てるよ? これ付けて、今日は食べよ?」
「駄目だ」
結局、彼の案により狩りを行うことになった。
「ほ、本当に大丈夫!? 後少ししたら夜行性の動物が活動を始めるけど」
「ああ」
「そ、そう? じゃあ、アタシはクィエと行けばいいのね」
「クィエ、お前と嫌っ」
「えーどうしてぇ? アタシはクィエちゃんと行きたいなぁ」
「うぅぅ嫌っ!」
クィエはキャビーの元に走っていくと、彼にしがみついた。兄と行動したい。そう訴え掛けているようだ。
「本当、どうして嫌われてるのかしら」
「お前が人間だからだ。私も人間は嫌いだ」
「はいはい、もうその設定はいいから」
そうアイネは突っぱねて、クィエの元に近付く。
「クィエちゃん、行こ? いっぱいお肉捕まえて、キャビーに褒めて貰お?」
「クィエ、お兄様と行きたい……」
兄にしがみ付き、「お兄様ぁ」と彼に上目遣いで懇願する。
「駄目だ、お前はアイネと行け」
「え、でもぉ……」
「私の言うことが聞けないのか!?」
やや語気が強くなってしまった。クィエは拗ねたように頬を膨らますと、兄から離れた。
「クィエちゃん、行こっか。大丈夫、きっとお肉捕まえたら褒めてくれるから」
「人間、うるさい」
「いや、だからアンタも人間だってば」
アイネとクィエは、真っ暗な森に消えていく。1人残されたキャビーは、彼女らとは反対方向へ進む。
「全く、クィエのやつ……」
あの反抗的な眼、言葉。人間の子供の扱いを熟知している訳ではないが──
人間の子供というのは、どうも主人に対する礼儀がなっていない。
「あれ、私が主人だよな?」
ふと、疑問が生じた。
礼儀云々は一旦忘れるとして、クィエは一体「どちら」を主人と捉えているのだろうか。
自らを魔族であると教え、人間を嫌うように洗脳し、兄に忠誠を誓わせた。今回の作戦にも、彼女は母を置いて着いて来ている。
──主人が母の筈はない。
彼は、アイネ達が森に入って行った方向と馬反対側にやって来た。森の前に立ち、顕現魔法を行使する。
「顕現しろ」
手を前に翳すと、大百足を始めとした十数体の真っ黒な生物が顕現する。
黒い姿の彼らは、一斉に森へ侵入していく。
「さぁ、人間狩りの時間だ」
『作者メモ』
日が暮れるまで一瞬で進めるのもあれなので、この話を入れてます。ちょっと長すぎましたねら……
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