東方の冒険者
第1話 白と黒の激突
静寂を破るように響く金属音、空気を切り裂く雷鳴や鳴り響く破裂音が霧の向こうから聞こえてきた。
此処は、ラグラジェントの中でも1番の秘境"ミューラー鏡界"。
霧が深く視界もままならく、ミューラ鏡界で生まれた専属の案内人を雇わなければベテランのレンジャーでも待つのは死のみと云われる地、そこに在るのは8本の支柱に囲まれた一つの巨大な塔ガデス、そしてその塔の最上階にある主玉の間で血よりも強い絆で結ばれた仲間同士であった2人の男が向かい合うように立っていた。
「……それで、どうするのだレイモンド、このままどちらかが死ぬまで俺と戦い続けるのか、それとも俺と一緒に世界を壊そうとする為に邪悪な企みをするザルガネスを討伐するか、ミューラやブブ達の様に龍神によって封印されしスティーマグナを目醒めさせるのを協力をしてくれるのか?」
そう言って、黒きローブを纏った一人の男……クリシュバナがもう1人の男レイモンドに問いかける。
すると、レイモンドは難しそうに頭を搔くと、苦笑いをすると迷うな素振りなど見せずに
「くだらない言い訳を言うな、ザルガネス様は邪悪だが素晴らしい神徒様ではないか!!魔王と呼ばれる者に頼り神徒様を殺そうとするなど論外だ。クリシュバナ、君を殺してでも止めてみせる。どの道、他の仲間達やコルセイカの現人神様ももうすぐここへ来てしまうのだ、薄汚い魔人である貴様の世界征服という野望もお終いだ!」
レイモンドの洗脳された者の特徴である洗脳をした者を讃える答えに、説得出来ないと分かり少し落胆の色を見せ、!
「そうか……。では、我々は今は殺り合うしか方法はないようだな」
クリシュバナの言葉に、レイモンドは小さく頷き肯定すると、「行くぞ!」と言って地面に刺さった剣を引き抜いた。
それを見て、クリシュバナも自身の武器である神器を取り出して構える。
2人は互いに見つめ合い、数秒後……同時に駆け出した。
「レインボーフレア!!」
最初に仕掛けたのはクリシュバナだった。彼は左手に持つ神器をレイモンドへと向けると、そこから虹色の魔力を吹き出し、レイモンドへと襲い掛かる。
対するレイモンドはその攻撃を正面から受ける事無く横に回避して避けると、そのまま彼の懐まで入り込んだ。
「喰らえっ!ライトニングスラッシュ!!」
雷を帯びた斬撃がクリシュバナを襲う。しかし、その攻撃は彼に届くことは無かった。何故なら……
「ぐぅう!?」
突如として、レイモンドの身体に強烈な痛みが走ったからだ。
彼が視線を下げると、そこにはいつの間にか現れた鎖の様なものが巻き付いており、それが自身の動きを制限している事に気付く。
「これは……鎖?」
「レイモンド……最初に言っただろう?俺は"種族固有能力以外の全ての攻撃"を使う事が出来ると」
クリシュバナは自身の持つを見せつけるように杖の形態からレイモンドの持つ神器と同じ剣の形態へと変えていくと、泣きそうな目で笑みを浮かべた。
「さっきお前が避けたあの虹色の魔力、あれこそがスティーマグナから魔人族だけに伝わった虹魔法だ」
「なるほど……通りで見たことの無い術式だと思えば、そういう事か」
「ああそうだ。だが安心しろ、まだこの魔法は序の口に過ぎない。本番はこれからだ!」
そう言うと、クリシュバナは再び神器を杖に形態変化させると呪文を唱え始める。
「我が魔力よ、集え!我が望みに応えろ!!出でよ!七つの自然の化身たちよ!!!」
すると、突然部屋の床に大きな亀裂が入ると同時に、そこから7体の精霊が現れた。それは、まるで炎の様に揺らめく体を持った獣や水のように透き通った龍、氷柱のような角を持つ馬等々……。
そんな彼等が一斉にレイモンド目掛けて襲い掛かって来たのだ。
「チッ!」
舌打ちをしながらレイモンドは咄嵯に横に飛び退いてそれを何とか回避するが、休む間もなく今度は無数の岩が彼に向かって飛んできた。
それも先程と同じくギリギリの所で避けるも、次は巨大な竜巻が彼を包み込み、更には雷鳴が鳴り響いた。
「ぐうぅ!!」
その衝撃によってレイモンドは吹き飛ばされてしまい、塔の壁に強く叩きつけられる。そして、そのままズルズルと崩れ落ちるようにして座り込んでしまった。
「クッ……ハァ……ハァ……」
肩を大きく上下させながら息を整えるレイモンド。一方、クリシュバナの方は彼の方を見ながら哀しそうな笑みを浮かべていた。
彼等は親友同士ではあったが、今は敵同士なのだ。だから当然と言えば当然の事ではあるが、それでも彼は思っていた。
(何故こんな事になったんだろうな)と……。
そもそもの始まりはダリウスでの事.....
彼等のここに至るまでの物語を読み解こう、彼等の友人や仲間たちの目を借りて....
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