地獄耳な教会

なんでもかんでも、上手い事行って、そうすりゃ人って欲を出す。


誰かが言った。「天使様を、より広く」って。

誰かが言った。「天使様は、俺達の物」って。

誰かが言った。「天使様は、狙われるかも」って。

誰かが言った。「天使様は、この世を救う」って。


自慢したがる。独り占めしたがる。

ありがちだろう?よく聞くだろうが。


だけど、綻びはそこじゃなかった。

浮かれてたから、忘れてた。

それか、誰もが、かるーく見てた。

聞いてた旦那も、忘れてねえか?

この村は別に、閉ざされちゃいねえ。

牧夫が雇われやって来る。


牧夫は外の人間で、天使様を見て、そりゃまあ、驚く。

驚いたとて、牧夫は牧夫。そのまま居着く、つもりもねえ。

時期が来たなら、そのまま帰る。

帰った先で、その話をする。


言葉を話す、不思議な彫刻。

愛に溢れた天使様。


面白い事、珍しい事だと、牧夫はそこらで言って回った。

当たり前、そりゃそうするだろうな。

そういう楽しみがこの世になけりゃ、俺も商売上がったり。


けれどこいつが、いけなかったな。


都市に置かれた、ドデケえ教会、教区長様の耳に入った。

教会からすりゃ寝耳に水だ。

そんな化け物広まってみろ。

人を通さず「お告げ」をされりゃ、今度はお歴々の商売が上がる。

まことの教えが、「嘘」へと墜ちる。



こいつは困ったと、教区長様は、その足ですぐに、謁見へ走る。

王様に向けて、言う事にゃ、

「これは王への反逆です。

 王権を下賜かしする神とは別の、知らぬ新たな天の声。

 王の権威への挑戦です」


聞いた王様、こりゃしからんと、家臣の一人に調べさせ、

事実に全く相違なしと見るや、兵を挙げての追討に出た。

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