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「合格おめでとう。来年はまた、三人一緒に同じ高校に通えるね」と稲田先輩は受話器の向こう側で、小夜に言った。
「ありがとうございます。先輩」受話器を持ったまま、実家の階段のところで小夜は言う。
「あの、先輩実は聞いてもらいたい話があって……」
そう言って小夜はめぐるくんに告白されたことを稲田先輩に話した。
「へー。そんなことがあったんだ」
稲田先輩はにやにやしてそう言った。
「小夜もやるね。なかなかもてるじゃん。去年。私に、先輩。私、綾川先輩に振られちゃいました、って泣いて電話してきたときとは大違いだね」
「まだ振られてと決まったわけじゃありません。私の恋は現在進行形で、継続中です」小夜は言う。
「ふーん。そうなんだ」稲田先輩は言う。
「それで、どうするの? そのめぐるくんて子と小夜は付き合うの?」
「付き合いません」小夜は言う。
「ふふ。小夜はいつまでたっても、綾川くん一筋か。そういう真面目なところは、本当に小夜らしいね」稲田先輩は言った。
「それで稲田先輩。その綾川先輩のことなんですけど……」
「ああ。うん。いいよ。今日の綾川くんのことを、こっそりと小夜に教えてあげよう。二人とも私の可愛い後輩だからね。そんな小夜に頼まれたら断れないよね」
「ありがとうございます。先輩。また、今度なにかおごりますね」
そう言って、小夜は稲田先輩から今日の綾川先輩と言う題名の(それは稲田先輩が言い始めた言葉だった)秘密情報を教えてもらった。
稲田先輩の話の中に出てくる綾川波先輩は、やっぱり小夜のよく知っている綾川波先輩のままだった。
高校生になっても変わらない。
そんな綾川先輩の話を聞いて、小夜はなんだか心が嬉しくなった。(小夜は階段のところで、足をぱたぱたと動かした)
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