5.デート

夏休みも半分以上消化し、蝉の声が少し小さくなってきた。

よくよく考えてみると今まで君とデートに行っ たことがなかった。


「なぁ琴音、明日デートしない?」


僕は勇気を出して連絡してみた。

すると、すぐに既読が付き返事が来た。


『いいよ!どこに行く?』


僕は少し考えてから返信する。


「水族館とかどう?」


『うん!じゃあ10時に駅前で待ち合わせね!』


君からそう返事が返ってくるので、僕はスマホの画面を閉じた。

そして明日何を着ていこうか考えながら眠りについた。

翌日、僕は待ち合わせ場所である駅前に向かうと、すでに君が待っていた。

君は白のワンピースにカーディガンを羽織り、麦わら帽子を被っていた。


「ごめん……待った?」


僕がそう聞くと、君は首を横に振り、笑顔で口を開く。


「ううん!全然待ってないよ!」


そう言って君は僕の手を握ってきた。

そんな君にドキッとする。

君と共に電車に乗り水族館に向かうことにした。

電車の中で2人で他愛もない話をする。

そんなこんなで水族館に到着した。

中に入りまず最初に見たのはイワシの大群だった。

すると君は目をキラキラさせながら口を開いた。


「すごーい!こんなに沢山いるんだね!」


そんな君の反応に僕は微笑む。

その後もペンギンやアザラシを見て回る。


「ねぇ拓海君、私あれみたい!」


そう言って君が指をさしたのは、イルカのショーだった。

僕達は急いで観客席に座るとショーが始まるのを待つことにした。

すると、軽快な音楽と共にイルカたちがプールの中から飛び出して来た。

その光景に君は目を輝かせる。

ショーが終わり、君と一緒にお土産を見ていると、イルカのぬいぐるみが目に入る。

それに気づいた君はそれを手に取りレジに向かった。

そしてお会計を済ませた君は僕にイルカのぬいぐるみをプレゼントしてくれた。


「はい!拓海君にあげる!」


そう言って君が差し出してきたイルカのぬいぐるみを受け取ると、君は続けて言った。


「ずっと大事にしてね!」


そう言って笑う君に、僕は頷きながら頭を撫でた。その後僕達は水族館を後にした。


「琴音、今日楽しかった?」


僕がそう聞くと、君は満面の笑みで答える。


「うん!とっても!」


「それなら良かった」


そんな君の笑顔に、僕は胸が高鳴るのを感じた。


「なぁ…琴音」


「なに?」


「また、来年も絶対来ような」


「うん!また、行こうね!」


そんなやり取りを交わし、僕と君は駅のホームで別れた。

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