第15話 強固な姿勢

 不届き者による信長暗殺。不届き者は、不当逸脱協会に恨みを持つ下川毅。下川の母が不当逸脱協会からお布施と称して多額の資産を搾取された恨みからであったが、憎む相手が不当逸脱協会の教祖ではなく、付き合い上一緒に写真を撮っていた総理に向かったものだった。この事件は、信長の政権を好ましくないと思う勢力のプロパガンダの影響であると侍日本党は考えていた。

 同じことが中酷でも起こっていた。中酷強酸党が垂れ流す米国憎しのプロパガンダの行き過ぎで米国の教師ら四人が刺される事件が起きた。中酷は秀欣平の思い上がりと愚策で激減した外貨を得ようと下げたくない頭を下げてまで外貨を獲得しようとしていた矢先の出来事だった。被害者の一人は米国の下院議員の身内の者であり、事は単なる事件では済まされない状況に追い込まれていた。公園で起きた傷害事件は中酷では削除対象になり、中酷は鎮静化に走った。露西亜が自国民がウクライナに虐げられていると侵攻したものより、事実関係が色濃いこの事件は中酷も見過ごすわけにもいかない。中酷政府は隠密に加害者を拘束し、自国で厳しい処罰を行うか、米国に隠密に引き渡すことも視野に入れ鎮静化を図っていた。

 日本では英霊を祭る神聖な靖国神社の石碑に小便をかけ、落書きし、閲覧者数を伸ばし儲ける者が現れた。SNSでこの行為は世界に配信され、中酷国民の民度の卑劣さを世界に拡散させた。この犯人の行いは中酷の卑劣さを上塗りする行為であり、当局は隠密に確保し、極刑を視野に厳罰を言い渡す段階に入っている。

 中酷は世界からの批判だけではなく、自国の人民の暴走を恐れていた。中国民衆の中から外国文明に対する拒否反応が強まる中、反キリスト教、排外主義の民衆が蜂起。清朝(西太后)は当初鎮圧を図ったが、北京を占領され、怯えから支持に転じ、列強に宣戦布告した。これに対し、英米仏露日など8ヵ国連合軍が北京を奪回し、列強の帝国主義的中国分割が進んだ歴史がある。中酷強酸党は国の愚策、低迷は外国からの迫害を受けているからだと風潮し、それに感化された人民が米国・日本他国に恨みを晴らさんばかりに攻撃を仕掛ける行き過ぎた洗脳の不具合が生じ、政府・政権を脅かし始めていた。

 中酷・秀欣平は、外国は悪と人民を洗脳してきた手前、悪くないなどとは口が裂けても言えない。苦肉の策として、節度を持って対応すべきと人民に注意喚起し、事件を隠蔽するしかなかった。

 世界に暗雲が立ち込める中、信長総理が理不尽にも暗殺された。侍日本党は、政権維持のため、速やかに行動に移した。党則により、総理には、副総理の豊臣秀吉が就任し、副総理に徳川家康が就任した。


秀吉「家康、幹事長は如何致す。そなたの好きに致すがよい」

家康「適任者がおります、伊達政宗です。政宗は江戸城築城の折、私の無理難題を悉

   く熟し、職務を全うして見せた。のみならず、スペインと結託し、この国を支

   配しようと大型船を作りスペインまで使者を向かわせております。その思惑は

   スペインが当時の日本を熟知していたため成立しなかった。私は裏切り者では

   なく、有能な武将として政宗を評価した。それが功を奏したのか政宗は心強い

   副臣となってくれた、その恩返しでもあります」

秀吉「あい分かった。では、外務大臣は如何致す」

家康「関ヶ原の合戦時、不利な状況下で強行突破を成し遂げた強者の島津義弘が宜し

   いかと。外交は腰が引けていては付け込まれるばかり。そうそう、インドネシ

   アのスシ海洋をご存じか。中酷の違法操業船と中酷政府に屈しず、違反漁船の

   返還を中酷から要求されたが無視してティータイムを愉しみながら中酷船を爆

   破しまくっている者でございましてな」

秀吉「痛快じゃな」

家康「はい。爆破船の数一万隻というから凄まじい。弱い犬ほどよく吠える。吠える

   犬は拳骨で黙るものでしてな、粗治療ではあるが遺憾砲と言葉だけの抗議より

   覿面。戦争に巻き込まれる恐れを見せないのもいい。万が一の時はそれは遅か

   れ早かれの必然として受け入れましょう。勝負どころの判断はその者の才能。

   私が知る中で、義弘以外は適任者がいないかと」

秀吉「面白い。では、万が一に備えて我が国も戦力を強化せねばならぬな」

家康「フィリピンの災難は我が国の尖閣諸島ですな。早速、海上保安庁に米軍のミゲ

   ルキース並みの海上基地を持たせますか。重武装をした中酷艦船4隻が領海侵

   入し、武力行使を辞さない覚悟を見せておりますからな」

秀吉「窮鼠猫を嚙む、だな。うん。戦略上、二隻を用意しろ。」

家康「中酷軍内部で殺人や強盗など凶悪犯罪や不祥事が相次いでおります。統制がと

   れない状況は暴発を産みかねませんぬわ」

秀吉「中酷の武将に統制の才能がない証。馬鹿に玩具を持たせば自分たちの実力に過

   信し滅びるの必定。感情に任せて動く愚か者も出よう。その旨、しっかりと島

   津義弘に伝えよ」

家康「しかと。ですが、信長殿の死に我らの動揺がないのは、既に一度は死を迎えた

   からですかな」

秀吉「そうだな。だとすれば、信長の次は私と言うことか。歴史は繰り返す。神仏は

   負いそれ変革は許すまい。家康よ、心して従事致せ」

家康「肝に命じましておきましょう」


 秀吉と家康の会話を執務室に仕掛けた盗聴器で国務大臣明智光秀は、日本を戦時に招き入れるものと危機感を持って聞いていた。












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