第24話
堺市庁舎の和磨のもとにアメリカCIAから情報が入った。
「アメリカの衛星からの情報提供です。チベットへ向かっている巨大な青御神乱を確認しているということです。おそらく、東トルキスタン解放戦線の首領、リズワン・カーディルだと思われます」外務省の役員が極秘電文を携えて入ってきた。
「中国の反応は?」松倉が聞いた。
「現在、中国政府は、全てが停止している状態です。通信回線も使えなくなっていますが、人民解放軍も現在は統率する力を失っている模様です」防衛大臣が言った。
「リズワンは、おそらくはウイグルを裏切られた憎しみから、香港に行くのだと思います」和磨がそう言った。
中国が、日本が、アメリカが、ロシアが、欧州が、全世界がその日の北京の惨事について報道した。
「本日、北京市は、西と東から襲来した二〇体の白御神乱によって甚大な被害を受け、事実上壊滅しました」「この攻撃により、北京にあった政府の主要な建造物は全て破壊されており、人民大会堂で開催中だった代議員の方々の安否は不明です。また、チェン・ハオラン国家主席の安否も、いまだ不明となっております。現在、中国政府は全ての機能を失っている状態となっています」「尚、北京市を攻撃した御神乱二十体は、現在は全て死んでいるものと思われます」「今も尚、北京市のあちらこちらではまだ炎が上がっており、北京市の上空は黒煙に包まれいます。これらの火災がある程度鎮火するまで、その被害の状況は分からない状況です」「この被害での犠牲者および被災者ですが、未確認ながらも、少なくとも五〇〇万人以上が亡くなっており、被災者と行方不明者は一六〇〇万人に上るとの見方があります」
大戸島に一艘の漁船がやって来た。中から芹澤夫妻が降りてきた。
彼らの家のあった場所へ向かう芹澤夫妻。しかし、家の中は中国軍に荒らされており、希望の姿はいくら探しても見つからなかった。
絶望の淵に落とされる夫婦。大戸島には、何人かの島民たちが帰島していたが、夫婦は、その人達を捕まえては、娘の動向を尋ねまくった。しかし、娘の所在や安否について知る者は、誰一人いなかった。
ネオ・クーロン内にいる真太たち六名は、希望の部屋を探していた。
彼らは、まだ登っていない最上階にある部屋に目をつけた。そこは、特に厳重な警備が敷かれていたからだ。目星を付けている扉の前には、屈強そうな男四人が自動小銃を携えて立っていた。
「厳しそうだな……」階段を昇りきったところ、角から廊下を覗き込みながら村田が言った。「でも、これだけ警備が厳しいということは、やはりここなんだと思う」
「今日突破するしかないかな。真理亜も行けるか?」真太が言った。
「もちろんよ。一緒にやるわ」真理亜が言った。
「私たちが囮になります。私がこっちから、サンディさんが向こう側にある階段から出て行って、奴らの目を引きます」マギーが提案した。
「大丈夫ですか?」
「やってみましょう。それで彼らの眼を分散できる」真太が言った。
サンディとスティーブ、そして村田は、一度階段を降りて向こう側へまわった。
しばらくすると、サンディが向こう側の廊下に飛び出して叫んだ。
「大変です! こっちに来てー!」
何かと思ったテロリストが向こうへ行こうとする。
その直後、今後はこっち側からマギーが飛び出して行った。
「こっち、こっちー! こっちが大変なことになっててー!」
すると、テロリストは向こう側とこっち側の階段に分散した。そうして階段のところまでやって来たテロリストに対し、真太が電撃的に飛び出して首を絞めた。「ぐうっ……」声も出せずに気を失うテロリスト。すかさず銃を奪う。もう一人のテロリストは、マギーが自動小銃で思いっきり頭を叩いた。
向こうでも、村田と真理亜が同じようにテロリストをのしたようだった。
再び扉の前に集合した六人。奪った鍵で扉を開けた。
部屋の中、各種のかわいらしいキャラクター人形、そしてぬいぐるみ、壁にはびっしりと貼られたアイドルたちのポスター、白く塗られたかわいらしい箪笥や縁取りがデコレートされた鏡台、そこはまさしく、少女趣味のアイテムで飾り付けられた、中学生が好むようなファンシーな部屋だった。
壁際には、同じようにファンシーでデコラティブなベッドがしつらえてあり、そこには、明らかに既に少女ではなくなっている二〇歳くらいの女性が眠っていた。
「希望さん!」「芹澤希望さんですよね!」真太が叫んだ。
すると、少女はゆっくりと目を開けた。彼女は、何が起きたのか理解できない様子で、きょとんとした顔をしていた。
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