4.真相

「あぢぃー!もう溶けそう……」


そう言いながら悠斗は机に顔を伏せた。僕はそんな悠斗に向かって口を開いた。


「おい、溶けるぞ」

そんな僕のツッコミに悠斗は笑いながら口を開く。


「ははっ!拓海ってたまに面白いよな!」


「たまにってなんだよ…いつもだろ」


そんな他愛もない会話を交わしていると、ふと君が口を開いた。


「ねぇ拓海君……ちょっといいかな?」


そう言って君は立ち上がった。

僕も一緒に立ち上がって図書室へ向かった。

中に入ると、僕と君は向かい合う形で椅子に座った。


「それで……どうしたの?」


僕は君に問いかけた。

すると、君は少し間を開けてから口を開いた。


「拓海君……私と別れてください」


そんな突然の言葉に僕は驚きを隠せなかった。


「……え?」


「ごめんなさい……」


そう言って君は図書室から出ていってしまった。そんな後ろ姿を僕は呆然と見つめていた。


君が僕に別れ話を切り出してから数週間が経った。

未だに君のことが頭から離れず、僕は日々過ごしていた。



「拓海!ちょっといいか?」


僕は悠斗に呼ばれ、彼の元に向かった。


「なに?」


「琴音ちゃんが拓海と別れたって噂になってるんだが……」


悠斗は言いづらそうにしていたが、覚悟を決めたようで口を開いた。


「……なんかあったのか?」


そんな悠斗の真剣な眼差しに、僕は重い口を開いた。


「……実はさ……」


そして君と別れ話になった時の出来事を話した。


「そうだったのか……」


悠斗は少し暗い表情になりながら言った。


「どうすればいいと思う?」


そんな僕に、悠斗は真剣な眼差しで見つめながら口を開いた。


「…花火」


「ん?」


「夏休み中にある隣町の花火大会、一緒に行かねぇか?そこで琴音ちゃんも呼んで、拓海を振った理由を探ろう」


悠斗の提案に僕は少し考えてから口を開いた。


「わかった……行こう」


「おう!」


そして僕達は花火大会に行くことになった。

夏休みに入り、僕は君と悠斗と隣町で開かれる花火大会を観に行くことにした。

待ち合わせ場所に着くと、すでに2人の姿があった。


「あ!拓海君来たよ!」


2人は僕を見つけるなりそう言って駆け寄ってきた。

その後、3人で会場に向かうことにした。

会場に着くとそこは祭り客で溢れかえっていた。

屋台を見ながら歩いていると、悠斗が口を開いた。


「まずは屋台回ろうぜ!」


それから僕達は様々な屋台を回った。

すると、悠斗が口を開いた。


「あ!俺射的やりたい!」


悠斗がそう言うと、君は目を輝かせて言った。


「私もやりたい!」


そんな君につられて僕も一緒にやることに決めた。

僕と君の2人で射的をやることになったので、景品を見ることにした。


(とりあえず狙うのは1番上のラムネだな……)


3発分のコルク弾が入った銃を手に取ると狙いを定める。

そして引き金を引くと、勢いよくコルクが飛び出しラムネを直撃した。

すると、大きな音を立ててラムネが倒れた。


「やったー!!」


喜ぶ君の隣で悠斗も嬉しそうに飛び跳ねていた。

そんな2人を見て僕も嬉しくなる。

その後僕達は祭りを楽しんだ後、花火大会の会場へ向かった。


花火が上がる。

花火を見ながら僕は君と悠斗に話しかけた。


「あのさ……」


「ん?」


「なに?」


僕が話し始めると、2人は僕の方を見る。

そして僕は口を開いた。


「…正直に言って欲しいんだけど、なんで俺に別れ話を切り出したの?」


僕がそう聞くと、君は俯きながら話し始めた。


「……拓海君の事が好きだから……だよ」


そんな君の答えに僕は首を傾げた。


すると、今度は悠斗が口を開いた。


「それってさ……拓海と別れた方が拓海が幸せになれるって思ったからってことか?」


悠斗の問いに君は少し間を開けてから頷いた。そして言葉を続ける。


「……この前学校休んだ時あったよね」


「うん……」


そんな君の話に、僕は相槌を打つ。

すると君はまた口を開いた。


「あの時……体調不良って言ったけど、実は定期検診の為に病院に行ってたんだ…」


「え?」


僕は思わず声を上げた。


すると悠斗が口を開いた。


「琴音ちゃん……そうなのか?」


悠斗の問いに君は小さく頷き、自身の身体について語り始めた。


「…私は心臓に持病があるんだけどね、徐々に血を回せなくなってしまうの……進行は緩やかで気づかないくらいなんだけど、かかってから一年くらいで、心臓の機能が停止しちゃうんだって…」


僕は彼女の話に衝撃を受けた。そんな僕を見て、君は言葉を続けた。


「死に至るのは一年だけど、ちょっとずつ身体も不自由になってくるの……実際、今も春より動けなくなってる……だから私は拓海君と一緒にいられない……拓海君は私なんかよりもっといい人と付き合った方が絶対幸せになれると思うし……」


そんな君の言葉に、悠斗は口を開いた。


「……琴音ちゃんはそれでいいのか?」


「うん……だって私のせいで拓海君が幸せになれないなんて嫌だもん」


君の答えに悠斗は黙り込んでしまう。

そしてしばらくしてから口を開くと、君に問いかけた。


「なぁ琴音ちゃん……本当に拓海を思ってんなら別れないでくれ」


悠斗の真剣な言葉に君は一瞬目を見開く。

そしてしばらく間を開けてから口を開いた。


「どうして……そんなに私を思ってくれるの?」


君の疑問に、悠斗は微笑みながら答えた。


「そんなの簡単だよ!俺は拓海も琴音ちゃんも大事だから!」


そんな悠斗の言葉を聞いて、君は涙を流し始めた。

そんな君に僕と悠斗は声をかける。

すると君は泣きながらも口を開いた。


「ありがとう……拓海君、悠斗君」


そんな君に僕は口を開いた。


「俺の答えは変わらねぇよ!俺はまだお前のことが好きだ!だから……別れるなんて言わないでくれ……」


僕は君に向かってそう叫んだ。

すると、君は涙を拭ってから口を開いた。


「うん……ありがとう」


今日の中で1番大きい花火が上がる。

そんな花火の光に照らされながら、僕は君の手を握りしめた。

(…君と過ごせる残された時間を大切にしよう)

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