第23話 危険な遊戯、領空侵犯。

 尖閣諸島の日本領海に中酷が海底調査の名目でブイを無許可で設置したことを受け、島津義弘外務大臣、服部半蔵国務大臣、豊臣秀吉防衛大臣、天海副総理が徳川家康総理の執務室に介していた。

天海「如何対処される」

半蔵「ここは秀吉殿のご意見を頂くのが筋かと」

家康「防衛…か」

義弘「御意」

家康「秀吉殿のお考えは」

秀吉「軍事・資源の安全保障上、見過ごせぬ暴挙」

天海「うむ。海洋条約にブイ撤去の項目がない」

秀吉「項目がないと言うことは禁じられていないと言う事じゃよ」

天海「おっしゃる通り。他人の家にゴミを放り込んで、調査だとぬかすは、我が国を

   盗撮したいのでしょうな」

半蔵「盗撮はいけませぬなぁ。かと言って言いがかりをつけられ時間を割くのも面倒

   くさいものですな」

秀吉「半蔵、策があるのか言うてみい」

半蔵「策などありませぬ。ただ、勝手に沈むのは我感ぜずかと」

秀吉「面白い。その役目、買って出ましょうぞ」

家康「話が早いわ。皆の者もそれでよいか」


 聞いていた者は、間髪入れずに「御意」と笑っていた。


 秀吉は、海自に連絡を取り、支持を出した。昼間、ブイに発行体を取り付けた。夜が更けてからブイに小型船で近づき、ボートを降ろし、三人の潜水士が小型推進器を作動せてブイに泳いで近づいた。潜水士はブイに到着するとブイの海上に浮き出ている部分に大きな穴をドリルで幾つも開けて行った。ブイの底は発信機があり、危険だ。剥き出しの海面上は無警戒だ。開けた穴に一リットルの硫酸を三人同時にブイの中に注ぎ込んだ。穴から白い煙が立ち上がった。煙が落ち着いた所でブイの底に穴を開けた。同時に波に合わせて上から海水をこれでもかと注ぎ込んだ。ブイは静かに海底へと沈んでいった。中酷は発信が途絶え、明るくなるのを待ってブイ設置の場所へ海兵局の船を向かわせた。そこへ海自の船が近づき、警告を行った。中酷は我領域だと主張し、怒りを顕わにしていた。そこへ航空自衛隊の戦闘機が二機合流した。海自の船には秀吉が乗っていた。秀吉は、翻訳アプリを使って海兵局の船に向かってスピーカーを大音量にして警告を発した。


秀吉「ここは我が国の領域である。許可なく如何なる目的であってもゴミを捨てるこ

   と許されず。また、領海侵犯など持っての他である。直ちに領海内から退去せ

   よ。三分与える。従わない場合は、その船を不審船として爆破する。これは単

   なる警告にあらず」


 海兵局の船は国際問題だ、戦争だと騒ぐが秀吉は一歩も譲らなかった。三分が過ぎた。国際法とやらに照らして威嚇射撃を行った。海兵局の船は怒りに任せて本国に連絡し、応戦準備に入った。二発目の威嚇射撃が放たれた。防戦しようとしたとき、海兵局の船に本国から「帰港せよ」との連絡が入った。直ぐ近くに米軍の軍艦が近づいてきいた。秀吉はこの日の行動を沖縄の米軍に伝えていた。すると是非、参加させてくれと応じられ、申し入れを受諾した。

 米軍が秀吉に連絡してきた。秀吉を乗せた海自の船は海兵局の船を追い回しながらこう言い放った。


秀吉「米軍は中酷が反撃すれば我が軍が応戦する。覚悟してトリガーを引けと言って

   いる。また、領空侵犯を行えば問答無用に日本側が攻撃することを米軍は支持

   する、言っているぞ」


と海兵局船に伝えた。海兵局の船は全速力で逃げ出した。秀吉は領海線ギリギリまで追いやって甲板から大笑いして海兵局の船を「してやったり」と見送った。

 すぐさま中酷大使館から日本の外務省に「直ぐ来い」と連絡が入った。島津義弘外務大臣は「来るのはそっちだ。来るに当たって手土産のひとつもないのであれば門前

払いじゃ」と啖呵を切って見せた。それ以後、中酷から連絡はなかった。翌日、中酷の情報収集軍機が日本の男女群島に領空侵犯してきた。


秀吉「やはり来たか。馬鹿め。国連海洋法条約に定める無害通航権が通用する領海侵

   犯とは違うぞ。国際民間航空条約・シカゴ条約でその第一条において領空は完

   全かつ排他的な主権であるとされているのよ。主権を守るためには領空侵犯に

   対して撃墜もやむなしとされておるわ」


 航空自衛隊がスクランブル発進した。状況確認→行動確認→通告→警告の手順を踏んだ。中酷軍機は戻るように見せかけ旋回してみせた。空自は航空機の前方に着陸を促す資格信号として警告射撃した。空自は秀吉防衛大臣の指示で動いていた。警告射撃は武器を使用するものではない。中国軍機は立ち去った。すぐさま中酷大使を官邸に呼び出した。垂秀雄大使がやってきた。指示された部屋に入ると豊臣秀吉防衛大臣がそこにいた。なぜ、大臣がいると垂秀雄中酷大使は強張った。遠い昔、朝鮮出兵を行っていた人物と同姓同名であることは理解していたからだ。

 

秀 吉「呼ばれた理由はわかるな」

垂秀雄「はい。我が国はいかなる国の領空も侵犯するつもりはない。中酷の関係部門

    は状況を調べ確認しているところだ。故意ではない」

秀 吉「愚か者めが。不法行為を致せば、まずは謝罪が先であろう。やり直せ」

垂秀雄「ウグ…確認中だ」

秀 吉「謝罪もできぬか。では、確認できるまでここに留まるがよい。夕食は拉麺を

    用意してやる。ご飯付きでな。大阪では定番だ」

垂秀雄「それには応じられない」

秀 吉「ほぉ~可笑しなことを言うではないか。撃墜もあり得た。そのように重大案

    件を手易く終わらせるとは、それこそ、理解できぬは。この場で本国に電話

    させてやる。即刻返事を致せ。それまでは四方山話に付き合って貰うとする

    か、楽しいぞ、どうじゃ」


 垂秀雄の言葉は柔らかだったが目付きは冷淡そのものだった。垂秀雄は怯え本国に今の状況を伝えた。突き返せ、返さないの問答の後、待つようにとの指示が本国からなされた。約一時間後、垂秀雄に連絡が入った。


垂秀雄「今回、レーダの故障で会ったことが分かった。言わば、事故だった」

秀 吉「そうか、わかった。中酷の機器はトラブル続きと聞くが、軍もか。はぁ。ま

    ぁよい。下がるがいい」


 垂秀雄の顔は強張っていたが解放される安堵感があった。扉のノブに触れた時、秀吉に呼び止められた。


秀 吉「そうそう我が空軍も最近故障が多くてな。間違って撃墜することなどあれば

    間違いなく機器の不具合なので、お腹立ちなきようにとお伝えくだされ」


 垂秀雄は顔を真っ赤にしてその場を立ち去った。

 事はそれだけでは終わらなかった。米軍が激震の発表を行った。米国国務長官ブリケン氏は次のように述べた。

 「我々は撃つ。中酷の繰り返される同盟国の安全を脅かす領空・領海の侵犯を軍情報収集・実効支配の道筋と理解する。海洋調査が潜水艦活動の目的であることは明らかである。よって軍事的行動だ。国際法上違法だ。米軍は国際父所の維持のため、国際法と同盟国を守るため躊躇なく発砲する。挑発行為には実行で応える」

 と強い警告を発した。


家康「秀吉殿お陰で米国が腰を上げましたな」

秀吉「我が国も正当防衛など甘いことを言わず、法を代えねばならぬのう」

家康「同意」







(主な登場人物)

総理大臣に織田信長→豊臣秀吉→徳川家康

副総理に豊臣秀吉→徳川家康→明智光秀改め天海

幹事長に徳川家康→伊達政宗

政調会長・本田忠勝

財務大臣・小西行長

外務大臣・伊達政宗 伊達政宗→島津義弘外務大臣

国務大臣・明智光秀 →服部半蔵

奉行大臣・石田三成→法務大臣「司法卿」・江藤新平

資源大臣・加藤清正

渉外大臣・黒田官兵衛 黒田官兵衛渉外大臣

経済安全保障担当大臣・お江「崇源院」

侍日本党副幹事長・細川ガラシャ

厚生労働大臣・豊臣秀吉→石田三成

防衛大臣・豊臣秀吉。その裏では、名軍師竹中半兵衛と黒田官兵衛渉外大臣が動い 

     ていた。

法務大臣「司法卿」・江藤新平


律嫌眠種党

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