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二年前。
三笠さん。あなたはもっと素直になりなさい。素直じゃないと可愛くないよ。
中学校を卒業する稲田先輩は、小夜にそんな忠告をしてくれた。
私は少しは素直になれたかな?
そんなことを、中学校を卒業する日を迎えて、三笠小夜は思った。
「なに黄昏てんのよ。らしくないよ」
満開に咲く桜の木を卒業証書の入った筒を持って、じっと見ていた小夜は後ろからそう親友の八木ちゃんに声をかけられた。
振り向くと、八木ちゃんも(当たり前だけど、小夜と同じように卒業証書の入った筒を持って)その場所に立っていた。
いつも笑顔の八木ちゃんは、今日も笑顔だったけど、その目は真っ赤に腫れていた。
泣いている八木ちゃんを、小夜は本当に久しぶりに見た。(泣いてばかりいる小夜とは、八木ちゃんは違うのだった)
「ほら、行こう。みんなが待っているよ。小夜」
「うん。わかった」
にっこりと笑って、涙をそっと拭ってから、小夜は言った。
「そういえばさ。小夜、『あの子』から告白されたんでしょ?」
「え?」
さすが八木ちゃんだと思った。
ずっと隠しておこうと思ったのに、もうばれてしまっていた。「……うーん。どうだったかな?」と言って小夜はとぼける。
小夜は一人ぼっちになってしまった、廃部の危機のある天文部を救うために、八木ちゃんにお願いをして、(頭を下げて、と言うか土下座をして)古典部と掛け持ちでとりあえず名前だけでも、八木ちゃんに天文部に入ってもらった。(小夜が部長。八木ちゃんが副部長だった)
それでなんとか、廃部の危機は間逃れた、ともっていたところに、なんと一人の新入生の男の子が「あの、天文部に入部ってできますか?」と言って、天文部の部室のドアを叩いたのだった。
もちろん、小夜はすぐに「できます!」と言った。
そして、そのままその日のうちに入部届けを書いてもらい、その男の子に天文部に入部してもらった。
そして、八木ちゃんもなんだかんだ言って、天文部に結構顔を出してくれて、小夜と八木ちゃんとその男の子の三人で、今年一年、小夜が天文部部長の間、天文部としての部活動をきちんと行うことができたのだった。
(その男の子が来年は、天文部で部長をしている予定だ。部員も確保しているようで、なんとか来年も、天文部は廃部にならずにすむようだ)
その男の子に、確かに小夜は、ついさっき、告白されたばかりだった。
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