さあ、聞いてくれ、ここからが見せ場
その日はなんて事の無い、真っ青な晴れ空だった。
明るい景色に雲一つなく、遠く地平の先までが見えていた。
その
どんどん増えて、繋がって、今や黒々とした帯となって。
ドロドロドロドロ、雷が近い。
ゴロゴロゴロゴロ、こんなに晴れて?
ドロドロドロドロ、ゴロゴロゴロゴロ、
ドロドロドドドド、ドドドンドドドド、
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド!
違う!これは地鳴りだ!
地を踏む数多の足音だ!
ドンガラガラガラ!
ドンガラガラガラ!
馬だ!
見えるのは沢山の馬の群れ!
ドンガラガラガラ!
ドンガラガラガラ!
馬のいななき!
鬨の声!
ドンガラガラガラ!ドンガラガラガラ!
ドンドンドンドンガラガラガラガラ!
騎馬だ!
王家の紋章だ!
牙だ!
王の追討軍だ!
わけも分からず逃げ惑う人々を追いかけ!
兵隊が乗る軍馬が駆ける!
ああ!広い道に逃げてはダメだ!そこでは馬は、何より速い!
ああ!建物に入ってはダメだ!王命によって、火を着けられる!
号哭!悲鳴!黒煙が立ち昇り!
空はいつしか重き曇天へと変わっていた!
誰かが泣き叫ぶ声が別の誰かの心を掻き乱し!それで狂う
教会内には、あの怠け者の青年が残っていた!
何せ司祭は、都市の教会に繋ごうと、外に出て命乞いをしに行っちまった!
さあどうする!どうするもこうするも無い!
ここに彼だけなら覚悟を決めた!
しかしここには、天使様が居る!俺を正道に導き救った、本物の
それを捨てて置いて行く事は出来ない!
天使様が俺らを救おうとしたように!
俺も天使様を救おうと最期まで足掻くしかねえ!
おっとつまり青年はそう考えた!
そう考えて、人の背丈より遥かに高いその石像を、一人で持って逃げる事にした!
無茶だ、無理だ、やるだけ無駄だ!
それでもこれはきっと必要な労苦だ!
さあ!さあさあ!とうとう来たぞ!
一世一代の大仕事!
表六玉の、最初で最後!
ここで
そうして両腕を台座の上の脚にグッと回して、むんずと絞めて、えいやと浮かせて、
あらっ、あららっ、
あっさり、
台座が床から外れ、
勢い余った青年は、
後ろに転んでもんどり打った。
こりゃどうした事かと、像を足から覗いてみれば、
なんと、中身は空洞で、石像どころかハリボテだった。
アッと驚くその声が、中で跳ね返り、大きく響く。
貧乏教会も体面があるか、涙ぐましい努力の結晶。
なんとも笑えるインチキ具合。
それじゃあ、声は、どっから来たって?
青年もそう思って、台座の下になってた床を見てみると——
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