第17話 明かされる歴史の闇

秀吉「神仏は歴史を覆させない、繰り返させる。これからを変えられるとしたら今、

   生きている者の意識だ」

家康「そうですな。その者たちが余りにも政治に無関心なのは平和の弊害。一揆を起

   こせとは言いませんが、我らが仕向けられたのは、政治への関心と報道の真偽

   を見極める洗脳されない分別能力でしょうな」

秀吉「うむ」


 秀吉は感慨深く頷いて見せた。


秀吉「のう、家康。歴史が繰り返される、覆らなければ、信長殿の死は光秀が関わっ

   ているということか…ああ、疑いたくない、同志を」

家康「関りはないかと」


 家康は、晴れ晴れとした、少し悪戯っぽく笑顔で答えた。


秀吉「自信ありげだな」

家康「秀吉殿が知る明智なら心配もありますでしょう。しかし、今の明智は明智にあ

   らず」

秀吉「謎かけは面倒だ、申せ」

家康「明智は野盗に襲われ命を落とした。それを自分の手柄として天下を取られた秀

   吉殿であれど歴史の闇は御存じなかろうかと」

秀吉「思わせぶりじゃの~、はよ、言わぬか」

家康「言わぬなら言わせて見せましょう不如帰、ではありませんでしかな」

秀吉「それを言うなら、鳴かぬなら鳴かせてみよう不如帰じゃろ。儂が言ったもので

   はない。誰かが面白おかしく我らを現したもの。人付き合いは算術よ、時は金

   なりじゃ、さぁ、はよう」

家康「顔で茶を沸かせそうですな」

秀吉「流石、狸おやじだな」

家康「あはははは。時は金なりですから、話しましょう。明智は確かに死んだ、明智

   の影武者ですがね」

秀吉「確か、亡骸の損傷が激しく、持ち物で決めた。主君の仇を討ったそれが欲しか

   った訳だから言い訳はできぬわ」

家康「誰の入れ知恵でしたかな」

秀吉「確か…半蔵じゃ、そうそう、そなたの家臣の半蔵じゃよ」

家康「思い出されましたか」

秀吉「あれはそなたの差し金か」

家康「いいや、まだ、その頃は知らされておりませぬ」

秀吉「そなたも後で知ったと言うことか」

家康「詳しくは機会があればと言うことで、結論を申しますと、明智は生きていた。

   そして、関ヶ原の合戦の前に私の前に僧侶として現れた。そう、南光坊 天海

   です。今の明智は信長殿に謀反を起こした明智ではなく、私と共に天下取りに

   勤しんだ生まれ変わった明智・天海のなのです」

秀吉「な、なんと」


 驚いたのは秀吉だけではなかった。秀吉と家康の会話に聞き入っていた斎藤利三もだった。斎藤利三は明智光秀が転生し、機会があれば信長に敵討ちをするのではないかとの淡い期待を抱いていた。そこに信長の暗殺事件が発生し、口には出さなかったが主君・光秀の工作ではなかったのかと思い込んでいた。事実は、信長の政策に脅威を感じた中酷の工作員が、缶酷の工作員を抱き込み、仕掛けさせたものだった。

 「お人が悪い」と驚く斎藤利三を明智光秀は、「詳細は後程」と笑いを堪えて腹を抱えていた。


家康「今も明智は私の参謀で御座いますよ、わははははは」

秀吉「そ、そうであったか」

家康「忠臣蔵ではあるまいし、生まれ変わって恨みを晴らすなど神仏が許されまい。

   期待外れでしたかな」

秀吉「疑ったことを謝らなければならぬな」

家康「転生されて丸くなられたようで、わははははは」

秀吉「私の前で狸おやじは禁じる、よいな」

家康「了解致しました。わははははは」

秀吉「食えぬ奴よ、そなたは。食えぬから食われずに政権を保てたのだろう」

家康「誉め言葉と受け取っておきます・わっはははは」 

秀吉「今後、その笑いも禁ずる」


 家康は、笑いを堪えて扇子を開き、顔を隠していた。別室では、光秀も同じように斎藤利三からの鋭い目線を遮っていた。


家康「しかし、心残りが御座いますなぁ」

秀吉「なんだ」

家康「本能寺の変の事実を信長殿から聞きたかった」

秀吉「そうじゃな」



お知らせ:明智光秀が天海となって活躍する様子は「天海として生きた明智光秀」

     全76話完結でお楽しみ頂ければ幸いです。






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