3.告白と夢
翌日、僕は琴音に話しかけていた。
「琴音!」
「ん?なに?」
琴音は首を傾げる。僕は意を決して口を開いた。
「ちょっと来て」
そう言うと、琴音は不思議そうな表情のまま後をついてきた。
(屋上に誰もいないな……)
周りに誰もいないことを確認すると、僕は君の方へ振り返った。
そして、口を開いた。
「俺さ……琴音のことが好きだ」
それを聞いた瞬間、君の目は大きく見開かれた。それから少しの間沈黙が流れると君は口を開いた。
「拓海君……私も拓海君のことが好きだよ。でもね、私と一緒にいても拓海君が幸せになれないと思うの……」
君はそう言って俯いてしまった。そんな君を見て僕は口を開いた。
「俺は琴音と一緒にいて幸せだよ」
僕は君を真っ直ぐ見つめて言った。
(そうだ……君が余命宣告されようとも……俺が君を幸せにすればいいんだ)
そんなことを考えていると、君は顔を上げて口を開いた。
「……本当にいいの?」
大粒の涙をこぼす君に、僕は優しく笑いかける。
「当たり前だよ。」
「……っ」
君は僕の胸に飛び込んできた。僕はそんな君を優しく抱きしめた。
「琴音、俺と付き合ってください」
「はい……よろしくおねがいします……」
僕の胸の中で泣きじゃくる君をなだめる。
「琴音、泣かないで」
「うん……」
君は小さく頷きながら返事をすると、口を開いた。
「ねぇ拓海君」
「ん?」
すると君は僕にキスをした。
「え!?」
突然のことに驚いていると、君は照れくさそうに微笑みながら口を開いた。
「ごめんね……嬉しくてつい……」
君の笑顔を見た途端、僕の心臓は高鳴り始めた。
すると君は僕の手を取りながら言った。
「これからもよろしくね拓海君」
そんな君を見て僕は大きく頷きながら答えた。
「うん、よろしく琴音」
そして僕と琴音は恋人になった。
「俺、悠斗と一緒に野球選手になる!」
いつかも忘れただいぶ昔、小さな公園のジャングルジムの上で大声で叫んだ。
「拓海は野球選手にはなれねぇよ!!
サッカーやってるんだからサッカー選手目指せよ…」
ジャングルジムに座っていた悠斗は笑いながらそう言った。
「あ、そうだ!拓海がサッカー選手で、俺が野球選手になって、日本のスター目指そうぜ!」
悠斗の提案に僕は目を輝かせながら大きく頷いた。
「うん!」
そんな時、当時仲良かった女の子の声が聞こえた。名前は…忘れた。
「じゃ私は2人のマネージャーしよっかな?」
「え?マネージャー?」
僕は首を傾げる。
「うん!2人の応援したいし、2人と一緒に遊びたいから!」
彼女はそう言って微笑んだ。その笑顔を見て、僕の心臓は高鳴ったのを覚えている。
「悠斗もそれでいいだろ?」
僕は悠斗に向かってそう聞いた。すると、彼は少し考えてから口を開いた。
「もちろん!目指せスーパースター‼︎」
悠斗はニカッと笑っていた。
そんな日々がずっと続いていくと思っていた。
突然、ある日彼女は僕たちの前から姿を消した。
あの子のことは今詳しく覚えてない。
でも、俺がサッカーをここまで続けてきたのはあの子との約束を果たすためだった。
「拓海ー!おはよー!」
後ろから声が聞こえたので振り返ると、そこには笑顔の悠斗がいた。
「おはよ」
「告白うまくいったか?」
悠斗はニヤニヤしながら聞いてきた。
「まぁな……」
「おー!よかったじゃねぇか!」
「お、おう」
僕の答えに悠斗は満足そうな笑みを浮かべる。そして、言葉を続けた。
「でもさ……琴音ちゃんとお前が付き合ったら、俺と一緒に帰ることも少なくなるよな……」
悠斗は寂しそうな表情を浮かべて言った。そんな悠斗を見て、僕は口を開いた。
「……なら3人で帰ればいいだろ」
僕がそう言うと、悠斗は驚いた表情をしていた。
「いいのか?拓海」
「当たり前だろ?」
僕がそう答えると、悠斗は満面の笑みを浮かべた。
「さんきゅ!」
そう言って僕の肩に腕を回してきた。僕は少し照れくさくなったが、振り払ったりはしないでそのまま学校に行く。
「琴音ちゃーん!今日3人で帰ら…あ、今日琴音ちゃん休みだわ。拓海、なんか聞いてる?」
琴音がいないことに気づいた悠斗は、僕に聞いてきた。
「いや……聞いてないな」
「そっか……」
悠斗は残念そうな顔をした。
そんな時、スマホの通知がなった。画面を見ると琴音からのLINEだった。
『今日は体調が良くないから休むね。』
と書かれていたので僕は返信する。するとすぐに既読がついて返信が来た。
『体調大丈夫?』
そう送ると、またすぐに既読がついて返事がくる。
『大丈夫だよ』
その返事を読んで安心すると、僕はスマホを閉じた。
その日の放課後に琴音からLINEが来た。
『会いたい』
と書かれていたので悠斗と帰ることを伝えると、
『ならしかたないね』
という返事とともにしょんぼりとしたクマのスタンプが送られてきた。
そんなやり取りを見て悠斗はニヤリと笑う。
「拓海ちゃん!そんなに琴音ちゃんにデレデレしちゃって~」
「うっせーな」
僕がぶっきらぼうに答えると悠斗は笑いながら僕の肩を軽く叩いた。
「そういえば拓海…」
「…ん?」
「いややっぱ何もない。忘れてくれ」
悠斗は何か言いたそうだったが、途中で言うのをやめてしまった。
僕も深追いするのは良くないかなと思い、彼が何を言おうとしたのかは聞かなかった。
梅雨も明け夏が近づいてきていた。
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