レクリエーション
「おーい光誠くん!こっちこっちーー!」
「おうごめん、ちょっと遅れたー」
時は流れ、レクリエーション当日。
光誠は手を振って自分を呼ぶ愛華の元へと小走りで近付き、所属する班に合流した。既に他の班員も集合場所に集まっており、彼らは愛華の後ろで光誠を見つめている。
大事なのは第一印象だ。光誠は出来得る限りの明るい表情と声色で彼らにも挨拶をした。
「おはよう!今日はよろしくな!」
班員は5人。光誠に愛華、他には女子二人に男子一人という内訳だ。
前者二人を除く3人は光誠の挨拶を見て顔を見合わせる。最初に口を開いたのは男子だった。
「無理に明るく振る舞わなくても構いませんよ。あなたのことは清滝さんから聞いていますから」
「あ、そう? いや別に無理はしてないんだけども」
「お好きな態度で良いということです。無論、歩み寄ろうとしてくださるのは有難いですが」
「……しゃべり方お堅くない?」
「素です」
終始丁寧な言葉遣いを崩さない彼の名は、
「今日はよろしくね外空くん。あ、自己紹介いる?
「
名の通りの真紅の髪を持つ利発そうな少女と、丁寧に編み込まれた長髪を持つメガネの少女がそれぞれ光誠に挨拶をする。
「おうよろしく!」
光誠が歯を見せて笑いかけると、二人は所在なさげに視線をさまよわせ、こそこそと話す。
「色眼鏡なしで見るとやっぱりちょっと美形過ぎだよね」
「ちょ、直視できないです~」
「………」
渾身の挨拶に対する二人のリアクションに、光誠は若干しょんぼりする。愛華はそんな彼を笑顔で慰めた。
「大丈夫。陰口叩かれてるわけじゃないから」
「あごめんそう見えた!? そうそう、ちょっと照れちゃっただけだから!」
「はい! 外空くんはその……美形、なので……」
「うわ言っちゃうんだ」
「あ、あぅう……!」
女子たちの姦しい会話が始まりそうなことを感じ取った修斗は、文庫本を取り出して、それを見せつつ軽く振りながら言う。
「長くなりそうですか?」
「あーごめんごめん!大丈夫!」
「相変わらずですね、深山さんは」
そう言いつつ修斗は光誠の方を向き、肩をすくめる。
「悪い人たちではありませんよ」
「───みたいだな。もちろん、キミも」
「……それはどうも」
そう言って修斗は掛けているメガネを指で押し上げる。
「あーーっ! 小関くんが照れてるぅーー!」
「ッ!? うるさいですよ深山さん!!」
「おっ、落ち着いてください小関くん!」
ワイワイ騒ぐ三人を見つつ、愛華は光誠を肘でつつき囁いた。
「どう? 私の人選」
「カンペキ。楽しくなりそうだわ。サンキュー」
「えへへ、どういたしまして」
「やっぱりあの二人って……ねぇ?」
「じ、実際どうなんでしょうかっ」
「下世話な詮索は控えてくださいね。特に深山さん」
「なんか私にアタリ強くなーい?」
4月25日開催 天ヶ室学園高等部レクリエーション
イベント内容はトレッキングとなります。
開催日:4月25日~26日
会場:青木ヶ原樹海
概要:スタート位置は各クラス各班ごとに別となっています。皆さんは班員と協力してゴールを目指してください。地図(別途配布)を用いて、トレッキングに役立つアイテムを手に入れましょう。期間は二日間。樹海内にはペンションが点在しておりますので休憩・宿泊にご利用ください。アイテムの中にはキャンプ用具もあるので、野営も可能です。着順ごとに景品も用意しておりますが、トレッキングメインで楽しむも良し、景品を目指して急ぐも良しです。それでは生徒皆さん、レクリエーションをお楽しみください。
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