第3話 遺跡そして強襲

ミトゥースに促されるままにギルドの中に入った俺はそのまま受付に行こうとした。

「待って下さいエドワード殿、受付に行く前に依頼ボードに貼ってある依頼書見ましょう」

ミトゥースはそう言って俺を止めた。

確かにそうだな……まずはどんな依頼を受けるか決めないとな。

俺とミトゥースが依頼ボードの前に行くとそこには様々な依頼が貼られていた。

薬草の採取や魔獣討伐など定番の依頼から街の外にある畑で収穫する手伝いや庭掃除などの雑用まで本当に様々だ。

さてどれを受けようか? そんな事を考えていると後ろにいたミトゥースが一枚の依頼書を剥ぎ取って俺に差し出してきた。

その依頼書にはこう書かれていた。"簡単な護衛 サガミ遺跡と往復の護衛 報酬1500ガルドとポーション 発掘物 初心者限定"と書かれている。

このサガミ遺跡というのは確かこの街の東の方にあったはずだ。

古代魔法文明の遺跡の一つだったはずなのでかなり古い建物が残っているらしい。

だが最近になって盗賊の被害が多発しているらしく冒険者ギルドでも人手不足になっているようだ。

そこで初心者の冒険者を雇う事で被害を抑えようという事だろう。

それにしても初心者限定とはどういう意味だろうか? 普通なら誰でも受けられると思うのだが……。

まぁそれはいいとして報酬も悪くないしこれにしよう。

俺はミトゥースと相談してこっちを受ける事にした。

そして早速受付の所に向かった。依頼主はケビン・ストーク博士で、年齢は50歳くらいの男性だという。

俺達は依頼主に会えるように手続きをしてもらった後、準備を整えてから出発した。

目的地までは徒歩で2時間ほどかかるようなのでその間に自己紹介をする事になった。

「こんにちは、今日はよろしくおねがいします。私が依頼主のケビン・ストークです。」

依頼主であるケビンは深々とお辞儀をして挨拶をしてくる。

「はい、こちらこそよろしくお願い致します」

「こちらこそお願いします。私はエドワードと言います。こちらは仲間の……」

「ミトゥースといいます。本日はよろしくお願い致します。」

俺達がお互いに挨拶をしている時、ふとある疑問が生まれた。

何故、初心者だけなのかということだ。

普通こういう仕事だとベテランの冒険者がやるものではないのか? しかしそれを直接聞くわけにもいかないしどうしたものかと考えているうちに遺跡に到着した。

そこは森に囲まれた場所で近くに小さな村がある以外は特に何もない場所だった。

ここに来るまでの道中では何回かダッシュボアと遭遇したが全部俺達だけで倒した。

「ところでその、依頼書にも書いてありますがその、なんで護衛の依頼なんかを?」

「ああ、それですか。実を言うと私の知り合いで考古学に詳しい人がいるのですが、その人から遺跡について色々と聞きまして、一度行ってみようかと思ったんです」

「な、なるほど」

正直そこまで興味は無いが、とりあえずそう答えておくことにした。それからしばらく歩くと大きな石造りの建物が見えてきた。

あれがおそらく遺跡なのだろう。

「ではそろそろ休憩しませんか。」

俺は、ケビンさんに休憩を提案してみる。

「エドワードさん、遺跡までもう少しなので入口付近まで行きませんか?」

ケビンさんは遺跡が近くなり興奮してるのだろうか、休憩を今とらずに遺跡の近くまで行って休憩をとろうとの事。

「はい、大丈夫です!」

俺は元気よく返事をした。

「あの、エドワードさん……」

ケビンさんの興奮は、遺跡に近くなるほど高まってるようで饒舌になっているようだ。

「ん?何ですか?」

ケビンさんは、何がしたいんだろう。

「いえ、私も一応戦えますよ?こう見えて結構強いんですよ!」

ケビンさんのドヤ顔が少し眩しい。

「へぇーそうなのか!それは頼もしいな」

俺は適当に聞き流す。

「はい、なので足手まといにはならないと思います」

ケビンさんがしつこくアピールしてくる。

「ところでエドワードさんはどのような武器を使うのですか?」

「刀だけだよ、剣とか槍とか弓とか使ったことないし」

「そうなんですか!?珍しいですね~」

「まぁ、確かにそうだな。でもこれしか使えないんだよな」

「そうなんですか……」

「そういえばケビンさんは攻撃手段だは何を?」

「私の場合は魔法や薬品とアイテムを使う攻撃補助がメインですね」「おお、回復役って感じなんだな」

「はい、そういうことです」

そんな会話をしながら歩いているうちに目的の場所に着いた。そこは遺跡の中でも大きな建物だった。

「ここが知り合いの言っていた洞窟の入口です」

ケビンが得意顔で地図に何かを書き込んでいる、俺とミトゥースはは周りを確認し安全を確保する。

「こんなところに洞窟の入り口があったのか……全然知らなかったな」

「ふむ、やはりここから遺跡に行けるみたいですね」

ケビンは地面に落ちていた石を拾い上げながら言った。

「しかし困りましたね……道が塞がれています」

「えっ、マジかよ……それじゃあどうすればいいんだ?」

「うーん、これはおそらく誰かが先に調査をしていたんでしょうね。だからもう中に入ることはできませんね」

「な、なるほど」

俺は落胆しながら言った。

「さて、どうしましょうか……」

「おいおい、まだ諦めるのは早いんじゃないか?」

後ろから突然声をかけられた。

「あっ、あなたは確か……?」

背中に背丈ほどもあるハンマーを背負ったガッシリとした体格の男が声をかけてきた。

「よう!エドワード坊ちゃんこんな所で久々だな。他のメンバーとは初めましてだな!俺は冒険者のエイン・カシウスだ」

この、エインという冒険者は公爵である俺の父親が屋敷に招待をしていたので、俺だけは満更初めてでは無いのだ。

「はじめまして、私は考古学者のケビン・ストークといいます」

「それで、何を諦めるって?」

「実はこの洞窟には入ることはできないんです。なのでここで引き返した方がいいと思うのですが」

「はっ?無理矢理入ればいいじゃないか?」

「いえ、ここは恐らく古代の文明が作ったものだと思うんです。それを壊すわけにはいかないでしょう?」

「なーるほどね……よしわかった!!それなら俺に任せてくれ!!」

「えっ?どういうことですか?」

「要するにこの洞窟の入り口を塞いでるものだけをぶっ飛ばせば良いんだろ?」

「まあ簡単に言うとそうですね」

「おし、任せろ!すぐ終わらせてくるからな!」

そう言ってカシウスはどこかに行ってしまった。

(大丈夫かな?)

俺は不安になりながらも待つことにした。

10分後……

「お待たせー!」

「おっ、早いですね……って誰だ!?」

俺は目の前にいる人物を見て驚いた。そこには筋肉ムキムキで身長が3メートルくらいある大男がいた。

「ああ、こいつはな、巨人族の奴でな、力仕事が得意なんだよ」

「よろしくな人間よ!」

そう言いながら握手を求めてきた。俺は戸惑いつつも手を握り返した。

「あの、その人はなんていう名前なんですか?」

俺は恐る恐る聞いた。

「ああ、そういえば名乗ってなかったな、こいつの名前はゴーズだ」

「よろしくな新人冒険者君よ!」

「は、はぁ」

(やっぱりこの人怖いんだけど……)

そう思いつつなんとか笑顔を作った。

「で、こいつらを使って入口を開けるぞ」

そう言って取り出したものは大きなハンマーだった。

「おお、すごいな」

「そうだろう?この『ゴーズの鉄槌』は特別製なんだぜ?」

「へぇ~」

(でも、どこから持ってきたんだろう……)

そう疑問に思ったがあえて聞くことはしなかった。

「じゃあいくぞ!」

エインはそう言うと同時にゴーズと息を合わせて振り下ろした。すると轟音と共に岩が崩れ落ちた。

「おお、すげえ……」

俺はその光景に感動していた。

「よっしゃ、これで入れるようになったぜ!」

「ありがとうございます!助かりました!」

「いえいえ、お礼を言うのはこちらですよ。本当に助かりました!」

「いえいえ、そんな……」

「ところでさエドワードはどうしてここに?」

「ああ、それは……」

俺は依頼で遺跡の調査に来たことを話した。

「ほう、それは面白そうだな」

エインの反応から遺跡に何かありそうな予感がする。

「えっ、興味あります?」

「おう、そりゃあ男なら誰もが行きたがるぞ!」

「へぇーそうなんですか」

「ところでエドワードは、遺跡についてはどれぐらい知っているんだ?」

「えーっと、ほとんど知らないです」

「そうですか……」

「あっ、そうだ!よかったら途中までの地図は要るか?俺達の依頼は洞窟の入口を通れるようにだったから此処で拾った地図は持ってても必要無いからな。」

「いいんですか!?」

「うん、全然構わないよ」

「では遠慮なく頂きます」

「おう、じゃあ気をつけてな」

「はい、お二人も頑張ってくださいね」

「ああ、じゃあまた会えたらな」

「はい、さようなら」

こうしてカシウスと別れた。

「よし、じゃあ行くか」

そして俺達は洞窟の奥へと進んでいった。

「そういえば、ケビンさんは遺跡について何か知ってることはありますか?」

俺は歩きながら質問をした。

「うーん、私が調べたことだと古代文明は魔法や錬金術などを研究していたらしいです」

「へぇ、そうなんだ……」

(なんか意外だな……もっと科学的なものを想像してたけど)

「他にも色々なことがわかっていますよ」

「例えばどんなこと?」

「まずは、この世界とは別の異世界があることが分かりました」

「ふむ、なるほどね」

「あとは、魔物を人工的に作り出すことが出来たなども分かってます」

「ほぉー、それは凄いな」

(あれ?ちょっと待てよ……それってつまり……)

「ちなみにその魔物を作り出す方法は?」

俺は恐る恐る聞いてみた。

「それが……よく分からないんですよね」

「えっ?」

「どうにも、資料などが残されていないらしく、まだ詳しいことまでは分かっていないのです」

「そ、そうですか……」

「ただ、最近になって新たな情報が分かったみたいなんですよ」

「へぇー、一体なんなの?」

「なんでも、遺跡から『魔導書』が見つかったみたいです」

「ま、『魔導書』!?」

俺は思わず声を上げた。

「ええ、私もその本の解読された数枚の紙束を読みましたがとても興味深い内容でした」

「マジですか……見てみたかったな」

「残念ながら、今はその本を研究者が持っていってしまったのでもう見れませんよ」

「そうですか……」

俺は少し落ち込んでしまった。

「そんなに落ち込まないでください。また新しい本が出たら見せてもらいましょうよ」

「そうですね、そうします」

「おっ、分かれ道だな」

俺は目の前にある二つの通路を見て言った。

「どっちに行きますか?」

「うーん、左かな」

「了解しました」

そして、俺達は左側の道を進んだ。

しばらく歩くと広い空間に出た。そこには大量の本が棚に入っていた。

「おお、これはすごいな……」

ケビンは大量の本をみて感動をしているのか急に口数が少なくばり挙動が不審になっている。

「そうですね……」

「とりあえず手分けをして使えそうな道具や本探そう」

「そうしましょう」

2人で協力しながら探索したがなかなか見つからなかった。

(やっぱり、ここにはないか……)

そう思いながら部屋を出ようとした時、ケビンが急に叫び出した。

「ありました!」

「ほんとか!?」

急いで駆け寄ると確かにそこには目的のものがあった。しかし……

「これ、表紙だけじゃん……」

そう、中身は入っていなかったのだ。

「こりゃあ、骨折り損のくたびれ儲けだな……」

(でも、この絵はどこかで見たことがあるような気がするんだよなぁ……)

「仕方ないですね……」

「そうだね……」

「では、帰りますか」

「ああ、そうしようか……」

そう言って俺達は元来た道を戻ろうとした。その時……

「危ない!」

ストークさんが叫んだ。その瞬間、俺達がいた場所に無数の黒い矢が降り注いだ。

「なんだ!?」

「敵襲です!早く逃げてください!」

「わかった!」

俺達は一目散に逃げ出した。すると後ろから足音が聞こえてきた。

「追ってきているぞ!このままじゃ追いつかれる!俺が時間を稼ぐから先に行ってくれ!」

「そんな、無茶です!」

「大丈夫だから、先に行っててくれ」

「わかりました……必ず生きて帰ってきてくださいね」

「ああ、約束するよ」

「では、行きますよ」

「はい」

こうしてストークさんは引き返していった。

「ミトゥース殿も急いで撤退を!」

「いえ、私は此処に残ります」

ミトゥースの言葉に慌ててしまう。

「な、何を言っているんですか!?死にたいのですか!?」

「ああ、そうだな。私は死ぬかもしれない」

「なら、どうして!?」

「俺は、あの黒い奴らの正体を知っている」

「えっ!?それはどんな奴なのですか」

「奴らはゴーレム兵、中大より西にある国で創られた魂のない兵士だ」

「そ、そんな……まさか……」

「信じたくない気持ちは分かる。だが、現実だ」

「……ッ!貴方はどうするつもりなんですか?」

「俺は戦うつもりだ」

「無理です!絶対に勝てません!」

「やってみないとわからないさ」

「いいえ、分かります。それに貴方は私達のために戦おうとしているんでしょう?」

「まぁ、そうなるな」

「それなのに、私が貴方を置いて逃げるわけにはいきませんよ」

「そうか……ありがとう」

「いえ、当然のことですよ」

「それじゃあ、行こうか」

「ええ」

そして、俺達は戦いを始めた。


〜side ストーク〜


私はケビン・ストーク、フーリーの魔法薬研究者を装ってはいるが、実はこの国の麿に仕える魔導博士だ。

今は遺跡調査のため、冒険者を雇って一緒に来ている。その冒険者というのがエドワード殿とミトゥース殿という方々だった。

最初はあまり頼りにならないだろうと思っていたが、2人は遺跡探索の事を良く知っているようで次々と仕掛けを躱していく。正直、私よりも遺跡に詳しいのではないかと思ったほどだ。

私達は遺跡の調査を終えると帰路についた。しかし、途中で魔物に襲われてしまい、バラバラになってしまった。そして、私だけがなんとか逃げ延びることが出来たのだ。

それからしばらく歩き続けていると、目の前に大きな扉があった。おそらくこれが出口なのであろう。

私は一刻も早く皆と合流したかったのですぐに開けて外に出ようとした。しかし、鍵がかかっていて開かなかった。

「くそ、こんな時に!」

焦る私の目に、近くに倒れていた木箱が映った。

(これで壊せるかもしれない!)

そう思った私は近くにあった石を使って破壊を試みた。

「せいやぁー!!」

ガキン!!

「駄目か……」

予想通り頑丈だったので諦めかけたその時、ある考えが浮かんだ。

(待てよ?確か、この国は魔力で動く物があると聞いたことがあるな。もしかすると、これを動かすのに必要な道具が入っているかもしれない)

そう考えた私はその箱をこじ開けた。その中には……あった!

「よし、これで開くはずだ」

そう言って私はナイフを突き立てる、この箱を開けたことによってどうなるか露知らず

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