第4話

「……」

 ずっと無言で雪島は前を歩き続けている。どこに向かっているのかも分からないまま彼女の背中を追っていると、唐突に立ち止まった。

「ねえ、誰にも話を聞かれる可能性がない、人のいない場所ってないかな」

「そうだな……」

 思い当たるところは正直、沢山あった。#学園1のぼっちとしては、自分の心地よい居場所というものを見つけることに自信があった。


 だが、そう簡単に言うのは憚られた。他人に話してしまえば、そこはもう使えない場所になってしまう。だが、何故か雪島になら話してもそれほど支障がないようにも思えた。

「……あそこの教室。昔は部室として使われていたみたいだけど、今は使われていない。何故か、鍵も空いているし。けど、昼休みは一部の3年の不良が使う可能性があるからオススメしない。放課後なら、誰も使わないから大丈夫だ」

「いいね。そこにしよう」


 雪島は俺の勧めた教室に入っていった。続けて中に入ると、カビ臭さが鼻をついた。窓を覆うカーテンのせいで薄暗い。電灯のスイッチをつけると、教室の中心に立っていた雪島がこちらを向いた。

「あまり時間もないから、単刀直入に話すね。その、お願いがあるの」

「お願い?」

「私を匿ってほしいの」

 唐突な内容に俺は何て返答するか考えた挙句、付いてこない方がよかったかも知れないと後悔した。

 面倒ごとに巻き込まれるのはもう、懲り懲りしているのだから。

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