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その男の子の名前はめぐるくんと言った。
すっごく可愛い後輩の男の子だ。
「小夜。めぐるくんと付き合うの?」
「……付き合わないよ」小夜は言う。
二人は今、一緒に三年間通った中学校の帰り道を、いつもと同じように二人並んで歩いていた。
場所は大きな川の横。
土手沿いの道。
「……私は、綾川先輩一筋だもん。綾川先輩以外の人を好きになったりしないんだから」
「本当に?」
「本当にって、なによ」
「めぐるくん。すごくいい子じゃん。それに、真面目だし、本気で小夜に恋しているわけだしさ」
「それは、……まあそうだけど」
一年間、一緒に天文部の部活動をしてきた関係があり、小夜は(八木ちゃんも)めぐるくんのことをよく知っていた。
「なんかさ、めぐるくん見ていると、去年の小夜を思い出すんだよね」
「去年の私?」
「そう。綾川先輩にずっと恋をしていた小夜のことを思い出すんだ。めぐるくんと小夜って、すごくよく似ている気がする。なんだか、本当の姉弟みたいだって、そう思うときもあるくらい」八木ちゃんは言う。
確かに小夜もめぐるくんのことを本当の弟みたいだって思うときもあった。(だからこそ、余計に恋愛対象としてめぐるくんのことを見ることができないのだ)
「小夜。そこでたい焼き食べていこうか? それともたこ焼きにする?」八木ちゃんがよく二人で帰り道によった屋台のお店を指差して言う。
「うん。食べていく。今日は私がおごってあげるよ。八木ちゃん」にっこりと笑って小夜は言う。
「恋愛の口止料にしては安いね」ふふっと笑って、(悪い顔をした)八木ちゃんは言った。
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