部活動見学(4)
「はあ”~づがれ”だ~」
「お疲れ様。なんというか……うん、大変だったね」
光誠と愛華は、体育館から渡り廊下で繋がっている校舎内へと戻り、その休憩スペースで一息ついていた。
響いてくる声から察するに、依然、文化部の熱狂的な勧誘は続いているようだ。
「…ねぇ、佐薙先輩と知り合いなの?」
「俺からすりゃあ初対面もいいとこなんだけど。や、実際会ったことはあるみたいなんだけどさ?」
「ふーん」
愛華は中等部時代から花凛とは交流があった。が、今日見た彼女の様子は、これまで一度も見たことがないものだった。
(あんなに興奮した様子は初めて見たな)
二階の観覧席から見ていたので、会話の内容等はもちろん聞き取れてはいない。しかし、そんな遠くから見ていても容易に分かるほどに、いつもの彼女とは一線を画していたのだ。
(なんだろう? なんか……ヤだなぁ)
それは、本人にも理解できていない、嫉妬に似た何か。
愛華は幼少から、立場だの家柄だのと言った都合で、何の感慨も抱いていない少年に尽くしてきた。
高等部に進学して、彼が自身の立場に驕り、クラスも別となったことで、物理的にも精神的にも若干の距離ができた。
そんな折に初めてできた、光誠という名の一人の友人。
誤解されやすい(顔をしている)が、その実のんびりというかあっけらかんというか、非常に親しみやすい人物像の持ち主。
その誤解のされやすさから、彼にとってのクラスの友人は自分一人だった。そして、彼との関係に心地よさを覚えていた彼女にとって、別の少女と仲良く(?)していたことが、なんとなくもやもやしてしまった。
言ってしまえば、独占欲である。
……もちろん、ごく小さなものではあるが。
「……はーあ」
一方の光誠はというと、自身の行動を思い返して落ち込んでいた。
(やっぱ勢いとはいえ、あの対応はまずかったよなァ)
先手を花凛に許したことで、目立つことを避けられなかった。
おまけに、止めるためとはいえ口をふさぐという行為をしてしまった。
…恫喝に見えてもおかしくないような気がする。
(連絡は……くるよなぁ、多分)
「………はーぁ」
美男(人相悪い)と美女が、休憩スペースでどんよりとした雰囲気を放つ異様な空間が形成されていた。
通り過ぎる生徒たちも、何事かと二度見をするくらいの異様さである。
────しかし、そんな空間に切り込んでいく生徒が一人いた。
「よう君たち。良ければうちの部活の話、聞かない?」
そんな言葉に、光誠は顔を上げる。
立っていたのは、上級生と思しき一人の男子生徒。というかどこかで見たことあるような──
「あっ」
一瞬の思考の後、光誠は思い出す。
入学式後、つまり昨日の帰りの廊下で、声をかけてきたメガネの上級生だ。
今は眼鏡をかけておらず、雰囲気も昨日と比べて随分と柔らかい。
「ん?」
上級生は光誠の反応に気付き、顔を眺めて手をポンと叩いた。
「あぁ、昨日の! えっと…外空くん、だったっけ?」
「はい」
「そかそか。そういえば俺は自己紹介してなかったな」
コホンと咳ばらいをし、上級生は胸に手を当てて名乗った。
「俺は
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